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時計仕掛けの因縁⑬

 エジリンのロボットに跳ね返った時計の針が突き刺さった。

 この勝負勝った!


「エジリン!!!」


 リークは叫びながら敵であるエジリンに駆け寄る。


バッ!!


「!?」


 リークがエジリンの元に行くと、巨大な右手が急にこちらを向く。


「【穢術:造化創造】」


 攻撃されるのかと思ったが、エジリンの放った術によって

 時計の針や時計盤が消えて、時計台に戻っていった。

 そして、時計台はまた時を刻みだした。


「エジリン……。」

「えへへ……。やっぱりリークには敵わなかったよ……。」


 ロボットの正面に設置されていた魔黒石は砕け散っている。


 針が突き刺さっていた箇所には穴が開いており、

 そこから中にあるエジリンの顔が映った液晶が見える。


「時計台は直しておいたから……。」

「……ありがとう。」


 俺達もエジリンの元へと辿り着いたが、

 なんだか二人の会話の邪魔してはいけないような気がした。


「そうだ、これ。ずっと渡せずにいたんだ……。」


 ロボットの右腕からリークに小さな鍵が手渡される。


「これって……。」

「【量子猫(シュレディンガー・)憂鬱(メランコリー)】の鍵だよ。」


 リークは黙ってその鍵を受け取った。


 エジリンの顔が映った液晶にノイズが入り始める。

 魔黒石が崩れ去ったことによって魔力の供給が上手くいっていないんだろう。


「そろそろお別れみたいだね。」

「エジリン……。」

「リークに会えて本当によかった。

 さぁ行ってよ。死に際を見られるのは恥ずかしいからさ。

 別に自爆装置なんて付けてないから安心してよ。」


ザーッザーッ


 映像が途切れ途切れになってくる。


「エジリン……。本当にありがとう……。」

「目が覚めたよ。僕たちで作った時計台を壊そうだなんて。

 だから、出来ればでいいからさ。この時計台を守り抜いてね。」

「当たり前でしょ……。約束する。」

「うん。じゃあ行って。」

「わかった。」



 そして、リークはトランスポーターを展開し、それに俺達も乗り込む。


「じゃあね。エジリン。」

「うん。またね。」


 こうしてトランスポーターは空間転移を始め、消えていった。


「はぁ……。」


【システムエラーにより自爆装置を起動します】


 アラートが響く。


「約束守らないとね……。

 ねぇ、リーク……。最後に一緒に作ってくれる?」


 エジリンは巨大な両腕に話しかける。

 この両腕のモデルはリーク。僕の親友なんだ。


「【穢術:造化創造・量子猫の憂鬱】。」


 両腕が光だし、ロボットの周りに壁が出現する。

 その壁は立方体のように組まれ、箱のように形成される。


量子猫(シュレディンガー・)憂鬱(メランコリー)】は外部・内部のあらゆる衝撃に耐え、鍵でしか開けることの出来ない箱である。


 ロボットが熱を帯び、赤色に染まっていく。


「リーク……。ありがとう……。」


ドガーーーーンッ!!!!


 箱の内部で大爆発が起きたが、外に一切の影響はなかった。


 こうして、俺達の戦いは幕を閉じた。





 リークは黙って、エジリンからもらった鍵を見つめている。

 その鍵を使うかどうかを迷っているようだった。


 しかし決心したのか、その鍵を刺して箱を開封した。


 その中には1枚の紙が入っておりそこには丸文字で、



「友達になってくれてありがとう。」



 とだけ書いてあった。


「こんなの誕生日に貰って喜ぶわけないだろ……。」


 リークはその紙を大切そうに胸に引き寄せて涙を流した。


 俺達はそれをただトランスポーターの端っこで、見守ることしかできなかった。



「卜部。起きろ。」

「うぇ?」


 いつの間にか俺は寝てしまっていたようだ。


 まだトランスポーターの中にいるみたいだ。

 リークはすっかり気持ちを入れ替えているようだ。


「お前たちに伝えておかないといけないことがある。」

「伝えておかないといけないこと?」

「なんでしょうか?」



「私達の仲間の中に、悪魔側の内通者がいる。」



「え!?内通者!?」


 神様の中に悪魔側との内通者がいる!?

 そんなこと考えられない。


「覚えてないか?神殿内に魔蟲が出た時のこと。

 穢れ吸収装置の中にエジリンの機械が設置されていたんだ。

 さすがに神殿に悪魔が侵入したらわかるはずだ。」


「それじゃあ、神様が設置したっていうのか!?」

「それしか考えられない。」


 リークは話を続ける。


「最初は新入りの卜部達がそうなんじゃないかと、疑ってしまった。

 だから今回見極めるために一緒に着いてきてもらったんだ。

 でも偶然にも悪魔との戦闘となり、お前らは裏切らなかった。」


 俺達、疑われてたみたいです。

 まぁ新入りだから仕方ないけどさ。


「だからお前らを信用して話した。気をつけろ。」


 仲間の中に裏切り者がいるなんて、考えたくもない。

 しかしリークの説明を否定できるほどの材料を持ち合わせていない。


 俺達はそれ以上何も話すことなく、神殿へと帰ってきた。


 【大罪の悪魔】を2人倒し、残りはあと5人だ。


「「おかえりー!」」


 神様の仲間がみんな揃ってお迎えしてくれた。

 【怠惰の悪魔】との戦闘があったことを知っているようだ。



 和気あいあいとした空気の中、

 俺はこの中に裏切り者がいるだなんて考えたくもなかった。



【 時計仕掛けの因縁 編】 ―完了―


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