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半妖の街 ヨーデル⑦

「あらぁ。狼さんこんにちはぁ。」



 女はアセナを見て不気味にニヤッと笑った。


「何故私の能力を知っている?」


 アセナは女の腕を掴む力を強めた。


「だって見てたもの。王都であなたが頑張って戦っていたところ。

 すごく格好よかったわあ」

「それを知っているということは、貴様、大罪の!」


 女はアセナさんの手を簡単に振り解き、距離を取った。


「そうよ。私は【強欲の悪魔】。セチュラ・テウメッサ。

 よろしくね。カッコいい狼さん。」


 女は人間の変身を解き、黒いドレスを身にまとった姿になった。

 臀部には大きな狐の尻尾が生えている。


 セチュラ?どこかで聞いたことのある名前だ。

 そういえば、センドーシュが散り際に呼んでいたような……。

 まさか、こいつのせいでセンドーシュが強欲に?


「セチュラぁ!!!!」


 クロエは叫び声を上げ神力で剣を作り、

 いきなりセチュラに斬りかかった。


ガシッ


「初対面でいきなり斬りかかるなんて失礼な人ね。」


 セチュラは人差し指と中指で軽々剣を挟んでみせた。


「何言うとんねん!初対面なわけないやろ!

 お前が私の故郷 妖狐の街 を滅ぼしたんやろうが!」


 クロエは激高し、我を忘れている。

 剣を止められているが一向に引こうとしない。


 妖狐の街を滅ぼした?

 たしかに二人とも狐の尻尾をしているので

 同じ妖狐なんだろうか。


「あら。あなたもフォキシの出身なのね。

 私もよ。」

「知っとるわ!ウチはずっとお前を探してたんや!

 お前を殺すためにな!!」

「物騒ねえ。」


パリンッ!


 セチュラは指2本でクロエの剣をへし折り、

 左手でクロエに攻撃を放つ。


 それをアセナさんがクロエを連れて避ける。


「落ち着け。

 勢いで勝てる相手ではない。」

「そんなん分かってる!」


 クロエは怒りで呼吸が浅くなっている。

 クロエとセチュラには相当な因果がありそうだ。


 アセナさんは今にも飛び出していきそうなクロエを

 落ち着かせるため、肩を抑えている。


「今日は、あなた達の相手をしてる暇はないの。

 ここまで準備したんだもの。すぱっと半妖を消させてもらうわ。」

「半妖を消すだと?」


「半妖って、私達悪魔の穢れが効きにくくて邪魔なのよ。

 だから、種族別で分かれてた半妖の街を全て壊して

 一箇所に集まるように仕向けたの。それでできたのがこの街。」


 たしかに、【暴食の悪魔】との戦いで、

 クロエは穢れの影響をあまり受けていなかった。


「一箇所に集めたはいいんだけど、

 そこのお兄さんのせいで、送り込んだ魔術師が

 どんどんやられちゃうの。だから私が直接来たってわけ。」


 セチュラは淡々と作戦を話続ける。

 その作戦が常識の範囲を超えており、理解に苦しむ。


「でも私の手で消すのも芸がないじゃない?」


スッ


「だから、自分の手で壊しなさい。」


 一瞬のうちにセチュラはバーンのそばまで移動していた。

 アセナさんですら視認できておらず、驚きを隠せていない。


 セチュラはバーンの背中に手を当てた。


「【魔術:所有者の刻印(オーナーズ・スタンプ)】。」


 セチュラの手が黒く輝く。

 その黒い光は全てバーンの背中へと吸収されていく。


「がぁ……あぁああああああ!!!」


 バーンは天を仰いで叫び声を上げる。


 全ての光がバーンに吸収され、静かになりぐったりと下を向く。


「うふふ。これであなたは私のものよ。

 さぁ。存分と【暴れなさい】。」


「アァアアアアアア!!!!」


 バーンは起き上がり、炎が急激に大きくなる。


 な、なにが起きているんだ!?

 片手を失いぐったりとしていたバーンが復活した!?


 それにセチュラがバーンに命令した?



ドガーーーン!!!



「!?」


 バーンは地面を強く殴った。

 最初にバーンと会った時とは比べものにならない力だ。


 まさか、本当に街を壊すつもりか?


「アァアアアアアア!!!」


 バーンは一目散に観客の方へと向かい、殴りかかろうとしている。


「バーンさんいけません!」


ガキン!


 リーリィが神力障壁を作り、観客をギリギリのところで守る。


 な、なんでそんなことを?


「小僧!奴を止めろ!

 奴は、悪魔の魔術で操られている。

 悪魔は私達で何とかする!」


 そういうとアセナさんはクロエと一緒に

 セチュラに攻撃を仕掛ける


「卜部さん……、これ以上はもちません……。」


 バーンはリーリィが作った障壁を何度も何度も殴っている。

 まるで障壁の向こう側に目的のものがあるかのように。


「ひっ……、助けて……。」

「おいバーン!その先には半妖の子供たちがいるんだぞ!」

「ガァアアアアア!!!」


 俺の声は届かない。

 バーンの元に走るが、障壁が先に壊れてしまった。


バリィン!!!


「やばい!!障壁が壊れた!」

「【使役:ベルたん】。」


 一緒に走っていたネルは背負っていたリュックから

 熊のぬいぐるみを投げた。


 熊のぬいぐるみはどんどん大きくなり、

 意思を持っているかのように、バーンの攻撃を受け止めた。


「アァア?」


 熊のぬいぐるみは表情を変えずに、

 バーンの拳を押し返した。


 そして、一歩踏み込みバーンに発剄をお見舞いした。

 そのあと、中国拳法でよく見る決めポーズをした。


「つ、強い!」

「ベルたん。拳法の使い手。」

「く、くまさんありがとう……。」


 ベルたんは振り返り、半妖の子供の頭を撫でて

 向こうに逃げるようにジェスチャーした。


 子供はお辞儀をして逃げていき、

 それを手を振りながら見守った後、バーンの方に向き直った。


「ベルたん危ない!!」


 その瞬間、ベルたんは破裂した。


 いつの間にかバーンが起き上がっており、

 炎の拳がベルたんに直撃したのだ。


 周りには綿が舞い、ベルたんが本当にぬいぐるみだったことがわかる。

 もしもあの攻撃が子供たちに当たっていたら……。


 どうやら本当に操られているようだ。


 昨日のお風呂で口は悪いが、根は良い奴だと感じた。

 そんなバーンがこんなことをするわけがない。


 これ以上街が、住民が、それにバーンが傷つかないように

 俺がお前を倒す。



「バーン、俺が相手だ。お前を止めてやる。」


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