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終わりの始まり⑨

 だめだ……潰される……。



 再び壁が迫動き出し限界だと思った瞬間、目の前に扉が開いた。


「誰かいるのー?」

「開いたぞぉおおおお!!!!」

「え!?ちょ、何!?」


 俺達はなだれ込むように扉の外へ出ていった。

 全員が外の世界に出た1秒後には壁は完全に収縮し、扉が消えた。



 あ、あぶなかった……。


 でも、誰が外から扉を開けてくれたんだ?



「ちょっとあんたらどこ言ってたのよ!」



 顔を上げると、そこには【真の正義(グレヒティヒカイト)】のメンバーがいた。


「あんたが神殿が危ないって私達を呼んだんでしょ?

 ギョギョの技を使って急いできたんだから!」


 【真の正義(グレヒティヒカイト)】は【嫌われ者(ヘイター)】の集団だ。

 少し前に、魔術師を一緒に倒したいわば仲間だ。


「本当はもっと早くに来れたんだが、こいつら息が出来ないって騒ぐギョギョ。」

「人間は口呼吸なの!エラ引きちぎるわよ!」


 相変わらずのドタバタ集団で安心する。

 緊急事態から脱した安堵感で力が抜けた時、急に身体中が痛み始めた。



「ぐうぉおおおおお!?いてぇえええええ!!!」



 痛みを感じているのは俺だけじゃなく、扉の中にいた全員だ。

 おそらく扉の中での特訓による疲労や成長が一気に押し寄せているんだろう。


「ど、どうしたんだい、卜部?」

「痛ててて!!気にしないで!ちょっとの間放っておいて!!」

「お、おう。」


 ローレン達はうろたえながらも、

 成長痛に苦労する俺達を1時間ほど見守ってくれた。



 そして、今までの状況を1から説明した。


「なるほど。【大罪の悪魔】が神殿に攻めてきて、

 3日後の強襲に備えてその扉の中で修行をしていたということだな。」

「そういうこと。」



 時計を見ると、扉に入った時から12時間程経過している。

 6ヶ月の修行が12時間で出来たのだから非常に効率が良い。


 まぁ、最後死にかけたけどね。



「【大罪の悪魔】はすごく強かった。できれば力を貸してほしい。」

「もちろんだ。約束しただろ?すぐに駆けつけると。」

「ありがとう。みんな。」

「よぉし!それじゃあ早速2セット目行くかぁ!」



 ディードの掛け声を聞いてみんな身構える。

 6か月前の悲劇が蘇ったからだ。



「さすがに2回もへましねぇよ。」

「みんな行ってきてくれ。私が見張りをしてる。」


 リークが見張りを名乗り出てくれた。

 6ヶ月も難解な解析を続けていたんだ。無理もない。


 ローレンたちが来てくれたから、【嫌悪開放】のやり方を教えてもらおう。

 こうして俺達は2セット目に突入した。





「おーい。お前ら出てこーい。」

「いてぇえええええ!!!!」


 5セット目を終えて、確実に強くなっているのを感じる。

 まだ【嫌悪解放】をマスターすることは出来ていないが、

 戦闘力は格段に上がっている。


 残り1セット。


 これが終われば、【大罪の悪魔】が攻めてくる。

 修行の仕上げに入らなければ。


 そう意気込んでいると、ディードが突然口を開く。



「最後の1セットは俺が見張りをする。」

「え?なんでですか?」

「いやー。さすがにこの俺も疲れちまってよ。」

「そうですか。」



 修行の仕上げにディードさんと稽古をしたかったが仕方ない。


「それじゃあ最終セット行ってきますね。」

「おう!見違えて帰ってこい。」

「はい!」


 こうして俺達は最終セットの修行へと旅立った。

 扉が閉まった瞬間、



「そこにいるんだろ?」

「ちぇー。ばれてたか。」



 空中に黒い空間が開き、そこから二つ括りの女の子が出てくる。



「おめぇ、【嫉妬の悪魔】だろ。」

「そーだよー。ククルちゃんってーの。」


 ククルは自分の髪を指でいじりながら返答する。

 ククルの技は、空間を自由に移動できる(ゲート)を作ることができる。


「ちょうどいい。移動手段は潰させてもらうぜ。」

「とりま、あんたを消せばこっちの勝利は確実だし?」



 二人の空気が変わる。



「【穢土掌握】」

「させるかよ!」



 ディードは一瞬にしてククルの背後を取り、殴りかかる。


 しかし、ディードの拳はククルには当たらなかった。

 背中に設置された黒い空間のせいで、ディードの拳は異空間に転送されていた。


 ククルが指を鳴らすと、一瞬でその黒い空間は収縮する。

 ディードは間一髪のところで、空間から腕を抜くことが出来た。


 あのまま腕を抜かなければ、拳ごと異空間に持ってかれていた。



「【穢土掌握:芝を狩る(バガヴァット・)蒼き者(ギーター)】。」



 ククルが術を唱えると、世界の色は一瞬だけ反転した。

 白は黒に。黒は白に。


「しまった!」

「バイビー。」


 ククルが両手を前にすると、

 ディードを取り囲むように黒い空間が無数に出現する。


 その空間がひとつひとつ拡大し、ディードを少しずつ取り囲む。



「どこに連れていくつもりだ?」

「んーっとねー。すっごい遠いとこ!

 頑張って戻ってきなよ。ウチらが全員殺しちゃう前にね。」

「ふん。お前らにあいつらが倒せるかな?

 すっげぇ強くなってるぜ。」



 ディードは黒い空間に飲み込まれ、空間ごと消えてしまった。



 ククルは扉に向かって、

 手を差し出すがディードの言葉が気になり手を降ろす。



「楽しみは明日に取っておこっと。」



 そういってククルは黒い空間を出現させ、魔界へと帰って行った。


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