王都防衛⑩
コーリンは魔獣が放った棘にに貫かれた。
「おねえちゃん!!!!」
「コーリン!!!」
俺達はコーリンの元に駆け寄る。
「馬鹿者……、私に構うな……。」
魔光線はその後の棘放出を当てるための囮だったのか。
あの化け物、しっかりと考えて戦ってやがる。
「よぉ。よぉ。もう1発来るぞ。」
魔獣は再度口を大きく開けて、漆黒の塊を作っていく。
棘の放出にも気を付けないといけないが、
まずはあの魔光線を避けないと話にならない。
「一旦、散らばるぞ!コーリンは任せろ。」
足に神力を貯めて、魔光線の発射と共に
バラバラに飛び立つ。
ドガーーーン!!!
魔光線は、俺達が元いた場所を焼きつくす。
まともにくらったら跡形もない。
俺は魔獣の左側を飛びながら王都が壊されていくのを目にした。
ルインは魔獣の右側、魔獣の後ろにコーリンを抱えたルカインが飛んでいる。
分断されてしまったが、これで的は定まりづらくなるはずだ。
「ガァアアアア!!!!」
魔獣の雄叫びに大気が揺れる。
空中に浮かんでいる俺達にはそれがもろに感じられた。
早く着地しないと、空中で軌道修正はできない。
そんなことを考えていると、魔獣は全身に力を籠め始めた。
「くるぞ。棘放出だ。
飛んできた奴は死ぬ気で避けろ!」
「「おう!!」」
俺は自分の方向には飛んできませんように
と、心のどこかで願ってしまったのかもしれない。
いや、俺だけじゃない。おそらくみんなそうだ。
それが仇となった。
「ゴァアアアアアアアアア!!!!」
ドガガガガガ!!!!
「全方位だと!?」
魔獣は自身の棘を全て放出しだした。
その攻撃範囲は全方位に渡る。
「くそぉ!!みんな耐えろ!
【魔術:防鎖・風読】。」
「【神術解放:豪】!!!」
「【我流:霞・連弾】!!」
ドガガガガガ!!!!
空中で避けることも出来ず、
向かってくる棘を片っ端から捌いていく。
しかし、その数の多さ、速さに対応しきれていない。
「「「ぐぁあああああ!!」」」
無数の棘が身体をかすめる。
だめだ、意識が飛びそうだ……
こんな状態で真正面に棘が飛んで来たら……貫かれる……
「よく耐えたな。褒めてやる。
【神力展開:獅子王の権威】.。」
ズドーーーーン!!!!
宙を待っていた無数の棘は、まるで重力が強くなったように
全て一瞬にして地面へと叩きつけられた。
自由落下していた俺の身体が急に
下から支えられているような感覚を覚えた。
「ア、アセナさん……。」
「しゃべるな、小僧。安静にしておけ。」
「ははは……、背中乗せてもらっちゃったよ……。」
アセナは目に止まらぬ速さで、みんなを救出し
自分の背中に乗せていく。
「お姉ちゃん……!大丈夫?」
「あぁ……、リップ様……。
私は……、大丈夫で……す……。」
そして、魔獣から少し離れたところで降ろしてくれた。
「あの魔獣は少しばかり厄介だ。
私の目で見ただけでもコアが4つある。」
コアが4つ……、だと……。
4人で力を合わせて、1つ破壊することができたが
今のあの状態の魔獣に近づける気がしない。
「お姉ちゃん……!死なないで……!」
「リップ様……、ご安心…くださ…ガハッ!」
コーリンは吐血してしまった。
無理もない、棘が貫通してしまっているのだから。
このままじゃコーリンが死んでしまう。
「ごめんね……。
ダメって言われたけど、あの技使うね……。」
「だ、だめです……。あれ……だけは……。」
「介添人の名のもとに、万物の事象、理を示せ。
【神力奥義:虚空記録廻廊】。」
パァン!!
リップが詠唱を終えたとき、
王都の風景は消し飛び、純白の空間が広がった。
「な、空間支配術だと……!?」
この光景にアセナさえも驚いている。
白い空間を囲むように周りには回廊がそびえ立っている。
リップの格好も、マントにベレー帽を被るなど変わっている。
「【開示】」
リップがそういうと、回廊から4冊の本がリップに向かって飛んでくる。
本はリップの周りで止まり、宙に浮きながら開かれる。
「【改竄】。」
本たちは光りだし、書かれている文字が剥がれ落ち宙にまう。
すると、俺達の傷がみるみる内に癒えていく。
な、何が起きているんだ!?
「お姉ちゃん……、ごめんね……?」
パァン!!
気が付くと、俺達は王都に戻っていた。
魔獣にやられた傷はすっかり治っていた。
俺だけじゃない、4人ともだ。
「リップ様!!!」
コーリンが叫んで、リップの元へと駆け寄る。
リップはその場で血を流して倒れていた。