表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/125

真の正義⑥

「ん……ここはどこだ?」

「よ、おはよ。」


 コーリンはトランスポーターの中で目覚めた。

 【真の正義(グレヒティヒカイト)】の基地から神殿に帰る途中だ。


 そういえばローレンに言われたことの真意をコーリンの

 酔っ払い騒動で聞きそびれていた。

 俺はコーリンに直接聞いて見ることにした。



「神職者は、神様が正式な神様になると捨てられるのか?」

「捨てられる?そんなわけないだろう。」

「でも実際神殿に神職者は俺達だけじゃないか!」


 このことが気になって仕方がなかった。

 ローレンの一言がずっと胸に引っかかっていたんだ。


「捨てられるのではない。自ら退くんだ。」

「退く?」

「そうだ。正式な神になると神力が格段に上がる。

 戦闘能力も比べものにならないほど進化するんだ。

 それこそ神職者に守られる必要が無くなる程な。」


 コーリンはそう言って下を向いた。


 ローレンの言葉は過程は違うにしろやっぱり間違っていなかったのか。

 神職者である俺達にはそれは非常に受け入れがたい。


 しかし、コーリンはふぅと息をついて上を向く。


「しかし、それは神職者が弱いからだ。

 進化を止めてしまうからだ。神が進化するのであれば

 それよりももっと強くなる。リップ様を守れるほどに。

 ただそれだけのことだ。」


 そういってコーリンは俺に笑いかけた。

 その笑顔を何よりの答えだった。


 そうだよな。

 もっと強くなればいい。それだけなんだよな。


 決意を改め、俺達は神殿に戻ったのだった。




「だからちげぇっての!こうドーンってやんだよ!」

「ドーンじゃ分かんないよ!」


 俺はバーンに【嫌悪解放】について教えてもらっていた。


 バーンは独自で【嫌悪解放】まで辿り着いたそうだ。

 生まれながらにして【炎の神に嫌われている】おり、コントロールできないと

 炎に飲まれて焼き殺されるらしい。


 結構壮絶な人生を歩んで来たんだな……。


「だからグググってやってドーンっつってんだろ!?」

「もうそれは何も言ってないのと同じだ!」


 バーンのオノマトペ講座を受けている最中に

 リーリィが息を切らしてやってきた。


「卜部さん!クロエさんが意識を取り戻しました!」

「ほんとうに!?」


 俺はバーンの顔をちらっと見つめる。

 修行をこちらから頼んでおいて、切り上げるのも申し訳ない。


「行ってやれ。技は逃げやしねぇよ。」

「ありがとう!リーリィ行こう!」


 俺はリーリィに連れられてリークちゃんの部屋に入った。


「おぉ!卜部!久しぶりやな!」

「お、おう。」


 クロエは意識を取り戻したばっかりとは思えない元気な態度を見せていた、

 これには面倒を見てくれていたリークちゃんも驚いている。


「半妖用の治療機器の開発がなかなか難しくてね。

 でも完成した瞬間に目覚めてこれだから流石にびっくりしてる。」


 神様と半妖では少し体内の構造が違うみたいだ。

 それにしても機械を開発して試した瞬間に、この元気っぷりは

 機械がすごかったのかクロエがすごいのか。


「卜部ありがとうな。あいつ倒してくれて。」

「いや、俺じゃないよ。あれはリーリィのおかげだ。」

「そやったんか。リーリィありがとうな。」


 こうして【強欲の悪魔】との戦いで負傷した仲間の回復は

 あとネルちゃん一人だけとなった。


 リークちゃん曰く、【強欲の悪魔】の【穢術】によって

 体内に大量の穢れが入り、それが棘となり刺さってしまっているそうだ。


 それを浄化するのに時間が掛かってしまっているらしい。

 早く元気になって欲しい。



「リークちゃーん。羊羹ありますかー?」


 そこにアイナさんが部屋に入ってきた。


「え?あの事実を知ってもなお食べたいの?」


 アイナさんが欲している羊羹とは、神が穢れに侵されてしまった時に入る

 穢れを浄化するマシーンによって生み出される副産物。


 吸い取った穢れを無力化し凝縮させて羊羹にしているのだ。


「いやー。なんかクセになる味をしているんですよ。」

「はい。物好きな奴。」


 リークちゃんは少し引き気味にアイナさんに羊羹を手渡した。

 アイナさんはそれを貰って意気揚々と食べ始める。


「そういえば、明日は毎年恒例のあの日じゃないですか?」

「そう言えばそうか。もうそんな時期か。」


 毎年恒例のあの日?一体なんのことだ?


「今年もわたくしお供致します。」


 アイナさんは羊羹を頬張りながら敬礼をする。

 くそぉ。かわいいな。


「いや、今年はこいつらと行こうと思っている。」


 そういうとリークちゃんは急に俺とリーリィを指名してきた。


「えぇー。私も行きたいですー!」

「だめだ。もう決まったことだから。」

「ぶぅー!」


 何か知らないが、勝手に決められてしまった。

 リーリィと俺は要領を掴めておらずキョトンとしている。


「それじゃあ明日の朝9時にここに集合。わかった?」

「お、おう。分からないけど分かった。」


 こうして俺達は行き先知らずの旅に出ることとなった。



 そして翌朝。


「よし!それじゃあ出発だ!」


 リークちゃんはリュックにパンパンの荷物を背負って準備万端だ。


「あのリークさん。私達は結局どこに行くんでしょうか?」

「あぁ、そういえば話してなかったね。今から時計台の修理に行くんだ。」

「時計台?」


「そう。【世界一正確な時を刻む大時計(ヴァルテン・ツァイト)】だ。」


次回【 時計仕掛けの因縁 編】 スタート!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ