決戦
外に出ると空は紫色に染まっており、
まるで異界に出てしまったかのような錯覚をしてしまう。
「な、なんだこれは……?」
「すでに【大罪の悪魔】の侵略が進んでいるんだろう。」
魔界の空は魔力の影響で紫色に染められているそうだ。
この世界もすでに魔力が充満しており、空が染まってしまっている。
もう何回も修行をしているからか、外に出てからの成長痛はない。
成長痛が一種の成長の証だったことから少しだけ不安になる。
「ディードさんはどこに行ってしまったんでしょう?」
「そうや!あのマッチョ!危うくウチらぺちゃんこやったで!」
「あれは?」
扉の近くにはディードが履いていた靴と、争った跡が地面に刻まれていた。
「もしかして……、ディードさんが……。」
「んなわけねぇだろ!あのおっさんが負けるわけねぇ!」
そうだ。
ディードさんが負けるわけない。
「【大罪の悪魔】が攻めてくる前に、儀式の間にいくぞ。
【絶望の悪魔】はその下に封印されている。」
アセナさんはそういって走り出す。
儀式の魔の下に【絶望の悪魔】が封印されているのか。
たしかに自分たちの拠点が1番安全だが、それならそうと早くいってほしかったな。
下にそんなやばいものが眠ってるなんて。
走り出そうとした瞬間、視界がテレビのノイズのように乱れた。
ザーーーーッ
「な、なんだ!?」
そして、気が付くと俺達は儀式の間にいた。
何が起きたんだ!?
頭が追いつくよりも先にさらなる違和感が襲ってくる。
身体が動かない。声も出せない。なんなんだこれは!?
「やぁ。みんな揃ったようだね?」
声に反応して、視点を合わせると儀式の間の椅子に【大罪の悪魔】のボス。
【傲慢の悪魔】オーエンが座っていた。
オーエンは純白の学ランのような姿をしており、
その側に対照的な黒い衣装を着させられたリップとコーリンの姿があった。
「驚かないでくれ。これは【時の魔神】リップの術さ。」
時の【魔神】だと?
リップは【時の神】だ。【魔神】じゃない!
そんな反論の声も出すことはできない。
「リップの【神魔力奥義:虚空記録回廊】によって
この経験を君たちの記憶に差し込んだのさ。すごいよね?
って、聞いても話せないんだったね。」
オーエンは、無抵抗のリップの頬を触り愛でる。
それを見てもコーリンは止めようとはしない。
「リップとコーリンは僕と契約して、【魔神】と【魔術師】になったよ。
この意味が分かる?君たちの敵ってことさ。」
リップとコーリンが【悪魔】と契約をしただと……。
たしかに、前回の王都での戦いでは俺達の傷をなかったことにするだけで
精一杯だったリップのあの術が格段にパワーアップしている。
「これからリップのこの術で【絶望の悪魔】の封印をなかったことにする。
そうなれば、この世界は僕たち【悪魔】のものだ。」
オーエンはニコニコと笑っている。
まるで、勝利を確信しているかのような笑顔だ。
「それじゃあゲームを始めようか。
この世界の所有者は【悪魔】なのか?それとも【神】なのか?
まぁせいぜい楽しませておくれ。僕たちは儀式の間で待ってるよ。」
ザーーーーーッ
「!?」
視界にノイズが走り、扉の前へと戻っていた。
周りを見たところ、みんな同じ現象が起きていたようだ。
「儀式の間に急ごう!」
「「おう!!」」
俺達は話し合いをするまでもなく、一斉に儀式の間へと走り出した。
「はぁーい。ちょい待ちーーー。」
空中から声が聞こえる。
そこには、黒い空間から顔を出していた、【嫉妬の悪魔】ククルがいた。
「貴様!」
「そう簡単にオーエン様のところに行けるとマジで思ってたの?頭ハッピーセットじゃね?」
「てめぇ、降りてこい!」
ケーゴは魔法陣から槍を出し、それを投げつけた。
「はい没収ー。」
ケーゴが放った槍は、ククルの前に出現した黒い空間へと吸い込まれていった。
「そんじゃ始めるよ。運命のシャッフルターイム。
【穢土掌握:芝を狩る蒼き者】。」
世界の色は一瞬だけ反転した。
白は黒に。黒は白に。
そして、抵抗する間もなく俺達の足元に黒い空間が展開される。
「な、なに!?」
「はーい。それじゃ行ってらっさーい。」
俺達はそれぞれの黒い空間に落ちていってしまった。
ドスーーンッ
「痛った!!!乙女を落とすってどんな教育しとんねん!」
「人の上に落ちるってのも教育がなってないと思うけど……。」
それぞれ違う黒い穴に入った、クロエとリークは同じ場所に落とされていた。
リークが先に落ちたようで、その上にクロエが乗っている。
「あ、ごめんやで。」
クロエはちょこんとリークの上から起き上がる。
リークは周りを見渡すと、ここが神殿の中ではないということが分かった。
「なんかめっちゃ広い草原に来てしもたなー。これ戻れるんかな?」
「大丈夫ですよ。」
後ろから聞いたことのある男の声が聞こえる。
「誰や!?」
「おやおや。お久しぶりじゃないですか。」
そこに立っていたのは、
クロエが少し前にベルクで戦った【暴食の悪魔】マキシ・スフィフト。
「私を倒せば、元の世界に帰れます。
まぁあなたは私にここで食べられるのですがね。
この前は、あなたの魂を食べ損ないました。
美食家として、食べないわけにはいかないんですよ。」
マキシは眼鏡をクイッと上げて舌なめずりをする。
「ウチがやるわ。リークちゃんはそこで待ってて。」
「あぁ、そうさせてもらうよ。何か作ろうにもこの草原じゃ素材が何もない。」
クロエが一歩前に出る。
あの時は、アイナさんが助けに来てくれたからなんとかなった。
しかし、この状況では助けなんて来るはずもない。
自分でなんとかするしかない。
しっかりと修行もした。
ウチならやれる!
「それじゃ始めよか。」
「いいですよ。それじゃあ、いただきます!!」




