表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/125

真の正義

 俺達はリークの叫び声を聞いて、リークの部屋へと向かっていた。


 叫び声といっても別に危機に陥っているわけではない。

 魔蟲という現世で言うところのゴキブリに怯えている声だからだ。


 やれやれという気持ちの中、リークの部屋の扉を開いた。


「リークちゃん大丈夫ー?」

「魔蟲なんかどこにもいねぇじゃねぇか!」

「いるだろうが!そこに!

 サングラスなんかしてるから見えないんだよ!

 取ってやる!目ん玉ごとぉ!」

 


 扉を開くと、リークちゃんが男に物騒なことを言い放っていた。



 リークちゃんと言い争っている男ははじめて見る人だ。

 手にはポセイドンが持ってそうな先が3本に別れた三叉槍を持っている。


「何をやっているんだ、ケーゴ。」

「おぉ、アセナ。こいつなんとかしてくれ。」

「はいはい。リークちゃん大丈夫だよー。」



 アイナさんがなんとかリークを落ち着かせる。

 ケーゴは三叉槍を魔法陣を展開して消滅させた。



 やっぱりこの人も神様なのか?


「ん?誰だこいつ?」

「卜部とリーリィだ。見習いをしている。」

「ほぉー、お前が卜部か。

 【強欲の悪魔】を倒したって聞いたぜ。

 でも見た感じ弱そうだけどな?」



 ケーゴは俺の顔をじろじろと見つめてくる。

 なんだこいつ失礼な奴だな。



「おっと、自己紹介がまだだったな。

 俺はケーゴ。【武器の神】だ。」


 武器の神!?

 俺が様々な武器に嫌われているのは、

 もしかしてこいつが原因なのか!?


「お、お前!俺のこと嫌いか!?」


 確かめなければ気が済まない気持ちが先走り

 すごく気持ち悪い質問をしてしまった。


「あ?なんだこいつ。

 嫌いでも好きでもねぇよ。初対面だろ。」


 あれ?

 即答で嫌ってると言われるかと思ったが、

 意外な答えだった。


 それじゃあ俺が武器を使えないのはどういうことだ?


カサカサッ


「ぎゃあああ!!ほらいるじゃん!そこ!!」


 リークちゃんが魔蟲の足音に反応し絶叫する。


「はぁー。後は頼んだ。」


 ケーゴはため息をついて部屋を出て行ってしまった。

 まだ聞きたいことはたくさんあったのに。


「卜部!そこ!お願い!」

「え?俺?」


 リークちゃんの指の先を見つめると、

 確かにゴキブリのような虫が一匹そこにいた。


 さすがに踏み潰すのは気が引けたので、

 そこらへんに落ちている棒きれで叩き潰した。


パンッ!


「「おぉーー。」」


 何故だか、みんなから歓声が沸く。


「卜部さんカッコいいです!」

「やるな卜部。見直したぞ。」


 虫を殺したぐらいでこんなに褒められるか?


 話によると魔蟲は穢れから発生する害虫らしく、

 触れると少しの穢れが付着してしまう為

 神様にとっては本当の害らしい。


「それにしても、不思議だね。

 神殿の中に魔蟲が湧くような穢れなんてある?」

「あぁ……。思い当たるところが1つだけある……。」


 リークちゃんは俺の腕を引いて、部屋の奥へと案内する。


「これだ。」

「これって……。」


 リーリィが一番反応している。

 これはたしか、穢れに侵された神様を治療する機械。


 【暴食の悪魔】と戦った時、リーリィが穢れに侵されてしまい

 一度治療をしてもらったことがある。


 酸素カプセルのように寝ころべるような形をしている。

 そこからチューブが出ており、大きな機械に繋がっている。


「ここに寝ころんで穢れを吸い取るんだ。

 吸い取った穢れは高度な技術によって羊羹に変換される。」

「え!?じゃあいつもくれる羊羹って!?」

「あぁ。これだ。」

「うぇええええええ。」



 アイナさんは気分を悪くしてしまったようだ。

 っていうかそんなもん神様に食わせるなよ。


「最近、羊羹の出が悪いんだよ。

 おそらくどこかで詰まってるかも……とは思っていたが

 調べる勇気が出せなくて……。」


 そう言い終わって、リークちゃんは必要に何度見もして

 俺の顔をチラチラと見つめてくる。


「わかったよ。調べればいいんだろ?」

「ほんとに!?ありがとう!」


 俺は機械に近づいて、機械を調べてみる。

 おそらくチューブのどこかで詰まっているんじゃないだろうか。


 俺は勢いよくチューブを引き抜いた。


 すると、そこからひょこっと魔蟲が顔を出した。


「ぎゃあああああ!!!やっぱりやっぱりじゃん!」

「卜部。魔蟲は神力で簡単に殺せる。

 技を出す要領でチューブごと神力を流してみてくれ。」

「お、おう。」



ゴッ!



 何かが焼き切れるような音が聞こえた。

 そして、チューブからコロッと何か四角い箱が出てきた。


「なんだこれ?」


ブワンッ!


「わぁ!?」



 箱に触れた瞬間に、映像がプロジェクターのように浮き出てきた。



「あ~あ。見つかっちゃったぁ。

 リーク~。また近いうちに遊びに行くねぇ~。」


 映像には、けだるげな女の子が映っていた。

 リークちゃんの知り合いか?


 その一言を言い終わると、映像が消えて

 箱は小さく爆発し消滅した。



「そ、そんな……。」



 リークはその映像を見て、顔を青ざめた。


「どうしたの?友達のいたずらでしょ?」

「友達なんてもんじゃない……。

 あいつは【怠惰の悪魔】だ……。」


「【怠惰の悪魔】!?」


 なんでそんな奴がリークの名前を知っているんだ?

 それになんでそんな奴の機械が神殿に?


 多くの疑問が湧いてきたが、

 リークとアセナさんは片耳を押さえて天井を見上げた。


「【伝達】だ。卜部、お前だけだ。」

「え、俺だけ!?」

「あぁ。詳しく言えば、コーリンと二人だけだ。」


 コーリンと俺の二人だけで任務?

 神様が行かない任務なんてあるのか?


「行ってこい。リーリィのことは任せろ。」

「は、はい。行ってきます。」


 不安な気持ちと共に俺は儀式の間に向かった。



 そして、その不安は的中する。


「卜部、コーリン。今回は貴方たちにしかできない任務です。

 【嫌われ者(ヘイター)】達が集まり、何かを企んでいます。

 それに合流し、内情を調査してください。」


 やっぱりな。

 コーリンと俺の共通点は【嫌われ者(ヘイター)】だってことだ。



「それでは向かってください。

真の正義(グレヒティヒカイト)】のアジトへ。」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ