王都防衛
俺達は暴食の悪魔との戦いの後、【愛の神】のアイナさんに連れられて
旅の終着点である神殿へと辿り着いていた。
「卜部さん。腕が治ってよかったですね。」
「うん……。すごい痛かったけどね。」
ここで、儀式を行うことで正式な神として認められる。
そうすればリーリィの夢も叶う。
そうなればこれで俺達の旅は終わってしまうのだろうか?
「ここが、儀式の間です。」
神殿の最奥へと案内され、扉をくぐると
肌で感じられるほどの神秘的なオーラを放つ部屋があった。
そこには5つの椅子が用意されており、
1脚の椅子を中心に4脚の椅子が取り囲んでいる。
「ここで4人の神様から推薦を受けられれば
正式な神として認められます。」
「へー。会員制みたいなもんなんですね。」
「まぁそんな感じですね。」
ん?待てよ?
今ここにいるのは、俺とリーリィとアイナさんの3人だけ。
神様からの推薦ということは俺は除外される。
つまりあと3人の神様を連れてこないといけないってことか?
「えーっとですね。正確には4人ですかね?」
「え?」
心が読まれた。
「なんでですか?アイナさんも神様ですよね?」
「んーっと……。言いづらいのですが、
私個人として、まだリーリィさんを神様として正式には認められないです。」
「やっぱりそうですよね……。」
リーリィは落ち込んでしまった。
やっぱりということは、リーリィは儀式の内容を知っていたのか?
「じゃ、じゃあどうすれば認めてもらえるんですか?」
「修行じゃな。」
扉の方から声が聞こえた。
振り向いてみると狼がそこにいた。
「うぉ!?狼がしゃべった!?」
「アセナさん。いらしたんですね。」
「おぉ、アイナ久しいな。」
狼は、のそのそと四足歩行でこちらへと近づいてくる。
銀色の綺麗な毛並みをしており、そこまで大きくはない。
「こちらは【獣の神】のアセナさんです。」
「よ、よろしくお願いします。」
リーリィは戸惑いながらもしっかりと挨拶ができるいい子だ。
「アイナよ。この子に修行をつけてやれ。」
「もちろんそのつもりですよ。立派な神様にしてみせます。」
「私はこの小僧の面倒を見よう。」
話が勝手にどんどん決まっていく。
それにしてもいい毛並みだ。
実家で飼っていた柴犬を思い出す。
「そうと決まれば善は急げです!
それじゃあリーリィさん、修行に行きましょう!」
アイナはリーリィの肩を押して、部屋から出ていってしまった。
「こちらも行くぞ。」
「え?どこに?」
「王都だ。最近、王都で魔力反応が頻繁に起きている。
魔術師がよからぬことをしている証拠だ。
それを調査する。ついてこい。」
そういうとアセナは、走り出した。
ちょっ!4足歩行動物の走りに、2本の足で追いつけるわけないだろ!
必死に追いかけるが、背中はどんどん小さくなっていく。
「ちょっと待って!早い!早いよ!
せめてもっとゆっくり!あ、そうだ背中に乗せてください!」
「殺すぞ。」
「あ、はい。走りまーす。」
えげつない殺気を感じたので頑張って走ります。
神様が殺すとか言っていいわけ!?
神殿から王都まではそこまで遠くない。
いつでも見守れるように近くに作られているそうだ。
まぁ近いといっても走って2時間くらいかかるんですけどね。
「はぁ……はぁ……、着いたんですか?」
「この程度で息が切れるとは、情けない。」
門をくぐると、まず人の多さにびっくりした。
センドーシュの街も栄えているとは感じたが、レベルが違う。
さすが王都と言われているだけはある。
様々なお店が建ち並び、出店のようなスタイルを取っている。
田舎者がここにくれば、何かのお祭りをしているんじゃないかと
感じるくらいだ。
「あー!かわいいねぇ~。リップきゅんかわいいよぉ~。」
ん?なにか聞き覚えのある声が聞こえた。
あれは、被り物のお店か?
よく見ると、ウサギの耳の被り物をつけた小学生くらいの男の子と
それを愛でているショタコンお姉さんの姿が見えた。
この状況をもろともせず、アセナは2人に近づいていく。
「コーリンよ。久しいな。」
「うぇ!?アセナ様!?どうしてここへ!?」
「よっ!久しぶり。」
「卜部!生きていたのか!」
俺に師匠を紹介してくれた
神職者のコーリンと【時の神】のリップとまさかの再開を果たした。