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終わりの始まり⑧

「これは……まずいことになった……。」


 リークは白い空間の中で頭を抱えている。


 俺達は扉をガチャガチャと開けようとしているが、びくともしない。

 内側からは開けられないのか!?


「リークさん。外の12時間ってこの中では何時間なんですか?」

「正確にはわからない……。

 検証で時計と植物を一緒に入れて、空間が消滅する寸前で取り出したら

 時計はまったく同じ時間だったんだ。」



 なるほど、それで時間の干渉を受けないって訳だ。



「植物はどうなっていたんだ?」


 アセナさんが突っ込んだ質問をする。


「取り出すまでは入れた時とまったく大きさだったんだけど、

 外に出した瞬間に一気に成長し出した。

 あの大きさからしておそらく6ヶ月くらいは経っていると思う。」


 つまり、この空間の中では時間の干渉を受けないため

 成長は止まっていたが、外に出した瞬間にその成長分大きくなったということだ。


「そやったらここでの1分は6時間くらいってことやな。」

「え?」


 クロエがひょこっと顔を出す。

 え?なんでそんな計算早いの?


「なんでわからんの?12時間が6ヶ月やったら1分が6時間やろ?」

「いや、そんなパッと計算できないよ。」

「卜部はアホやな。」


カチンッ


 よりにもよってクロエに馬鹿にされてしまった。

 もっと学校で勉強しておけばよかった。



「じゃあ6ヶ月は修行ができるってことだな!」



 こんな状況に陥れた張本人は、まるで反省していない。

 それどころか早く修行したくてうずうずしている様子だ。


「まぁそうなるね。取りあえずみんなは修行しておいて。

 私がなんとか扉を解析してみるから。」


 リークはそういうと扉の前に座り込んだ。


 まぁ俺達に手伝えることはなさそうなので、仕方ない。

 修行するか。


 こうして俺達の修行が始まった。




 この空間では時間の干渉を受けないからなのか、お腹が減らない。


 筋力の増加なども見られないため、成長の度合いが分からないが

 わがままは言ってられないか。


 この広くてなにも無い、白い空間で俺はひたすらディードと修行をした。


 ディードは相変わらず手加減無しで、俺は何度も死にかけた。

 その度、ハンナさんに【治療】をしてもらっていた。


 リーリィとクロエは、ハンナさんに神力の使い方を教わっている。


 アセナさんとケーゴは、お互い本気の殺し合いを続けている。

 よっぽど【憤怒の悪魔】にやられたのが悔しかったんだろう。


 アイナさんはリークと一緒に扉の解析。


 バーンは一人で筋トレをしている。


 【大罪の悪魔】の強襲に備えて、各々が強くなるために修行を続けていく。




 そして、5ヶ月半があっという間に経過した。




「リークちゃん。扉の解析はどう?」

「……。やばい。」

「えぇええええ!?」


 俺が大声を上げたせいで、みんなが集まってきてしまう。


「どうした?」

「魔力を元にした構造になってて、皆目見当がつかない……。」


 みんなの中に緊張が走る。


「あ、そういえばさっき、壁にもたれ掛けてたレイピアが倒れました。」

「え?」


「もしかしたらこの空間、小さくなってるかもしれません。」


「「えぇええええええ!?」


 アイナさんはとんでもないことを口にした。

 この空間が小さくなっている!?


 消滅しかかってるってことか?


「ほんまや!若干やけど狭なってる気がする。」


 クロエは反対側にコンを待機させ、壁に手をついて目測で距離を図った。

 というか、入った当初に壁なんてあったか?


 この壁がどんどん迫ってきているのであれば、

 最終的にみんなこの空間に押しつぶされてしまう。


「どけ!!俺がその扉を破壊する!

 【神力展開:神器解放・打ち砕く者(ミョルニル)】!」


 ケーゴが空間に魔法陣を描き、大きなハンマーを取り出した。


「ちょっと待て!扉が壊れたらどうするんだ!」

「このまま押し潰されるよりかはマシだろ!」

「全然マシじゃない!」


 ケーゴもアセナさんも慌てている。

 その後ろでディードがはぁとため息をつく。


「いいか?こういうのはな、こうするんだよ。」


 颯爽と扉の前に歩いていくディード。

 その姿は脱出の術をすでに知っているかのようだ。



「開けてくれぇえええええ!!!」



 ディードは大きな声で扉を何度も叩いた。

 えぇー……、期待した俺が馬鹿だった。


「あかん!壁動いてるで!」


 クロエは壁を手で触っており、それを感じ取ったようだ。

 俺達は相談をした訳ではないのに、みんなが一斉に走り

 壁の収縮をなんとか力で抑え込もうとした。


「うぐぐぐぐ……!だめだ!止まらない……!!」


 左右に分かれて壁を押しているが、まったくびくともしない。

 その後何日間、俺達は壁を押しつづけた。


 修行なんてやってる暇じゃない!




「ちょっと卜部どこ触ってんねん!」

「仕方ないだろ……。」

「すいません。ハンナさん。」

「リーリィちゃん。別にいいのよ。」

「なんだ?ケー坊。俺の胸板ばっかり見やがって。」

「見たくて見てるんじゃねぇ!」


 俺達は、扉の前の狭い空間にぎゅうぎゅう詰めになっていた。



 そして、また壁がまた迫ってくる。



「やばい!また動き出したぞ!」

「ぐぬぬぬぬ……!」

「つ……つぶれる……。」



 もう……だめだ……。


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