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決戦⑩


「【神威超越(かむいちょうえつ)】!!」



 術を唱えるとディードから衝撃波が放たれ、世界の色が一瞬だけ白く見えた。


「【穢土掌握】か?」

「そんなもんと比べんじゃねぇよ。」


 ディードの身体が白いオーラで纏われている。


 ディードの神力が格段に上がっていることが、少し離れている3人にも肌で感じられる。



 【神威超越(かむいちょうえつ)


 それは神職者だけが到達することのできる1つの極点。

 

 一般的に神から神力を供給してもらっていることから、神職者が神に勝ることはありえない。


 しかし極点に達した神職者だけが使える【神威超越(かむいちょうえつ)】を使えば、

 少しの間だけ神をも勝る力を手にすることができる。



 神職者は神から神力を受け止める【回路】が体中に張り巡らされており、

 そこに神力を貯めてエネルギーとする。


 【神威超越(かむいちょうえつ)】はその【回路】の流れを高速逆回転させ、

 神力を極限まで磨き上げる。


 そうすることで、神よりも濃度の高い神力を使用することができる。



 【回路】は人によって大きさ長さなどが異なっており、

 卓越した技術を持った神職者でもこの技を扱えるものはごくわずかしかいない。


 また、濃度の高い神力は神ではない人間には当然耐えられるものではない。

 使用するごとに身体は蝕まれ、最悪再起不能となる。



「ちゃっちゃと終わらせるぞ!」

「来い、人間。」


 その会話が終わると、ディードとガレノスの姿が消え、

 三人はここからの戦いを視認することはできなかった。


 ただひたすらに打撃音が自分たちの周りをこだまする。



「な、なにが起きれるの!?」

「チッ、動きが早すぎてまったく見えねぇ。」

「お願いします……。ディードさん……。」



 打撃音だけではどちらが優勢なのかもまったく分からない。

 三人はただただディードの勝利を祈ることしかできなかった。





「来い、人間。」


 ディードは一瞬でガレノスとの間合いを詰めて、渾身の一撃をガレノスに放つ。

 

 その拳には相当な量の神力が込められており、ガレノスにはその拳による威力を

 一瞬で察知することができた。


「ちっ。」


 ガレノスはディードの攻撃を避け、横腹に打撃を入れる。

 しかし、その攻撃はディードの左手によって受け止まられる。



「なんだ?さっきみたいに受け止めてくれねぇのか?」

「受け止めるまでもない。」

「固いこと言うなよ。」



 ディードはガレノスへ光速の突きを何度も繰り出す。

 ガレノスはそれをすべて避け、反撃するがそれもディードがいなす。


 強さはほぼ同じ。

 このままでは、身体的無理を強いられているディードの不利。


 幾度とない攻防にディードの身体は悲鳴を上げている。



「攻撃が当たっていないのに血が出ているぞ?」

「あぁ、こういう体質でな!」



 ディードの身体は既に限界を超えている。

 身体から血が吹き出し、常人の精神力であれば気絶している。


 しかし、ディードはガレノスへの攻撃を辞めない。



「人間は哀れだ。強くなるように身体ができていない。

 知恵や思考などというくだらん方向に進化した結果、こうやって強者に虐げられるのだ。」

「そうかぁ?人間は最高だぜ?うまいもん食って、寝て。また起きて――。」

「それがくだらんと言っているんだ!」



 ガレノスの一撃がディードにクリーンヒットする。



「グハッ!!!」



 ディードの口から大量の血が吐き出される。


 この血は、ガレノスの攻撃の威力を表すものだけではない。

 【神威超越(かむいちょうえつ)】を保つ限界も意味していた。



「うまいもん食って、寝て。また起きて……、そんで好きな奴を守る。

 そうやって命を紡いでいくのが人間だ……。」

「命を紡ぐだと?」

「あぁ……。だからこの拳は、俺だけのもんじゃねぇ!

 俺まで命のバトンを回してくれた全員の拳だ!!」



 ディードは力強く立ち上がる。



「訳の分からんことをぬかすな。ならこの一撃で、その命のバトンを終わらせてやる!

 【穢術:超怒級漢(ドレッドノート・ホウクス)】!!」



 ガレノスの拳が黒く輝きだす。

 その輝きによって周りの大気は重量を持ったかのようにずんと沈み込む。



「終わらせるのは、こっちだ……!【神威解放:(ゴウ)】!!!」



 ディードの拳が神々しく青色に光り出す。

 その光によって周りの大気が震えだし、引力を発生させる。



 二人は駆け出し、輝いている拳を相手の顔目がけて放った。

 クロスカウンターのようにお互いの腕が交差する。


 スピードはほぼ互角。

 この勝負、気持ちが強いほうが勝つ。




ドガーーーーンッ!!!!!




「「「うわぁ!?」」」


 戦闘の速さについていけてなかった三人は、急な爆発に驚く。

 煙が舞い、どちらが勝ったのか分からない。



 煙が少しずつ晴れていく、一人だけその中で立っている人影が見える。



「ディードさん……?」




 煙が完全に晴れ、そこに立っていたのは元の姿に戻っていたガレンスだった。



「嘘だろ……。」

「そんな……!」



 ガレノスは、倒れているディードに手を差し伸べる。


「やるじゃねぇか。見直したぞ。」

「へッ。ありがとさん。」



 ディードはその手を倒れながら掴もうとしたが、その手は交差する。



「お前の勝ちだ……。」



 そのままガレノスは倒れこんでしまい、灰のように消えていった。



「勝ったの……?」

「そういうことだよな……?」

「ディードさん!!!!」



 ハンナは倒れこんでいるディードに向かって走り出した。



「ディードさん!今すぐ直します!」

「おぉ、ハンナ。言ったろ?俺が倒すって。」

「しゃべらないでください!【神力展開:完全治癒(パナケイア)】。」



 ハンナはディードの治療を開始する。

 しかし、傷の治りが非常に遅い。それほどまでにダメージを受けていたんだ。



 ディードは治療されながら、拳を空高く掲げてそれを眺める。



「負けるんじゃねぇぞ……、卜部。」


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