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抜け殻のベルク③

「あれ?みなさんまだお元気なんですか?」


 後ろから、スーツのような服を着た男に声を掛けられた。


 身長は180cmくらいと高く、眼鏡を掛けており

 髪の毛もバッチリ決まっている。

 The仕事が出来そうな男って感じだ。


 でもあんまりスーツは見たくなかったな。

 現世の嫌な記憶が蘇ってくる。


「なんやおっさん?」

「あはは。これは失礼。

 私は、マキシ・スフィフト。美食家です。」


 美食家?

 美食家は職業なのだろうか?

 ただおいしいものを求めている食いしん坊なのではないか?


「私はリーリィと申します。

 おひとつお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 ズイっと前に出てきたリーリィは、ちゃんと名乗ってから質問をぶつけた。


「ええ、もちろん。礼儀正しい子はとても好きですよ。」

「最初におっしゃった、

 まだお元気なんですか?とはどういう意味ですか?」


 俺達の中で緊張が走る。

 たしかにあの言葉はおかしい。


 まるで、自分が村人をあんな風にしたみたいじゃないか。


「あー、そのことですか。

 別に深い意味はありませんよ。

 ただ魂がお元気なのかなって。」

「魂?」


 要領が掴めない。

 男は、そっぽを向いてどこか遠い目で話を続ける。


「私は、美味しいものに目が無いんです。

 昔は美味しいものの為に、世界を飛び回ったものです。」


 その後も指折りしながら

 聞いたことのない名前の料理をどんどん唱えていく。


「でも、世界中のどんな料理よりも美味しいものを

 私は見つけてしまったんですよ。

 それが 魂 です。」

「魂ってパンより美味しいのか!?」

「それは勿論!あの食感とのど越しはもう!」

「なにをごちゃごちゃ言ってんねん。」

「おっと失礼。年甲斐もなく語ってしまいましたね。

 まぁ、簡単に言うと、こういうことですよ。」

 

 マキシは片足を立てて体勢を低くし、

 コンのお腹に腕を貫通させた。


「えっ……。」

「い た だ き ま す!」


 一瞬の出来事で脳が追いつかない。

 男の腕がコンを貫いている。

 しかし血は出ていない。


「こ、コン!戻れ!!」


ボンッ


 コンはクロエの指示で煙とともに姿を消した。

 

 自分の腕を確認し首を傾げた後、納得したように男は言い放つ。


「なるほど。お人形遊びってことですね。」

「うっさい!!」


 お人形遊び?どういうことだ?


「まぁ3人分あれば良しとしましょうか。」


 マキシは眼鏡を少し下げて呪文を唱える。


「【穢土掌握:魂ノ収穫祭(サンクス・キリング)】。」

「えど!?あかん!逃げるで!!」

「もう遅い。」



 呪文を唱えられた時、世界の色が一瞬だけ反転した。

 黒は白に。白は黒に。


 色が元に戻ったかと思えば、

 地震のように地面が揺れ、空にひびが入った。


 そのひびは、どんどん数を増していき、

 徐々に空の崩れ落ち、そこから黒い闇が出現する。


「コン!出てきて!もう一回バネや!」


ボンッ


 消えた時のようにコンがまた出現し、

 ゾンビの群れから脱出したときのようにバネのようになる。


「わかりました!」


 先程のマキシの攻撃が

 なかったかのような元気な声で返事をし

 俺達を空へと連れて行ってくれた。


「あかん!間に合わへん!」


 まだ崩れ落ちていない空へと向かったが、

 間に合わず完全に空は闇に覆われてしまった。



「ようこそ。私の世界へ。」


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