半妖の街 ヨーデル⑫
「【穢術:藪蛇猫殺】。」
ドクンッ
な、なんだ?
身体の内側から無理やり外に出ようと膨張する
無数の針状のものを体内に感じる。
「グッ……ガハッ……!」
俺は口から血を少しだけ垂らし、膝をつく。
「お嬢ちゃんの声で注意が分散したのね。
苦しいでしょ?ポックリ死ねた方が楽だっただろうに。」
セチュラがリーリィの方へ歩いていく。
「お嬢ちゃんは何を企んでいるの?
さっきから力を貯めているようだけれど。」
「セチュラさんは、
注意・関心・興味が矢印になって見えるんですよね?」
「えぇ。そうよ。あなたからも感じるわ。
それに後ろの坊やからもね。」
俺はリーリィを守るために立ち上がり、
攻撃のチャンスを窺っていたがそれもばれていたのか。
「見えるってことは絶対攻撃が当たらないってことですよね?」
「えぇ。100%攻撃が当たらないわ。」
「それが聞けて安心しました。卜部さん!!!」
「おぉおおおお!!!!」
俺はリーリィの合図でセチュラに殴りかかる。
「馬鹿な子たちね!説明したばかりじゃない!!
100%攻撃は当たらないって!!」
「だからです!!」
そういって、リーリィは詠唱を続ける。
「水面に映る届かぬ月よ。翻倒せよ。
【神力展開:逆転事象】!!」
パァン!!!
リーリィが技を唱えると、世界は左右上下が逆転した。
「な、なによこれ!?」
でも、俺には何故だか普通の世界に見える。
「確率を、世界を逆転させました。
あなたはさっき言いましたよね。攻撃は100%当たらないって。
でもこの世界ではそれも逆転します。」
「それじゃあ……、100%当たるというの!?」
俺は、右手に力を目一杯込めた。
右手は徐々に燃え上がり、いつも以上に火柱が立つ。
「これは俺だけの炎じゃない!火傷じゃすまねぇぞ!
歯食いしばれ!!【神術解放:豪火】!!」
ドガーーーーーン!!!!!
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
俺とバーンの想いがこもった炎の鉄拳でセチュラを焼きつくす。
「そ、そんな……。この私が……!!」
「人を操ってまでも目的を達成しようとする
その【強欲】さを地獄で悔いるんだな。」
「くそぉぉおおおおおおお!!!!」
セチュラは炎と共に消滅した。
勝ったのか……、俺たち……。
緊張の糸が切れて、俺はその場で崩れ落ちてしまう。
「卜部さん!」
「大丈夫だよ……。それより、ネラの方を。」
「わかりました!」
そういってリーリィは倒れているネラの方へと駆けていった。
なんとか【大罪の悪魔】に勝つことができた。
最後のリーリィの技がなければ確実に負けていた。
もっと強くならなければ。
俺は地面に背中を預けて、空を見上げていた。
その後、リーリィの神力によって三人とも意識を取り戻した。
バーンも氷から救出したが、気絶していた。
「小僧……、よくやったな……。」
「俺は何もやってませんよ。全部リーリィのおかけです。」
「そうか……。ありがとうリーリィ。」
「いえ!アイナさんが修行をつけてくださったからです!」
こんな時にもリーリィは謙虚だ。
「【神力展開:獣の知らせ】。
これで誰かが迎えに来てくれるはずだ。」
「そんなのあったんなら援軍を呼べばよかったんじゃないですか?」
「それは規律違反だ。
神はあくまで【伝達】のままに動かねばならない。」
神様にも規律というものがあるのか。
それにしても【伝達】とは一体なんなんだろう。
また機会がある時にでも聞いてみよう。
そんなことを考えていると、
「みんな大丈夫ですかーーーー!?」
空から【愛の神】アイナさんが飛んでやってきた。
「ごめんね。重症の方々をお運びするから
リーリィちゃんたちは歩いてゆっくり神殿に帰ってきて!」
「わかりました。みんなをお願いします。」
「任されました!」
そういって三人とバーンを連れて、アイナさんは神殿へと飛んで行ってしまった。
バーンについては取り急ぎ神殿まで連れていき、
意識を取り戻してから神殿で話をするそうだ。
ここまでの事態になってしまったんだ。
バーンだってきっと分かってくれると思う。
「二人っきりになっちゃったね。」
「そうですね。」
ひょこっ
壊れた建物の陰から、半妖の子供たちが顔を出す。
「おいで。もう怖い人はいなくなったよ。」
「街を守ってくれてありがとう。お兄ちゃん。お姉ちゃん。」
「えへへ。いいんですよ。」
街は壊れてしまったが、半妖たちの笑顔は守ることができた。
とりあえず今のところはそれで良しとするか。
「どうか。今日はこの街に泊まって傷を癒してください。」
宿屋の亭主らしき半妖が俺達に宿を勧めてくれる。
正直身体もボロボロだったのでお言葉に甘えることにした。
俺は宿のベランダで夜空を見上げながら、
今後のことについて考えていた。
【大罪の悪魔】との戦いが神様の使命であるのであれば、
あと6人と戦って勝たなければならない。
俺達にそれができるだろうか?
今回はリーリィがいなかったら勝てていなかった。
俺ももっと修行をして強くならなければ。
【豪氷】という新しい技を覚えたが
もっともっと色々なことを試してみよう。
俺がもっと強くなって、リーリィを守るんだ。
そして、リーリィを立派な神様にしてあげるんだ。
「そんなことをして何になる。」
「!?」
声に反応してそっちを向くと、
見知らぬマントを付けた男がすぐ近くに立っていた。




