王都防衛⑧
「はぁ…はぁ…生きてるかルイン……?」
「はぁ…はぁ…当たり前じゃん……。」
俺とルインは背中合わせで、魔人と戦い
残すところあと2体となった。
最後の2体ははっきりと人間の形をしている。
しかも手に持っている武器も全く違う。
俺に相対している魔人は巨大な鎌を持ち、
ルインの方には大きな盾を持った魔人だ。
俺は巨大な鎌の一撃を躱すことで精一杯だ。
ルインの方も何度攻撃を与えても盾で受け止められている。
「卜部……。俺思ったんだけどさ。」
「あぁ……。俺もだ。」
俺達は合わせたようにニッと笑い、敵に向かって走り出した。
そして敵の直前で反転し、反対側の敵の方へ走った。
「気をつけろよ。」
「そっちもな。」
パァン
すれ違いざまにハイタッチをし、戦う相手をスイッチした。
「盾なら俺が壊してやる!【神術解放:豪】!!」
「鎌くらい切り刻む!【我流:霞・連弾】!」
俺達は、100人以上いた魔人に勝利した。
最初は雑魚だったにしろ終盤戦は苦戦を強いられた。
「なかなかやるね。卜部。」
「ルインもな。」
俺達は勝利の余韻に浸っていた。
ドガーーーン!!
「!?」
すぐ近くの時計塔で爆発音が響く。
爆風に飛ばされそうになるが、なんとか踏ん張ることができた。
「おい、卜部あれ!」
「え?な、なんだあれ……?」
見上げると、そこには巨大な魔人が君臨していた。
なんだよあれ……。でかすぎるだろ……。
狼はあんな奴から王都を守れって俺達に言っていたのか?
これは流石に無理ゲーじゃないか?
「卜部!避けるぞ!」
「うぉおお!?」
ドガーーーン!!
巨大な魔人にはたった一歩、歩く動作だったかもしれない。
だが、俺達にはその一歩によって圧死する寸前だった。
ルインと見えない鎖で繋がれていたから助かったものの、
それがなかったら反応が遅れていて今頃ぺちゃんこだ。
「あ、ありがとう。」
「やるしかないよ。俺達で。」
「やるって言ったってどうするんだよ?」
「あいつも魔人だ。きっと胸の辺りにコアがあるはずだ。
それを斬る。」
ルインは剣を構え、足に力を入れて全力で跳躍する。
しかし鎖が張りつめて、途中でピタッと止まってしまった。
「ぐぇ!!!」
ビターーーン
地面に叩きつけられるルイン。
痛そうだ……。
「ちょっと!何してんだよ!
卜部も飛ぶんだよ!」
「いやいやいや!俺そんなに飛べないから!」
「さっきすっごいパンチしてただろ!?
その要領でできるでしょ!」
無茶なことを言ってくれる。
【神術解放:豪】は確かに、神力を右手に籠めて殴る技だが
足に籠めたことなんてない。
待てよ。神術じゃなくても神力を籠めればいけるんじゃないか?
よし!ものは試しだ!やってやる。
「よし。なんとかやってみる。いちにのさんで行くぞ。」
「オッケー。」
俺は体中に流れる神力が足に流れていくイメージを
頭の中で想像する。
「いち、にの、さん!!!」
神力を籠めた足でおもいっきり飛び出す。
すると周りの景色は一変した。
建物は消え、遠くの山が見える。
「うぉおおお!!!???」
「卜部飛び過ぎ!!!
めちゃくちゃ引っ張られたんだけど!?」
「ごめんごめん。でも、良いところにきた。
ほら、魔人の真上だ!!」
下を見るとあれだけ巨大だった魔人の
さらに上を飛んでいた。
「よし。デカいの一発お見舞いするぞ!」
「了解!」
俺達は自由落下の加速度を利用し、
お互いにいま出せる最強の技を繰り出す。
「くらいやがれ!!【神術解放;豪火】!!」
「うぉおお!!【我流:叢雲・一槌】!」
真っ赤に燃えるガントレットの拳と、巨大な斬撃が
魔人の頭頂部に直撃する。
ドガーーーン!!!
大きな煙が巻き起こり、魔人を覆う。
俺達は着地し、魔人の様子を窺った。
ゆっくりと煙は晴れていく。
「うそ……だろ……。」
「無傷かよ……。」
俺達の最大の技を浴びせてもまったくの無傷で
魔人はその場にそびえ立っていた、
俺達が敵わないのか?
すると、魔人は口を大きく開けて力を貯め始めた。
口の前には漆黒の塊が一瞬にして出来上がり、
俺達のいる地面に向かってそれを放った。
黒い光が、俺達にすごい速さで向かってくる。
だめだ。ここまでか。
諦めかけたそのとき、
「十種刀:産土の加護】。」
俺達の目の前に白く輝く壁が出現し、
その光を全て受け止めてくれた。
「ルイン!!!」
「お、おねえちゃん……?」