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王都防衛⑪

 アセナは高速で魔獣の元へ飛んでいた。


 リップの能力は、我々の未来を確立するための

 戦力になるため守り抜くこと。


 これが神達に通達されているある種の決まり事だ。


 そして今しがたその能力をはじめて目にした。


 外からは干渉することのできない、

 空間支配術でありながら過去に

 起こった事象を否定し無かったことにした。


 彼らが受けた魔獣からの攻撃を

 あらゆる事象を記憶する【虚空記憶廻廊(アカシックレコード)】から

 抹消したのだ。


 あの年齢で【神力奥義】を発動できること自体が

 驚きなのだが、それ以上だったとは。


 リップはこの先の戦いの鍵になる。

 そう確信した。


「消えてもらうぞ。魔獣。

 【神力展開:神獅爪牙(バロンズナークーン)】!」


 アセナの右手に巨大な爪の斬撃が浮かび上がる。

 それを魔獣に向けて全力で振り下ろす。


 魔獣はその攻撃を見て、両手でガードする。

 しかし斬撃は魔獣の両腕を粉々に切り刻んだ。


「ガァアアアアアア!!!!」

「チッ、腕しか切れないか。」


 腕が切り落とされ、魔獣の胸が露わになる。

 そこには今までと比べものにならないほどの

 太さの棘が1本生えてきていた。


「なに!?両腕のガードはこれを隠すフェイクか!?」


バシュッ!!!!


 魔獣はニヤッと笑い、棘を放出させる。

 空中では体勢を立て直せない。

 このままでは直撃してしまう。



「使いたくはなかったんだがな。

 【神力奥義:百獣夜行(ひゃくじゅうやこう)】!!!



 アセナが唱えると、無数の獣が出現し

 魔獣が放出した棘に向かって突進していく。


 魔獣の棘は少しずつ削れながらアセナに向かってくる。



ガオオオオオオオ!!!!!!!



 そして最後に、巨大な獅子が現れ

 棘と魔獣を一気に丸呑みした。



ドガーーーーーン!!!!



 す、すごすぎる……。


 俺達が束になっても敵わなかった

 魔獣を一人で倒してしまった。


 これが神様という奴なのか?


 俺達のところにアセナさんが帰ってくる。


「リップは大丈夫か?」

「はい。なんとか大丈夫そうです。」

「ん……、神力を使い過ぎてしまったな。」


ボンッ


「へ?」


 狼が煙に包まれ、煙から綺麗な銀髪ロングの女性が現れた。


「なんだ?私の顔に何か付いているか?」

「いやいやいや、え?あなたアセナさんですか!?」

「当たり前だろ。」


 うぇえええええ!?

 この女の人が、あの狼に変身していたのか!?


 それじゃあ俺はこの人の背中に!?

 ちぃ!どうせなら跨っておけば良かった!



ズズズズズズッ


「!?」


 そんなことを考えていると、平和の時計塔の方から

 大きなものを引きずるような音が聞こえた。


「なに!?2体目だと!?」


 時計塔の方に時空の切れ目のようなものが出現し、

 さっきと同じくらいの大きさの魔獣が出てこようとしている。


「まずい。もうあまり神力が残っていないぞ。」


 アセナさんももうさっきみたいに戦えない。

 同レベルの魔獣であれば、確実にやられる。


 とてつもない緊張感の中、ただ魔獣が

 ゆっくりと出てくるところを見届けることしか出来なかった。


 どうすればいいんだ……。



バシュン!!



 絶望にも似た感情を抱いていた矢先、

 急に魔獣と時空の切れ目は姿を消した。


 気が付けば、空も徐々に普段の明るさを取り戻していった。



「き、消えた?」

魔門(ゲート)が閉じたようだ。助かった。」


 空が明るくなることで、壊された王都の悲惨さが

 より一層実感できる。



 俺達は、王都を防衛できたのだろうか?



 それに一体、俺達は誰から王都を守ったんだ?



「あの量の魔人と魔獣を通す魔門(ゲート)

 並大抵の魔術師、悪魔では不可能だ。」

「それでは……。」

「あぁ。大罪の悪魔だ。」






「あーあ。倒されちゃった。

 やっぱり、魔獣じゃダメね。」



 謎の女が時空の切れ目から現世を覗いている。



「でも、あの狼かっこいいわぁ。

 欲しくなっちゃった。」



 女は舌なめずりをして大きく尻尾を振る。



「王都のついでに狼も貰っちゃおう。」



 女が椅子から立ち上がると、後ろから黒い空間が出現し

 二つ括りのギャルが顔を出した。



「セっちゃん。帰っておいで!あいつマジ激おこだよ。」

「えぇーー。これから良い所なのにぃ。」

「マジ早くして。ウチまで殺されかねないからマジで。」

「もう!仕方ないわねぇ。」


 そういうと女は、ギャルが開けた黒い空間へと入っていった。



 大きな狐の尻尾を振りながら。


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