真の正義➁
「それでは向かってください。
【真の正義】のアジトへ。」
この名前には聞き覚えがある。
【強欲の悪魔】を倒した夜に、宿に現れた男が所属しているところだ。
男は「神職者は神に捨てられる。」と言っていた。
これは本当なのか?たしかめなければ。
「おい、卜部。何をボーっとしている。行くぞ。」
「お、おう。」
ガンッ
ある男が行先を塞ぐように立ち扉を叩いた。
「よぉ、卜部。」
「バーン!!」
そこにはバーンが立っていた。
左腕には機械の義手を付けている。
「あんときは助けてくれてありがとよ。
お前の熱い想い伝わってきてたぜ。」
「元気そうで何よりだよ。」
「あぁ、もう完全回復だ。
それに見ろよこの左腕!かっちょいいだろ!?」
バーンが気に入っているようでよかった。
おそらくリークちゃんが付けてくれたんだろう。
さすが【工学の神】、なんでもできるんだな。
「そういえばネラはどうしてる?」
「あぁ、あのゴスロリか……。
あいつはまだ治療中だ。なんか体内に穢れが大量に入ってるらしい。」
【強欲の悪魔】の技を受けてしまったんだ。
生きているという情報が知れてよかった。
「それじゃあ行ってくる。」
「おう。帰ってきたら一杯やるか。」
こうして俺達はリークちゃんの部屋へと向かい、トランスポーターを使用して
敵のアジトへとテレポートした。
「いいか?今回はあくまで調査だ。戦いは出来る限り避ける。」
「分かってるよ。」
機械の中で移動中に任務の確認をしていた。
二人っきりになったので、疑問に思っていたことをぶつける。
「コーリン。リップくんって正式な神様なのか?」
「あぁ。リップ様は儀式を済ませた正式な神様だ。
それがどうかしたか?」
「いや、ただの確認。気にしないで。」
正式な神であるリップくんには、コーリンという神職者がいるじゃないか。
あんな男の言葉に心がグラついてしまっていた俺が馬鹿みたいだ。
「着くぞ。」
「おう!」
こうして少しの衝撃の後、トランスポーターの壁は消えていき
コーリンの腕の中に小さく収まった。
「リーク様がトランスポーターを改良してくださり、
帰りも使うことができるようになった。」
俺が物珍しそうな目で見ていたので、解説をしてくれた。
もうちょっと早くに改良してくれよ!
ヨーデルからの帰りすっごい距離あったんだからな!
「見ろ。おそらくあの小屋の中だ。」
俺達はトランスポーターを使って、見知らぬ森に辿り着いていた。
そして森の先にポツンと立っている小屋を見つけた。
扉の前には一人、マントをつけた女の子が見張りをしている。
間違いない。あのマントはあの時の男と同じだ。
しかし、【嫌われ者】の集団というからもっと大規模な集まりかと
思っていたが、あの小屋の大きさからそこまでのメンバーはいなさそうだ。
「流石にここまで【嫌悪臭】は届いてこないか。」
「俺、ちょっと行ってくるわ。」
そう言って、俺は無造作に森から歩き出す。
あの時の男の話が嘘で無ければ、あいつらは俺達の敵ではない。
難しく考えるより正面突破してやる。
「お、おい!勝手な行動をするな!」
「!?」
扉の前で見張りをしていた女の子は、
俺を発見し驚いた表情で引っかかるマントを必死に外した。
その瞬間、【嫌悪臭】が俺の鼻に届く。
まだそんなに近づいていないのに、この距離で臭いがするとはなかなかの手練れだ。
女の子は仲間を呼ぼうと扉の方へ振り返ったが、靴の紐を踏んでしまい勢いよく転んだ。
「へぶっ!!」
その瞬間壁に寄りかかっていたクワが倒れ、植木鉢を飾っていた棚に直撃し、崩壊。
その勢いで、植木鉢は宙を舞ってから地面に叩きつけられる。
パリーンッ
ピタゴ〇スイッチもびっくりなコンボだった。
「あぁー!お花さぁーん……。って、違った!みんな来たよ!」
「卜部下がれ!」
「うわぁ!」
コーリンは無理やり俺を森の茂みの中に引っ張りこんだ。
「何勝手なことをしている!騒ぎを大きくしてどうする!」
「いや、騒ぎは向こうが勝手に!」
「お待ちしておりましたよ。卜部さん。」
「!?」
いつの間にか後ろを見知らぬ男に取られていた。
【嫌悪臭】を感じる。こいつも【嫌われ者】か!
「クッ!やるしかないのか!」
「【嫌われ者】同士仲良くやりましょう。」
男は刀を抜こうとしたコーリンの手を抑えて、無理やり鞘に刀を入れ直した。
その後、俺とコーリンの背中を押して、小屋へと優しく誘導する。
「なっ!刀が抜けない!何故だ!?」
「さぁさぁ。どうぞ。お入りください。
我等【真の正義】の本拠地へ。」
コーリンの刀は、もう男に抑えられていないのにも関わらず
鞘から抜くことが出来なくなってしまっている。
無理やり小屋の中へ誘導され、中に入ると小屋の1番奥にソファーが置いてあった。
そこに、あの時の男が座っていた。
「やぁ、また会えたね。卜部。」




