王都防衛⑤
ルイスに叩き起こされ、朝の9時だというのに
窓の外は真夜中のように真っ暗だった。
「本当に朝の9時か?
外は真っ暗で、人が誰も歩いてないぞ?」
騒いでいるとリップくんを起こしてしまった。
「ん……、なんか変な感じする。」
「変な感じ?」
「窓を閉めろ!!!」
ルイスが窓を無理やり閉めた瞬間に、
無数の黒い塊が窓にぶつかってきた。
ドガガガガガガ!!
「うわぁ!?なんだ!?」
よく見ると黒い塊は意思を持っており、
ギョロギョロとした眼でこちらを覗いている。
ルイスが窓を閉めなければこいつらが
部屋の中に入ってきてしまっていた。
ドン!ドン!ドン!
黒い奴らは外から窓を何度も何度も叩いてくる。
ここを開けろと言わんばかりに。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
「おいおい。これやばくないか?」
「こいつら俺達を狙ってるの?」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
窓を叩く音が徐々に激しくなっていく。
このままじゃ窓を割られてしまう。
ピシッ
窓に亀裂が入る。
覚悟を決めるんだ。
「ルイス。戦えるか?」
「あ、当たり前だろ?」
二人は武器を手に持ち、身構える。
こんな数の敵を一度に相手したことなんてない。
敵の能力も分からないが、俺のやれることをやるんだ。
ピシピシッ
「くるぞ!!」
「お、おう!!」
パリーーーン!!!!
窓ガラスが割れた瞬間に、黒い奴らは一気に部屋へと流れ込んできた。
一瞬にして部屋の中が真っ暗になる。
ダメだ。
部屋の中から見えていた数の倍以上はいる。
やられる……!
「【神力展開:獅子の咆哮】!!」
ドガーーーン!
目の前を大きな光線が横切る。
黒い奴らは一瞬にして目の前から消滅した。
「なんとか間に合ったな。」
「アセナさん!」
調べたいことがあると、どこかへ行っていた
【獣の神】のアセナさんが助けにきてくれた。
それにしてもあんなに大量の敵を一瞬で
消し飛ばすなんて、すごい威力だ。
もしあの光線が自分に当たっていたらと思うとゾッとする。
アセナは黙って、リップを自分の背中へと乗せた。
「お前たちは、外であいつらと戦え。
10分したら加勢してやる。持ちこたえろ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ!
あいつらは一体なんなんだよ!」
外に出ようとしている狼を呼び止める。
説明も無しに戦えはさすがにひどい。
「あいつらは魔人だ。
動くものに反応する知能の低い奴らだ。
だが、このままでは眠らされている王都の民にも被害が加わる。
お前たちが王都を守れ。」
それだけを言い残し、アセナはリップを連れて飛び出していった。
いきなり王都を守れなんて言われもな。
そんなことを考えていると、横でルイスがわなわなと震えていた。
「ルイス、大丈夫か?」
「王都を守れとかカッコイイ!!」
「はえ?」
「よし!ここじゃ狭いから外に出るぞ!
俺達で王都を守るんだ!!」
おいおい勘弁してくれよ。
ヒーローごっこじゃないんだぞ?
ルイスはアセナの光線で破壊された壁から
勢いよく外へと飛び出した。
もちろん見えない鎖で繋がれている俺も
引っ張られて外に出る羽目になってしまった。
着地した瞬間に、ものすごい量の視線を感じた。
100を超える魔人達が、俺達に向かって一斉に群がってくる。
「よぉし!お前、俺の邪魔すんなよ!」
「お前じゃねぇ。卜部だ。」
「そうか。それじゃあ卜部行くぞ!」
2対多数のバトルが始まる。




