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王都防衛⑥

「穢れは大丈夫か?」

「うん……。なんともない。」



 アセナはリップを背中に乗せて走っていた。

 その速さは一般人には視認できないほど早い。


 王都に魔人が流れ込んできた。

 ということは、王都のどこかに魔界と繋がる

 魔門(ゲート)が開かれたということだ。


 魔界には穢れが充満しており、

 魔人とともに流れ込んでくる。


 リップほどの年齢で穢れに耐性があることは

 非常に稀でありアセナも内心驚いていた。



「アセナさん……、どこに行くの?」



 リップはまだこの状況を上手く把握していないようだ。


「お前を神殿へと逃がす。

 【時間の神】であるリップは、こちらとしても

 失うわけにはいかない。」


 時間を司る能力を持つリップは、

 大罪の悪魔との戦いで必要不可欠である。



「お姉ちゃんたちは失ってもいいの?」



 いつもは素直に言われたことを受け止めるリップだが、

 珍しく自分の考えを述べている。


 アセナは大人としてしっかりと答えてあげないと

 といけないと無意識にそう思った。


「そういうことじゃない。

 いいか?リップ。お前は特別な人間なんだ。

 大罪の悪魔からこの世界を救える特別な――」

「お姉ちゃんだって特別だよ!」


 リップが声を荒げた。


「アセナさんだって、リーリィちゃんだって、お兄ちゃんだって。」

「そうなんだが、」

「アセナさん、戻って。

 僕がお姉ちゃんの近くにいないと使えない技もあるんだ。

 もうお姉ちゃんの側から誰も居なくなっちゃだめなんだ!」



 言うようになったじゃないか。


 リップの心からの言葉にアセナは答えるため、足を止めた。

 その瞬間、アセナは何かを感じ取った。


「わかった、戻るぞ。あいつらが危ない。」


 アセナはリップを乗せて、来た道を全力で戻っていく。




「【神術解放:(ゴウ)】!!!」


ドカーン


 俺とルイスは、大勢の魔人に囲まれながらも

 なんとか戦い抜いていた。


「ルイス!案外いけそうだな!」

「何言ってんのさ。ちゃんとコアを破壊してから言ってよ!」

「コア?」


 俺の攻撃を受けて、

 一瞬消滅した魔人が再び形を戻し襲ってくる。


「うぉ!?復活した!ってコアってなんだよ?」

「戦ってて分からなかったの?

 あいつらの身体の中心に丸い球があるじゃん!

 あれ壊さないと復活するよ。」


 攻撃を繰り広げながら会話ができるほどには余力がある。


 魔人 なんていうから、少しは強いと思っていたが

 本当に低知能らしくただ単に突っ込んでくるだけだ。


 まぁ数の暴力とも言うので、少し疲れてはきたが。


ドンッ


「うぉあ!?後ろから!?」


 今まで前方向からしか攻撃してこなかった魔人が

 後ろから攻撃を繰り出してきた。


 こいつらも戦いの中で成長しているのか?


 俺はその勢いに負けてその場で倒れ込んでしまう。

 それを見越して大量の魔人が俺に群がってくる。


「うぉおおおおお!?ルイス助けて!!」

「まったく。【我流:鳥籠(とりかご)・無情】。」


 ルイスの放った斬撃によって、

 俺の周りの魔人が一気に消滅する。


「あはは。サンキュ。」

「もう。しっかりしてよね。」


 ルイスは俺に手を差し伸べてくれた。


「むこうも成長してるみたいだし、

 こうやって戦うよ。」

「おう!」


 俺達は背中合わせに立ち、お互いの背後を守る姿勢を取る。


 後ろを気にしないで良いのは非常に助かる。

 冷静になった目で魔人を見ていると少し異変に気が付いた。


 最初は頭から黒い布を被ったような形状をしていた、

 魔人たちがいつの間にか、人型に変わっている。


ガキン!


「なんだ!?」


 背後から金属音がして振り返ると、

 ルイスが魔人と剣を交え、つばぜり合いをしていた。


 するとこちらにも黒い剣を持った魔人が向かってきた。

 ガントレットで魔人の斬撃を受け止める。


 こいつら武器まで使うようになっている。

 確実に戦闘力が上がっていっている。


「俺達も成長するよ。」

「当たり前だ!」





「よぉ。よぉ。姐さん、ちょっと待ってくれよ。」

「お前に姐さんと呼ばれる筋合いはない!」



 ルカインとコーリンは魔人と戦いながら屋根の上を走っていた。



「お前たちは本当に人を殺していなんだろうな?」

「だから言ってるじゃないか。あれは 救済 だって。」



 過去視によって、ルイスが人を切っているところを目撃した

 コーリンは自力でルカインのところまで辿り着いていた。


 しかしその過去視の角度が悪かったのか、

 鎖が見えず人斬りと勘違いしている。


「救済などお前らに何のメリットもない!

 なら何故 救済 とやらを続けているんだ。」


 ルカインは少し黙って考える。

 その間も魔人はどんどん集まってくる。


「【魔術:弾鎖(だんさ・)炸裂(さくれつ)】!

 うーん。ヒーローになりたいからかな?」


「馬鹿にするのも体外にしろ!【十種刀:華火】!」


 ルカインの放った術で鎖が炸裂し、魔人を一層する。

 また集まってきた魔人をコーリンの技で消滅させる。


 手練れの二人には、少しも魔人が近寄れないでいる。


「姐さんもなかなか強いねぇ。惚れ惚れするよ。」

「だから私を姐さんと呼ぶな!

 私を姉と呼んでいいのは特別な奴だけだ!!」


 コーリンが剣をルカインに向けて振るった。


 ルカインは寸前のところでその剣を避けることで

 そこに居た魔人に斬撃が当たる。


「ふーん。姐さんの言う、特別ってなんなんだい?」


 ルカインはコーリンを試すような目でそう質問する。


「私の特別は、失いたくないもののことだ。

 絶対に守ると決めたものだ!」


 コーリンは、迷うことなくそう答えた。


「なるほどね。コーリンさん。」


「つまらん問答はいい。

 早くあの男の子のところへ案内しろ。」

「おや。ルインがよく男って分かりましたね。

 あの髪型だからよく女と間違えられるんだけどな。」



「間違えるわけがない。

 あの子は、ルインは私の生き別れの弟だ!!!」


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