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時計仕掛けの因縁②


「エジリンは死んでない。」

「え?どういうことだ?」


 今日はエジリン記念式がこの街で行われている。

 ということは何年か前の今日にエジリンが死んだことを意味している。


「エジリンは死んでないのか?じゃあお墓ってのいうのは?」

「私が立てた。その方が街のみんなが飲み込みやすいから。」


 話が全然見えてこない。

 エジリンは死んでいないのにリークちゃんがお墓を作ったのか?

 なんかサイコパス的な話ですか?



「まぁそんなことはいいじゃん。ちゃちゃっと時計台のメンテナンスするよ。」


 そういうとリークちゃんは立ち上がり、街の中心にある大時計台へと向かった。

 話は気になるが、話してくれなさそうだったので今は聞くまい。

 そのうち話してくれるだろう。



「それにしてもでかいなぁー!」

「ふふふ。これが私が作った世界一正確な時を刻む時計台。

 ヴァルテン・ツァイトだ。」


 俺達は時計台の下で空を見上げている。

 上部に強大な時計盤がはめ込まれており、この街の時を刻んでいる。


「どれくらい前にこれを作られたんですか?」

「んーとね。100年くらい前かな。」

「100年前!?」



 100年前にこれを作れるくらいだったら、

 リークちゃんは一体今何歳なんだ!?



「なんだよ。そのババアを見る目は。」

「い、いえそんな滅相もない。」

「私は人間じゃない。半分エルフの血が混ざってるから長生きなんだよ。」

「そ、そうなんですね。」


 衝撃的な事実をさらっと知ってしまった。

 まぁ異世界で半妖だっているんだからそういう種族もいるよな。


「それじゃあいくぞー。」


 そういってリークちゃんは、時計台の壁の扉を開いて中に入った。


「おぉおおおお!!!」



 中に入ると天井まで吹き抜けとなっており、

 至るところに歯車と階段が設置されている。


 歯車は止まることなくゆっくりと回転しており、

 その回転で連結されている違うパーツ動いている。


 真ん中には小部屋があり、

 その小部屋から歯車の最初の動きが生み出されているようだ。



「時計台の中って初めて入ったかも。」

「私もです!」

「凄いだろ。全部私が作ったんだ。」


 リークちゃんは腰に手をやって100点のドヤ顔を見せる。


「仕組みもですか!?」

「し、仕組みはエジリンだけどさ……。」


 リーリィは華麗に地雷を踏み抜いていく。

 さっきそういう話してたでしょうが。リーリィは意外と抜けているな。


「さ、さぁ!メンテナンス始めようよ!まずは何からするんだ?」

「そ、そうだな。まずは歯車と針の動作確認。その後小部屋の最終チェック。」


 なんとかリークちゃんの気を紛らわして、作業を円滑にすすめる。


 でも1年のスパンで定期的にメンテナンスを行っているので、

 そこまで大がかりな作業にはならないらしい。


 階段を登りながら歯車のチェックを下から順に行っていく。

 素人の俺たちが手伝えることはなく、ただメンテナンス道具を運ぶだけだった、


 メンテナンス道具を渡すように指示されるが、

 最初の方はどれがどれなのか分からず怒られたが最後の方には阿吽の呼吸のように

 リークちゃんが次に何を必要としているのかが分かった。


 途中で、会話をする余裕まで出てきた。



「リークちゃんは、この街出身なのか?」

「ん?まぁな。」

「エジリンさんとはどういうご関係だったんですか?」


ピクッ


 リークちゃんの手が一瞬止まって、また動き出す。

 そこまでエジリンのことが嫌いなのか?


「んー。た、ただの友達だよ。」

「エジリンさんはどんな人だったんですか?」


 横でリーリィが目を輝かせながら、エジリンについて質問をしている。

 なるほど。恋仲だったと疑っているんだな。


「ただの発明馬鹿だよ。考えるのに夢中で飯もろくに食べなかったから

 よくご飯を作ってやってた。」

「手作り料理ですね!」


 リーリィの目が一層輝きだす。

 リーリィの変なテンションに気が付いたリークちゃんは少し笑った。


「他にはどんなことしてあげたんですか?」

「そうだな。お風呂で身体を洗ってやってたな。」

「お風呂で身体を!?そ、それは……!!」


 リーリィは頬を染める。


「まぁ、エジリンは女だけどね。」

「ぶぅーー。」


 リーリィはネタばらしをされて膨れてしまった。

 うちのお花畑女神がごめんなさい。


「ははは。からかってごめん。よし!歯車のチェックは終わったよ。」

「よっしゃー!」

「下を見てごらん。」

「え?」


 リークちゃんに言われて下を見てみると、小部屋が豆粒のように小さく見える。

 手伝いに必死で気が付かなかったが、こんなに階段を登っていたのか。


「ひぃぃいい!た、高いです!」


 リーリィは俺にしがみついてくる。

 お花畑から高所に一転したそのギャップは相当なものだろう。



「こっちおいで。」



 そういってリークちゃんが壁の扉を開くと

 外の時計盤につながっており、そこから街を一望することができた。



「おぉお!すげぇええ!!」

「いい景色でしょ。」



 二人でその絶景を堪能する。

 リーリィは目をつぶって俺の足にしがみついている。


 リークちゃんはエジリンといつか一緒に見たであろう、

 この景色をじっと見つめている。



「なぁ、エジリンはまだ生きてるんだよな?」

「……まぁね。」



 俺達は景色から目を離すことなく、会話をすすめる。



「また会いたい?」

「会いたいけど……、会いたくないかな。」

「どうして?」



「また会う時はきっと、お別れのときだから。」



 リークちゃんは悲しそうに笑った。


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