表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/125

決戦③


「ん……。」

「目覚めたかユララ。」



 ユララが目覚めたとき、そこにはローレンとボンドが側で座っていた。



「ここはどこ?」

「おそらく、神殿の真上だ。」


 ユララが下を向くと、そこにはさっきまでいた神殿が見えた。

 手を伸ばすと透明なガラスのようなものがぶつかる。


「おそらく我々はハズレを引いたようだ。」

「ハズレ?」

「あれを見ろ。」


 ローレンが指さした方を見ると、神殿の周りに黒い空間が4つ浮かんでいる。


 その黒い空間は窓のようになっており、中で仲間が戦っている姿が映し出されている。



「スイちゃん!それにギョギョさんも!」

「我々はここで指を加えて見ているしかないのか……。クッ……。」


 ローレンはあからさまに嘘な悔しがり方をした。


「そんなことしなくてもみんなローレンを責めませんよ。」


 ボンドは優しい笑顔をローレンに向ける。

 ローレンは戦い向けの能力ではないのでホッとするのもうなづける。


 実際に私も戦闘向けの能力ではないので内心安心している。



「心配なのは、あそこだ。見えるか?」

「え?」



 ローレンは神殿の中心を指さした。

 そこは儀式の間があるところで【絶望の悪魔】が封印されている場所だ。


 その箇所から黒いオーラのようなものが空へと漏れ出ている。


「あれは魔力だ。それも非常に濃度が高い。

 おそらくあそこで封印解除の呪文を唱えているんだろう。」

「これは急がないと大変なことになりますね。」


 私たちはここでみんなの勝利を待つことしかできない。

 そんな境遇だからこそ、余計に焦ってしまう。



 みんな、お願い。

 【悪魔】を早く倒して……!





「うぉおおおおお!?」



ドシーーーーンッ


 

 卜部は、空中に出現した黒い空間から地面に降り立った。

 両足で衝撃を吸収できたが、おそらく修行前だったらポッキリ骨が折れていただろう。


 ちゃんと強くなってるんだ。



「卜部さぁあああああん!!」

「リーリィ!?」


 真上からリーリィが落ちてきたのを咄嗟にお姫様だっこで抱きかかえる。


「だ、大丈夫?」

「あ……ありがとうございます……。」


 なんとかリーリィを無事抱きかかえることができた。

 元の世界では考えられない。


 普通だったら、抱きかかえた瞬間腕ごと持ってかれてたな。

 まぁ、リーリィに怪我がなくてよかった。


「あ、あの……。恥ずかしいです……。」


 リーリィは俺との顔が近いことに赤面している。



「あ、ごめん……。」

「青春してるねー。」

「うわぁ!?」



 アイナさんは空を飛びながら、俺達の顔を覗き込んでいた。

 そういえばアイナさんは飛べるんだから、助けてもらえばよかった!


 リーリィを下して、周りを見渡す。

 見渡す限りの草原で、神殿は消えてしまっている。


 おそらく、どこかに飛ばされたんだろう。



「まずいな。早く神殿に戻ろないと。アイナさん、飛んで戻りましょう。」

「うーん。多分ここは魔力で作られた異次元ですね。飛んでも戻れないね。」


 アイナさんはアホ毛をピクピクさせて何かを感じ取っていた。


「え!?じゃあどうすれば?」


 俺は周りを見渡す。



「そんなの簡単ですよ!」

「アイナさん、戻り方わかるんですか?」

「え?私なにも言ってませんよ?」



 ん?今確かにアイナさんの声だったような気がするんだけどな。



「あー、違う違う。こっちですよ。」

「!?」



 声のする方向を向くと、そこには。



 もう一人のアイナさんが立っていた。



「え……?アイナさんが二人?」

「あなた……誰ですか……?」

「私?私はアイナですよ。」

「アイナは私です!」



 なんだ……?何が起きているんだ?



 俺の目の前に二人のアイナさんがいる。

 二人とも瓜二つでまるで鏡合わせのようだ。


 もしかして、【悪魔】の仕業か?



「あははは、ごめんね。ちょっとからかって見ただけですよ。

 たしかにあなたはアイナ。そして、私もアイナ。」



 アイナは黒い笑みを浮かべる。



「君、神様の中に裏切り者がいるって騒いでたでしょ?それ、この子だよ。」

「違います!私は裏切り者なんかじゃありません!」

「あなたに自覚はないですよ。あなたは私が作り出した分身なんですから。」



 どういうことだ?

 アイナさんが裏切り者?



「そんなはずない!お前がアイナさんの顔をマネしてるだけだろ!」

「よっぽど私の顔を気にいてくれてるみたいですね、君。嬉しい。」

「違う!私はアイナ!【愛の神】です!」



 アイナさんは、レイピアを構えてもう一人のアイナへ飛びかかる。


 それをいともたやすく、人差し指と中指で挟み込む。



「リークちゃんの羊羹、美味しかったですよね?あれ、穢れが少し残っていましたもんね。」

「違う!そんなつもりで食べてたんじゃない!」


 アイナさんは挟まれたレイピアを抜こうとするが、ビクともしない。



「あなた、あんまり修行しなかったでしょ?

 これ以上強くなられたら困るからこちらでセーブしてたんですよ。」


 そういえば、アイナさんはあの白い空間の中であんまり修行をしていなかった。



「あなたは私の分身なんです。」

「違う!!!【神力展開:屋烏之愛(おくうのあい)】!!」



 レイピアから桃色の一閃が飛び出す。

 アイナはレイピアを離し、その光を避ける。



「私は【色欲の悪魔】アイナ・レロス。あなたの生みの親です。」

「違います!私は【愛の神】アイナ!あなたの分身なんかじゃない!【神力奥義:愛矜懲創(あいきょうちょうそう)】!!」



 レイピアの切先が激しく輝きだす。

 その光と共に光速の突きが【色欲の悪魔】に向けられる。


「その技も私が生み出したんですよ。」



パリィィィン!!!



 アイナさんのレイピアは【色欲の悪魔】によって粉々にされてしまった。



「そ、そんな……。」



 アイナさんは圧倒的な力の差にその場で膝から崩れ落ちてしまう。

 【色欲の悪魔】はアイナさんに歩み寄り、肩をぽんと叩く。



「嫌いにならないであげてください。この子は何も悪くないんです。

 悪いのは、私なんですからぁ。」



 その笑顔は、絶対にアイナさんがするようなものではなかった。

 邪悪に満ちたエゴの塊のような表情だ。


 それを見て俺は、絶対にこいつだけは倒さねばと強く思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ