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時計仕掛けの因縁⑦


「リーク!!」


 エジリンの放った銃弾は、俺の【嫌悪】によって飛ぶ方向が変わり

 リークに直撃してしまった。


 俺は叫ぶのと同時にリークの元へと走ったが、

 それを凌駕するスピードでエジリンがリークに距離を詰める。


 まずい!


 俺はまだ身体能力を上げる【神術解放:豪雷(ゴウライ)】が

 解け切っていない状態でも全く追いつけない。



「リーク!死んじゃやだよ!!リーク!!!」



 エジリンはリークの元へと駆け寄り、リークの身体を起こしていた。


 しかし俺の方からは、エジリンのロボットの影となり

 何をしているのか視認できない。


「なんで……、敵の心配してるんだよ……。」

「リーク!?」


 リークはごそごそと服の中から、四角い箱を取り出した。


「なんでそれを……。」

「あんたがくれたんでしょ……?まだ鍵ももらってない……。」


 リークは服の中に忍ばせていた四角い箱のおかげで

 銃弾を防ぐことができた。


「私は……、あんたとまた一緒に……、モノづくりがしたいだけなんだよ。

 完成したら一緒に笑って、一緒に泣いてさ……。

 だから早く顔見せろよ……。【神力展開:解体(ブレイク)】。」


ガキンッ


 エジリンのロボットの正面にあるハッチの留め具が解体される。

 それと同時にハッチがゆっくりと開いていく。


プシューッ


「リーク……。ごめんよ……。」

「!?」

「もう一緒には、いられないんだ。」


 ゆっくりとロボットの内部構造が見えてくる。

 見た目からするとそこが操縦席のようだ。



 しかしロボットの操縦席には誰も乗っていなかった。



「どういうこと……?」

「人間の身体は捨てたんだ。食事や睡眠は発明の邪魔だからね。

 でも不思議だな~。人間の身体を捨てたらさ、発明が捗ると思ってたんだけど

 なんだか逆に生きづらくなってきちゃってさ~。

 どうして生きてるんだろうとか、なんで生きなきゃいけないんだろうとか

 ずっと考えるようになっちゃってさ。発明も手がつかなくなってきてさ……。」



 エジリンは自分の胸の内をさらけ出す。



「だから、最期にここに来たんだ~。時計台を完成させようと思って。

 僕とリークが作った時計台が、永遠に世界で1番であり続ける為に。」

「最期……?」


「うぉおおおお!!!」


 エジリンは俺の気配を感じ、開いたハッチを閉じて飛び去る。


「リークちゃん、大丈夫か!?」

「あ、うん……。」

「リークさん!道具持ってきました!」


 タイミングよくリーリィも駆けつけてくれる。


 リークは、何か大切なものを失ってしまったかのような喪失感を醸し出している。


 それに会話の終わり際だけ聞こえたが、最期とか言ってなかったか?



「リーク!!!」


 エジリンが大声でリークを呼ぶ。

 その声は心なしか少し悲しそうに聞こえた。


「やろうよ。勝負。」

「そうだね……。いつもそうやってきたもんね……。」

「勝った方が正義!そうでしょ!?」


 リークは力強く立ち上がり、大きく深呼吸をする。

 そして、リーリィの持ってきた道具を手に取り術を唱える。


「あんたが間違ってるって証明してあげる。

 【神力奥義:造化創造】。」


 リークの前に時空の歪みが生じる。


 いかなる場所、いかなる時を超えて素材を収集し

 その作り出された時空の歪み内であらゆるものを創造できる。


 リークは目を閉じて、神経を集中させてその時空の中で

 エジリンに勝てる道具を創造している。


 激しい動きではないはずだが、脳の高速回転による消費で額には汗が流れている。



「懐かしいね~。でも今日は僕が勝つよ。

 【穢術:造化創造】。」



 エジリンはまったく同じ技を繰り出した。

 しかし、エジリンは大きな機械の両腕とセットで技を使っている。


 この勝負分が悪いかもしれない。


「信じましょう。リークさんを。」

「そうだね。」


バシューーーッ!!


 二人同時で時空の歪みが解かれた。


 エジリンの方は、大きな針を発射する装置を作り出していた。

 よく見ると、その発射する針は時計台の長針と似ている。


 一方リークは、エジリンの攻撃を完全に受けきるための

 大きな円盤の盾を作り出していた。

 こちらも時計盤と酷似している。


 敵を貫くための矛と、それを防ぐ盾。


「負けても泣かないでよ~。」

「そっちこそ!」



「「いけぇえええええ!!!!!」」



ドガーーーーンッ!!!!



 放出された針は、リークの盾に直撃する。

 しかし、針は突き進む力がまるで落ちていない。


 それどころか、少しずつ押され始めている。


「くっ……!!」

「どうしたの!?リーク!この程度なの!?」

「そんなわけ……、ないでしょ!!」


キュィイイイイイン!!!


 突如、針を受け止めていた盾が激しく回転し出した。

 突っ込んでくる力を回転によって外へ逃がしている。


 これならいける!


「これで終わりじゃないよ~。奥の手行けぇ~!!」


 そういうと、発射台が盾に向かって突っ込んでくる。

 そっちも飛ぶのか!?


 発射台は針を後ろから押す形で盾を粉砕しにかかる。



「負けて……たまるかぁああああああ!!!!」



 リークは神力をふり絞り、回転力をどんどんあげていく。

 あまりの力のぶつかり合いに、空気が震え出す。


 それに合わせて、自分の身体まで震えてくる。

 その震えに合わせて身体の底から強い想いが湧いてきた。



「負けるなぁああああ!!!!リーク!!!」

「リークさん!!!!頑張ってください!!!!!」



 気が付けば俺達はリークの後ろで大きな声で叫んでいた。



「「負けるなぁあああああ!!!!」」


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