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半妖の街 ヨーデル③

「魔力反応の原因はわかった。

 あとは、バーンとやらを調べるぞ。」


 アセナはお金も払わずにバーを後にした。


「アセナさん。お会計はいいんですか?」

「代価はたっぷり払った。

 見ろ。3時間も経っている。」


 アセナは懐中時計を差し出して見せてくれた。

 本当に3時間経ってしまっている。

 中で反応数分話をしただけなのに。


 半妖の街 ヨーデルはいつも空が暗いため

 時間間隔がなくなってしまいそうだ。


「アセナさん。バーンさんを調べるといってもどうすれば?」

「豚さんの鼻。ブーブー。」


 ネルちゃんは自分の鼻に手を当てて豚の鼻の真似をしている。


「その通りだ。バーンが【嫌われ者(ヘイター)】であるなら

 小僧の鼻で探知できるはずだ。」

「いや、そんなこと言われも……。」


 一応鼻をスンスンと嗅いでみるが、

 嫌悪臭らしい香りは見当たらない。


「卜部は相変わらずあかんたれやなー。コン。」


ボンッ


「はい!」

「あ、コンちゃん!」

 

 クロエが指を鳴らすと、煙と共にコンが現れた。

 リーリィは久々のモフモフに興奮気味だ。

 再会の挨拶と言わんばかりにモフモフしている。


「コン。バーン探してきて。」

「わかりました!ちょっとリーリィさん離してください!」

「はい。ごめんなさい……。」


 愛しのコンに怒られてリーリィは落ち込んでいる。


 コンは空高く舞い上がり、空中から街を見渡した。


「あ!このまま真っ直ぐ行くと人だかりがあります!

 おそらくあそこです!」

「おー!コンありがとー!。ほらな?」

「何がほらな?だ。すごいのはコンじゃないか。」


 どや顔でクロエは顔を近づけてくる。


「モタモタするな。いくぞ。」


 周りをみるとやっぱりジロジロと見られている。

 耳だけじゃ変装はダメみたいだ。


「ウチは本物やからねー。」

「おい!やめろよ!」

 

 走りながら、そんなことを言うもんだから

 こいつらは変装していますと言いふらしているようなものだ。 


 普通にしてたって怖いのに、やめてくれ。



 少し走ると、たしかに人だからが出来ていた。

 近づくにつれ黄色い歓声まで上がっている。



キャー!カッコイイー!!



 俺は生涯あんなにモテたことがあっただろうか?

 黄色い歓声なんて浴びたことが無い。

 イヤー!って声は何度かあるけどね。


 そして一定の距離まで達した時、嗅ぎ覚えのある臭いを感じた。

 【嫌悪臭】だ。間違いない。



 俺はアセナさんに無言を頷き、この中にバーンがいることを示した。

 それを見て、アセナさんはなんと人混みを無理やりかき分け始めた。


「すまんな。どいてくれ。」


 どんどん人混みに入っていく。

 ちょ、ちょっと待ってよ。


 なんとかかき分けて、人だかりの中央まで遅ればせながら到着した。



「お前がバーンだな?」



 中央に到着してまず目にしたのは、

 喧嘩の始まりとしか思えないような聞き込み調査だった。


「あ?そうだ。俺様がバーン様だ。

 てめぇは誰だ?」


 近づく程に【嫌悪臭】が増してくるのは感じていたが、

 目の前に立つと相当な臭いだ。


 前回戦った【嫌われ者(ヘイター)】のナタよりも圧倒的に臭いが強い。

 その臭いの強さに思わず鼻を覆ってしまった。


「ん!?てめぇいま鼻を覆ったな!?

 てことは魔術師だな?」

「え?いや、違う!!」

「違うこたぁねえだろ!

 なんでか知らなねえが魔術師は皆俺の前で鼻を覆う。」


 そりゃこんだけの【嫌悪臭】だったら鼻を覆いたくもなるさ。


 待てよ。

 っていうことは俺もこれくらい臭いがするってこと!?


ドガン!!


 バーンは突然、地面を全力で殴り、殴られた地面はひび割れる。


「ショーの始まりってことでいいよな?えぇ!?」


 まずいぞ。

 このままじゃあ勘違いされて戦う羽目になる!


「ち、違います!卜部さんは魔術師なんかじゃありません!

 卜部さんは私の――。」

「リーリィ言っちゃだめだ!」


 弁解の為にリーリィが口走りそうになるのを必死に止める。


「あぁん!?そこのかわいこちゃんもグルってか!?

 まとめて相手してやるよ。」


 バーンはポキポキと拳を鳴らしながら近づいてくる。

 一食触発の空気が流れる。



「わぁーーー!!本物のバーンやん!!」

「あぁ!?」

「ウチめっちゃファンやねん!握手してーや!!」

「お、おう。」


 クロエはバーンと半ば無理やり握手を交わす。


「やば!!ウチ握手してもーた!

 もう一生手洗えへん!みんなもしてもらい!」


 そのクロエの号令で周りの半妖は

 一気に握手を求めてバーンへとなだれ込む。


わぁーーー!!


「何してんねん。はよ行くで。」

「お、おう。」


 俺達はクロエに引っ張られながら人混みを脱出する。

 そしてなんとか路地裏に隠れることができた。



「あほちゃうん!?あんなとこで堂々と聞いてどないすんねん!」

「む……。面目ない。」


 あのアセナさんが少し反省している。

 傍らでネルちゃんは野良猫と遊んでいる。肝が座ってんな。


「ウチが居らんかったらどうなってたんよ。

 あそこで戦って、勝ったとしても負けみたいなもんやで。

 半妖全員敵に回すで。」


 たしかに、あの感じだとバーンは本当に半妖達のスターのような存在だ。

 今は大人しくしているのがいいかもしれない。


「今日はもう遅いからウチが取ってる宿屋行こか。」

「え?それは悪いよ。俺達で別に取るよ。」

「今はバーン効果でどこの宿屋も満室やねん。」

「なるほど。バーン様々って奴だな。」


 こうして俺達はクロエが取っている宿屋に転がり込むことにした。



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