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半妖の街 ヨーデル

 俺達は、神殿に戻り儀式の間についていた。

 そこには人間姿のアセナさんと見知らぬゴスロリ少女がいた。


「あ、アセナさん。」

「卜部。しっかりと休養は取れたか?」


 どうやら今回はこのメンバーで任務に行くようだ。

 リーリィは修行後の初任務で非常にそわそわしている。


「わ、わたし【幸運の神】のリーリィと申します。

 まだ見習いですがお力になれるよう頑張ります!」

「うぬ。頑張ってくれ。」

「……。」


 一応ゴスロリ少女にも声を掛けたつもりだったようだが、反応がない。

 目が合っているのに反応がないことでリーリィのそわそわは加速していく。


「おい。何か言ってやらんか。」

「……。よろぴく。」

「よ、よろぴくお願いします。」


 神様は変な人しかいないのか?


 微妙な空気とアセナさんのため息が混ざる中、

 どこからか声が聞こえた。


「揃ったようですね。

 【獣の神】アセナ。【使役の神】ネル。【幸運の神】リーリィよ。」


 しれっと俺は居ないことになっているようだ。


「貴女たちは今から 半妖の街 ヨーデルへ向かいなさい。

 そこで不審な魔力反応がいくつも起きています。

 不測の事態に備え、神の身分を隠して調査を行ってください。」


 そう言い切ると声は聞こえなくなってしまった。

 優しい女の人の声だったが、どこから話していたんだろう?


「今のはなんだったんですか?」

「あれは【伝達】だ。

 守秘義務に当たるから正式な神になったら教えてやる。」


 リーリィとアセナさんが話している間、ゴスロリ少女ネルは

 俺に向かってこっちに来るように手招きをした。


「ん?どうしたの?」

「屈んで。」

「卜部さん!頑張りましょう……ね!?」


 ネルはいきなり、俺の頬っぺたにキスをした。


「え、え、え!?」

「なななな何やってるんですか卜部さん!?」

「いやいや、俺じゃないって!ネルちゃんが勝手に!」

「こんな年端もない女の子に手をだすなんて、犯罪ですよ!?」

「手をだしてない!だされたの!」


 わちゃわちゃしていると、儀式の間にリークちゃんがやってきた。


「話は聞いてるよ。半妖の街に隠密で行くんだろ?

 ついてきな。」


 リークちゃんは目をキラキラ輝かせながら

 自分の部屋に俺達を連れて行った。



「じゃーん!!神力反応型自動変装機だ!」

「にゃー。」


 リークに手渡されたカチューシャをネルが付けた瞬間

 ネルの頭に猫耳が生えてきた。


 無表情で猫の真似をするネルがなんとも様になっている。


「か、かわいい……。」

「何かと思えば、くだらん。」


 アセナさんには響かなかったが、

 リーリィにはドストライクだったようだ。


「半妖の街に行くんだから、それなりの格好をしないと

 すぐに正体がバレルだろ?」


 そういうとみんなの分のカチューシャを用意していた。


 リーリィがカチューシャを着けると、

 丸くて小さな熊耳が生えてきた。



「熊!?ク、クマー。」



 生えてきた耳の動物のモノマネを

 しなくちゃいけないルールでもあるのか?


 それにしても熊はクマーとは鳴かないと思います。

 まぁでもリアルにガオーってやられても可愛くないしな。

 いや、可愛いか?



「私には必要ない。」



ボンッ



 アセナさんは頭の上だけ変身し、犬耳を生やした。

 なんか分からないけど、良い感じです。姐さん。


 心の中で、親指を立てつつカチューシャを付けた。

 俺の頭にはブタの耳が生えてきた。


「豚かよー。あ、いざやるとなると恥ずかしいな。

 えーっとブーブー。」

「で、これがトランスポーターだ。」

「いや見ててくれよ!」


 リークちゃんはそうそうに次の機械の説明をし始めていた。

 アセナさんとネルちゃんはともかく

 リーリィまでも無視を決め込むとは……。


「なんだいたのか?」

「いたわ!」

「話進めるぞ。これはトランスポーターだ。

 任務の場所が遠い場合はこれを使って、目的地まで飛ぶ。」


 そんなのあったのか。

 王都へ行くときに使わせて欲しかった。


「それじゃあ中に入って。起動するから。」


 扉を開けて、4人は機械の中へと入る。

 原理とかは教えてくれないんだな。


「頑張ってこいよー。」


 リークちゃんが扉を閉めて、ボタンを押すと

 轟音とともに何故の浮遊感が押し寄せる。


 ワープのようにパッと目的地に着くわけではないようで

 しばらくの間は沈黙が続いた。


 それに耐え切れなくなり、俺は口を開いた。


「神様であることを黙っとけば、別に

 変装なんてしなくてよかったんじゃないか?」


 豚の耳を指で弾きながら疑問に思っていたことをぶつけた。


「半妖の街では、人間であるということも隠した方がいい。」

「なんでですか?」

「差別。ダメ絶対。」

「そういうことだ。

 半妖は昔、姿かたちが人間と違うことから迫害を受けている。

 その記憶や感情が受け継がれている。仲間意識は異様に高く

 それ故に非常に排他的だ。」

「なるほど。」


 当たり前のことだが、こっちの世界にも歴史があるんだな。


「だからあまり長居せぬよう、サクッと終わらせるぞ。」

「りょー。」

「そうだもう1個。なんでアセナさんやネルちゃんには神職者がいないんだ?

 そういえばアイナさんにもリークちゃんにもいないようだけど。」


何故だかわからないが、少し気まずい雰囲気が流れる。


「それは、神職者が――。」

「ネル、よせ。今は伝えるべきではない。

 直に卜部自身でわかることなのだから。」

「は、はぁ。」


なんだか上手くはぐらかされてしまった。


そうこうしていると話の切れ目にちょうど到着時間が重なった。


少しの衝撃の後、俺達を取り囲んでいた空間が上から消えていく。



「うぉおお!ここが半妖の街 ヨーデルか!」



街並みは、江戸時代の日本のようで少し興奮してしまう。

それにしても出発したのは、お昼過ぎだったのにやけに暗い。

半妖の街だからか?



「おい、はしゃぐな。行くぞ。堂々と歩け。」

「お、おう。」



こうしてアセナさんの先導のもと街を歩くことになった。


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