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王都防衛⑨

「ルイン!!」

「お、おねえちゃん!!!」


 二人は駆け寄り、再会を喜んで抱きしめあう。


「ほい。【解除】。」


 鎖が俺ごと引っ張りそうになった瞬間、

 ルカインは、俺とルインを繋いでいる鎖の術を解いた。


「本当にお姉ちゃんなの!?」

「うん、そうだよ……。コーリンお姉ちゃんだよ……。」


 二人は抱きしめあいながら号泣している。


 ルカインは何かを知っているようだったが、

 俺には正直さっぱり理解できない。


「はいはい。男ってのは感動の再会を邪魔しないもんだよ。」


 俺の背中を押して、無理やりその場から離れさせる。


「ルインに乱暴してると思ったけど、大丈夫だったみたいだな。」

「そんなことするかよ。

 あんたに見捨てられて逆に同情したわ。」

「見捨てるだなんてとんでもない!

 現に助けにきたじゃない。」


 確かにあのまま助けに来てくれなかったら

 魔人の放つ光線に飲まれて今頃死んでいただろう。


「いや、あれはコーリンの技だろ。」

「ありゃ、ばれちゃった?」


 ルカインと話していると、急に大きな影が俺達を包んだ。

 上を見上げると、魔人が俺達を踏み潰そうとしていた。


「やべぇ!踏まれるぞ!」

「だから感動の再会を邪魔するなって。

 【魔術:跳鎖(ちょうさ・)発条(はつじょう)】。」


 ルカインが唱えると、

 大きな鎖が一本、空中に張られた。


 魔人はその鎖を踏み、ミシミシと鎖がしなりながら唸る。


「潰される!!」

「いんや。大丈夫。」


 しなっていた鎖は、俺達の頭上でピタッと止まり

 その反動で魔人の足を跳ね返した。



ドガーーン!!



 魔人は踏み込んだ足が返されて、

 バランスを崩し尻もちをついた。


 この人、強いぞ……。


 俺達では歯もたたなかった魔人に

 意図もたやすく尻もちを付かせた。


「すまない。少し取り乱してしまった。」


 コーリンは魔人の盛大な尻もちの音で我に帰っていた。


「おや、すまねぇ。大きな音で水を差しちまったようだな。」

「いや、いいんだ。この感情はあの魔獣を倒すまで取っておく。」

「魔獣?あれは魔人じゃないのか?」

「あー、それはな。」



 魔人とは、

 魔界の穢れや浮遊魔力が合体してできる意思を持った魔力。


 魔力は神力と違って、残存効果が高い。

 魔術を使えばその場に魔力が数時間から数日は痕跡が残る。


 その痕跡が浮遊魔力である。


 魔人の中には知能の高い奴もいれば低い奴もいる。

 これは浮遊魔力の質によって変わるようだ。


 そして浮遊魔力の濃さによって魔人は魔獣へと変化する。


 魔獣は魔人よりも格段に強い。

 一般的にサイズも格段に大きくなる。


 と、ルカインは説明してくれた。


「なぜ、お前がそれを知っている?」

「んー。まぁ本気でヒーロー目指してたからね。」


 ルカインは頭をかきながら懐かしむような目でそういった。


「魔人でも魔獣でも関係ないよ。

 とりあえず、倒せばいいだろ?」

「お、元気になったみたいだな。ルインちゃん。」

「ルインちゃんって呼ぶな。」


 なんでだろうか。

 二人が加わっただけで、倒せそうな気がしてきた。


「ガァアアアアアア!!!!」


 急に魔獣が立ち上がり雄叫びをあげる。

 その雄叫びと同時に魔獣の身体から無数の棘が出現する。


「あーあ、変異が始まったな。

 こりゃ急いだ方がよさそうだ。」

「その意見には同意だ。一気にコアを破壊する。

 いけるか二人とも?」

「「あぁ!」」


 そう言って四人揃って魔獣に飛びかかる。


「いくぞ。ルイン。」

「うん!」


「【十種刀】、」

「【我流】、」


「「【叢雲】」!!!!」


 二人は跳躍により、一気に間合いを詰め

 魔獣の胸のコアに向けて巨大な斬撃を突き刺そうとしている。



 魔獣はそれに反応して、両手で自分の胸をガードしようとした。



「あー、防いじゃだめだろ。【魔術:封鎖(ふうさ・)拿捕(だほ)】。」



 鎖が出現し魔獣の両手を捉えて引っ張り、

 胸を強制的に開けさせる。



「「くらえぇえええ!!!」」



ザシュ!!!!!



 二人の斬撃が、魔獣の胸に突き刺さる。



「ガァアアアアア!!!!」


 魔獣は苦しんでいる。

 しかし、コアを破壊すれば消滅するはずだ。



「突きが甘かったか!?」

「そのために俺がいるんだよ!!!【神力解放:(ゴウ)】!!!」



 俺は二人が突き刺した斬撃を

 おもいっきり殴り、より深く魔獣の胸に突き刺した。



ドガァーーーーン!!!



 攻撃が成功した瞬間、魔獣は大きく爆発した。

 その爆風に巻き込まれ吹き飛ばされる。


「大丈夫か、みんな?」

「あぁ、なんとかね……。」

「なら、もう一度立ち上がる必要があるみたいだ。」


 空を見上げると、

 さっきコアを破壊したはずの魔獣が確かにそこにいた。



「ゴァアアアアアアアアアアア!!!!!」



 さきほどよりも咆哮の威力が増している。

 身体の芯からビリビリと伝わるものがある。


 見た目も棘の太さと長さが段違いに成長している。



「な、なんでだよ!コアは破壊したはずだろ!?」

「私にもわからん。破壊しそびれたか、

 それともコアが2つ以上あるのか。

 ただ、戦うしかない。」

「よぉ。よぉ。面白くなってきたじゃないか。」


 二人にも焦りが見える。

 コアを破壊したはずの魔獣が生きているなんて想定外だ。


「まずいな。また魔光線がくるぞ。」


 魔獣は、大きく口を開けて漆黒の塊を作っていく。

 前回のものとは比べものにならない大きさだ。


「みんな下がれ、私が受け止める。

【十種刀:産土(うぶすな)加護(かご)】!!」


 魔獣の放った魔光線がコーリンの作った壁に激突する。


「く、耐えてくれ……。」


パキパキッ


 白い壁にドンドンひびが入っていく。

 このままじゃ防ぎきれない!


「【魔術:防鎖(ぼうさ・)添柱(そえばしら)】!」


 白い壁に十字に鎖が添えられる。


「耐えろぉ……!!」



ドガーーーン!!!



 壁や鎖は粉々に砕け散ったが、なんとか防ぎ切ったようだ。


「お姉ちゃんすごいよ!」

「ははは……、なんとかなったよ。」


 ルインは、コーリンに近寄っていく。


「!? ルイン危ない!!!!」


 コーリンは突然ルインを突き飛ばした。



ザシュッ!!!



「え……おねえちゃん……?」



 次の瞬間、

 魔獣の身体から放出された棘がコーリンを貫通していた。



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