決戦⑤
「クロエ!!」
リークは必死にクロエの名前を叫んだ。
しかし、マキシの【穢術:喰紅―蒼―】をくらったクロエは動かない。
何か催眠術のような技なんだろうか?
そうして動かなくなったクロエは、マキシの爪によって引き裂かれてしまった。
そして、クロエはキラキラと光りながら砂のように散っていった。
「クロエぇ!!!!」
「はいはい。」
「うわぁ!?」
砂のように散ったクロエはいつの間にか、私の側に立っていた。
「え?今、やられたんじゃ……?」
「やられたで。でもあの華のおかげで無事や。」
クロエは、先程の術で呼び出した白く輝く華を指さした。
「あの華が完全に散らへん限り、ウチは何度だってよみがえる。
そういう技やねん。【縁華得慈】は。」
たしかにマキシの爪で引き裂かれたとき、花弁が1枚散っていった。
残りの花弁は4つ。
あと3回は、リスポーンできるのか。
「なるほど。ならあと4回殺せば、魂にありつけるということか。」
「そーいうこと。」
「なら、一気に4回削ってやる!!」
マキシはクロエに向かってくる。
あと3個残機があると余裕をかましていたが、
さっきの青い技の対処法がまだ見つかっていない。
赤い技は修行と気合で克服できたが、青い技はそうもいかないようだ。
技の本質を見極めなければ。
「【穢術:喰紅―蒼―】!!」
パァン!!
世界がまたしても青く染められる。
前回同様、周りの一切の音、触感、においが消失し
青い世界にただ一人だけ取り残される。
計り知れない孤独感が襲ってくる。
でもこのままじゃさっきと同じだ。
あがいてやる!
「【神力展開:円環徒】!!」
敵の姿が見えないんだ。
こちらは分身して、できる限り攪乱してやる!!
「愚かだ。」
ザシュッ!!!
花弁がまた1つ散る。残りは3枚。
「はっ!!!リークちゃん!今、ウチ分身してた?」
「え?してなかったけど……。」
「なるほど……。」
確かに青い世界では、私は分身していた。
しかし、リークちゃんは分身していなかったと答えた。
つまりあの技は、対象の感覚だけを青い世界に閉じ込める技だ!
「みえたで!」
今度はこちらからマキシの元へと飛び込んでいく。
「気付いたところで回避はできない!【穢術:喰紅―蒼―】!」
「えぇいままよ!目つぶったる!!」
パァン!!!
再び目を開くと、空、草原、風。色に満ち溢れた世界だった。
「見破ったで!【神力展開:縁切り・金毘羅】!!」
バチィィィン!!!
「グハッ!!!威力が増しているだと……!?」
「移動距離ゼロの【縁切り】は効くやろ!!」
クロエの技、【縁切り】は衝撃と相手を元のいた場所に吹き飛ばす効果がある。
技のエネルギーは一定の為、
触れたときの衝撃は相手が移動する距離によって変動する。
吹き飛ばす効果が発生しなかった分、そのエネルギーはすべて衝撃へと変わる。
「もっぺんいくで!【神力展開:円環徒】!」
クロエは、一気に50を超える分身を作り出した。
「一斉攻撃や!!【神力展開:縁切り・天眼】!!」
「【穢術:無稽喰手】!」
無数の手が地面から生えてき、分身を根こそぎ消滅させていく。
クロエたちは触手を避けながらマキシに触れようと飛んでいくが、
あと一歩のところで、本体もろとも消されてしまう。
花弁が散る。残り2枚。
「くっそ!!もうちょっとやったのに!」
残る花弁は2枚。
もう後がない。この華が完全に散ってしまうと、私の命も散る。
それでも、やるしかない。
「よっしゃ!覚悟しぃ――。」
「なるほど。いつもそこに戻る訳だな。」
「!?」
マキシはいつの間にか、リスポーン地点まで近づいてきていた。
リスポーンした瞬間を狙ってきたんだ。
「これで終わりだ!!」
「蒼はもう効かへんぞ!!」
「それならこれはどうだ?【穢術:喰紅―梔子―】。」
キィイイン!!
な……、今度は黄色……?
ザシュッ!!!
花弁が散る。残り1枚。
「はっ!!やばい!!」
「これで最後だなぁ!【穢術:喰紅―梔子―】!!!」
あかん……。
全然技の効果がわからへん……。
最後の花弁が散ってまう……。
散ってしまったら……、ウチの命は……。
「それじゃあ、 い た だ き ま す!!!!」
ザシュッ!!!!




