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半妖の街 ヨーデル⑧

「あらあら。なにか向こうで始まってしまったようね。」


 バーンと卜部の戦いを傍目に見て、

 セチュラは厄介そうに吐き捨てた。


「あまり時間が無いんだけれど。」

「それはお前が生きていられる時間がか?」


 アセナは瞬時にセチュラに近づき、近接攻撃を試みる。

 しかし、セチュラはそれを最小限の動きで避ける。


「チッ、躱すか。ならこれならどうだ。

 【神力展開:獣時間(ビースト・タイム)】。」


 アセナの身体に光が灯り、動くスピードが格段に早くなる。


「肉体強化かしら?」

「ふっ、どうだろうな!」


 アセナは連続で体術による攻撃を繰り出す。

 神力によってスピードが増した攻撃は、一般人では目に追えない。


 しかし、セチュラはそれでも余裕の表情で躱し続ける。


 近距離戦で二人の顔は非常に近い。


「あぁ~、やっぱりあなたって本当にカッコいいわね。

 欲しくなっちゃう。」

「お前にくれてやるものはひとつも……ない!」


ガシッ


 攻撃を躱していたセチュラはアセナの両腕を掴み、

 アセナの動きを封じる。


「あぁ……。だめ……。もう我慢できない。」

「!?」


 戦いの最中にあろうことか、セチュラはアセナにキスをした。

 アセナは無理やりのキスに反応できず、受けてしまう。


「き、貴様ぁ!!」

「あら、怒った顔もかっこいいのね。」


 アセナはセチュラを腕を振り解き、

 腹に向かっておもいっきり拳を叩きこもうとした。


「【動かないで】。」


ピタッ


 セチュラがアセナの耳元で囁くと、

 アセナの攻撃は直撃する寸前で止まってしまった。


「な……、貴様なにをした……。」

「えぇ?ただのキッスだと思ったの?」


「ウチも、混ぜてぇ……や!!!」


ブンッ


 セチュラは背後からのクロエの斬撃をノールックで避けた。


「ごめんなさい。貴女には興味ないの。

 そこで伸びていなさい。」


 セチュラの裏拳がクロエに直撃する。

 クロエはその衝撃で飛ばされ、建物に直撃する。


「さぁ、邪魔者が消えて二人っきりになったわ。」

「三人きりの間違いちゃう?」

「!?」


 セチュラは飛ばしたはずの敵の声に驚き振り返る。


 そこには、飛びかかってくる大量のクロエがいた。


「ごめん。51人きりやったわ!」

「うっとおしいわね!」

「もろたで!【神力展開:縁切り・金毘羅(こんぴら)】!」





「アァアアアアアア!!」

「やめろ!バーン!」


ドガァアン!!


 バーンは卜部とは戦わず、街の建物を破壊して回っている。


 なぜ、俺と戦わない。

 もしかしてあいつの命令が【戦え】ではなく【暴れろ】だったからか?


「リーリィ!障壁はまだ作れる?」

「はい!まだまだいけます!」


 バーンが隠れていた半妖を見つけて、殴りかかる。

 それをギリギリのところで障壁でガードする。


 卜部は後ろからバーンを止めるために攻撃を放つ。


「目を覚ませ!【神術解放:豪火(ゴウカ)】!!」

「アァアア!?」


 バーンは振り返り、炎の拳で対抗する。


 神の炎 対 豪火 勝敗は決まっている。


「ぐぁああああ!!!」

「卜部さん!!もう一発来ます!」

「【使役:壁の助】。」


 ネルの使役した塗り壁のようなぬいぐるみが

 バーンの追加攻撃を防いでくれた。


 だめだ……。

 炎対決では分が悪すぎる。どうすればいいんだ。


「卜部。落ち着いて。

 炎が出せるならきっと他のものも出せる。」

「いや、そんなこと言われたって……。」


 壁の助がバーンの攻撃を何度も耐えてくれているが

 そろそろ限界が近い。


「炎を出した時のことを思い出して。」


 炎を出した時のこと?


 たしか、あの時はセンドーシュに対する怒りでいっぱいで

 必死に拳を突き出したんだ。


 待てよ?

 怒りの爆発で炎が出たのであれば、もしかして。



パァン!!



 壁の助の身体が裂け、綿を放出させて萎んでいく。


 小さくなっていく壁の助の向こうから

 涙を流して立っているバーンの姿が見える。



 そうか。

 そういうことか。



「ネルちゃんありがとう!」

「いいってことよ。」



 ネルは表情一つ変えずに、ピースサインをくれる。

 俺はバーンに向かって走り出す。


 俺の心は、バーンを救うんだ。

 その冷静な決意でいっぱいになっていた。



「いますぐ救ってやる!【神術解放:豪氷(ゴウヒョウ)】!!」


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