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抜け殻のベルク⑤

「【魔術:魂喰い(ソウルイーター)】。」


 マキシの腕がクロエの胸を貫通する。

 貫通した手には、黄色の火の玉のようなものが握られていた。


「おぉー。綺麗な黄色じゃないですか。

 半妖と言っていましたが、これはもう立派な妖怪ですよ。」

「あっ……あっ……」

「クロエ!!」


 クロエは、魂を抜かれているがなんとか意識は保っている。

 クロエに向かって走るが、間に合うか!?


「クロエさん!輪廻転送です!」


 コンは、大きな声でクロエへと指示をする。


「【神力展開:輪廻転送】……。」


 なんとかクロエは術を唱えることができた。

 その瞬間、クロエの身体と魂は水蒸気のように消滅し

 コンの身体へと向かって流れていく。


 そしてコンは姿を変え、クロエへと変身した。


「かはっ!!はぁ……はぁ……。今のはやばかった……。

 コンありがとう……。」


 何が起きているのか、全然理解できない。

 とにかくクロエは助かったようだ。


「二度も……、私の食事を邪魔しましたね……。」


 先程まで機嫌のよかったマキシは

 食事を邪魔されたことに怒りを覚え、急変した。


 その感情の起伏で、黒いオーラが大量に放出される。


「な、なんだ……?」

「お腹が空いた……。食べたい……たべたい……。

 たべたいタべたい多べたい!!!」


 自分の身体を強く抱きしめ、

 何か内なるものと戦っているように見えた。


「あぁぁぁぁぁぁぁああ!!!!」


 絶叫し空を仰いだとき、マキシの掛けていた眼鏡が地面へと落ちた。

 その瞬間、マキシの身体が不自然に膨らみ始める。


「……あがっ!ぐっ!……、がはぁ!!!」


 メキメキと音を立てて、マキシの身体が変わっていく。

 その姿は、もはや人ではない。


 異常に発達した上半身。

 それを支える強靭な下半身。

 頭には、角まで生えており顔は牛のように変形している。


「くいたいクいたい喰いたい!!!……喰ワセロ。」


 な、なんだこいつは……。

 まるで悪魔じゃないか……。


「あかん……。こんなん勝てへん……。」


 クロエの身体は震えていた。

 無理もない。あんな化け物と対峙しているんだ。


「ガァァァァァアアアア!!!!」


 マキシの咆哮で、より一層魂の固体化が進む。

 心臓の辺りが強く痛む。


 だめだ。俺がやらなきゃ。


 拳を強く握るが、感覚がない。


「卜部さん、クロエさん!逃げてください……!」


 リーリィがうずくまりながら声をふり絞る。


「そんなこと出来る訳ないだろ!」

「まだ動けるお二人だけでも……。」


 リーリィは、症状が悪化しているように見えた。

 このままじゃ助からない。


「あぁぁぁぁあ!!!」


 力をふり絞り、やっと右足が一歩前に出た。

 なんでこんなに足が重たいんだ。


「卜部。やるんやな?」

「あぁ……。そうじゃないとリーリィを守れない。」

「男やんか……。やったら付き合ったる!」


 作戦などない。

 ぶっつけ本番の1発勝負。


 昨日覚えたあの技で全て決めてやる。

 あんな巨大な金を溶かせたんだ。

 できないはずがない!!


「いくぞぉぉぉぉおおお!!!【神術解放:豪火(ゴウカ)】!!!」


 ガントレットが赤く輝き、炎を纏う。

 最大出力で一気に決める。

 それしか方法はない。


「うちが隙を作る!その隙にぶち込み!

 【神力展開:円環徒(エンカウント)】!!!」


 クロエが50は超えるほどの分身を出現させ、マキシに向かっていく。


「どれが本物かわからへんやろ!!【神力展開:縁切り・金毘羅】!!」


 分身全ての手が黄色に光り出す。

 全ての分身に能力が付与されているように感じた。

 これならいける!


「雑魚ガ……。【穢術:喰紅 ―赫― 】!!!」


パァン!!!



 何が……起きたんだ……?


 マキシが呪文を唱えると、暗闇の中だった真っ黒な世界は、

 一瞬で赤く染め上げられてしまった。



 全てのものが赤く見える。



 マキシによって本物が見破られてしまい、

 攻撃をくらったクロエの身体から噴き出る血も

 世界に溶け込んでまったく目立たない。


 なんで……、動けないんだ……?


パァン!!!


 世界が暗闇へと戻る。


「あぁぁぁぁぁあああああ!!!」


 クロエの悲痛の叫びが闇夜に響く。


 赤の世界では気付くことができなかったが、

 相当な出血量だ。


 早く手当をしないとクロエの命があぶない。


「くそがぁあああああ!!」


 俺は、燃えるガントレットをマキシに

 全力でぶつける。


「邪魔だ。」

「え?」


 全力でぶつけた。はずだった。

 それなのに、なんであいつは平然と立っているんだ?


 何が起きているんだ?




 なぜあそこに俺の右腕が落ちているんだ?


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