金の成る街⑥
ナタが【金属の神に嫌われている】ことを見破り、
ガントレットを外して攻撃を与えたはずが、ナタは無傷のままだった。
「な、なんで……。」
「鍛錬が足りん!」
大振りだが力のこもった斬撃が俺の左肩を襲う。
「ぐはぁ!!」
木刀だったから良かったものの、剣だったら死んでいたかもしれない。
その点は、ナタが【嫌われ者】であることに感謝するしかない。
しかし、それにしてもあいつの余裕はどこからくるんだ?
攻撃が当たらないトリックを見破られたのに
少しの動揺もみせない。
まだ何か、隠し玉があるのか?
「もう11時だ。あの娘は諦めてこの街の住民として暮らすことだな。」
ナタは俺に背を向けて立ち去ろうとした。
「そうはいくかよぉ!!!」
卑怯であるが、俺はナタの背後からとっておきの一撃をお見舞いした。
「【神術解放:豪】!!!!!!」
「なにぃ!?」
剛よりも威力のある豪。
これならどうだ!!
「背後からの攻撃とは、ルール違反だな。」
「ルール、ルールうるせぇんだよ!」
砂埃が晴れたとき、そこには血だらけのナタが立っていた。
よし!効いてるぞ!!
「なるほど、威力が先程よりも高いのか。どおりで回復が遅いわけだ。
ならば加速するしかない。【神術解放:失態保険】。」
ナタがそう唱えると、身体の傷がみるみるうちに消えていく。
さっきもこれで回復していたのか。
「お前も神職者だったのかよ。」
「言っていなかったか?」
「それはルール違反じゃねーのか、よ!」
左手のガントレットも振り落とし、拳の連撃を与える。
ナタは、全てを捌き切らずに最低限のフォローで反撃してくる。
こいつの絶対的な自信はここから来ていたのか。
相手の剣等の金属製の武器は当たらない。
もし攻撃が当たったとしても、神術で回復できる。
こいつはずっと安全圏で戦いを続けていたんだ。
卑怯な戦い方してきやがる。
「そりゃあ、強くなれないわけだ!!」
「何を言う。現に貴様が劣勢ではないか。
力の差は歴然!」
拳の連撃を食らわせるが、回復してダメージが通らない。
それに比べてこっちは、当たる数は少ないにしろ徐々にダメージが蓄積されている。
言う通り劣勢だ。
神職者は、神術によってここまで力の差を逆転できるのか。
もっと強くならなければいけない。
「お前、なんであんな奴の神職者をしてるんだ?」
「無礼者。センドーシュ様は、偉大なお方だ。」
「街の人達をルールで縛り付けて何が偉大だ!!」
連撃と反撃のさなか、俺達は想いをぶつけあう。
「ここまで街が発展できたのは、センドーシュ様のお力こそだ!」
「そりゃあすげぇや!人を金貨に変える力でかよ!!!」
「……。」
気付いているはずだ。
こいつもセンドーシュの異常性に。
「お前は、【金属の神に嫌われている】。
なら、金の為にあいつと一緒にいたんじゃないんだろ!?
神力で、人々を幸せにしている姿に憧れたから、
一緒にいたんだろ!?
それが、今はどうだ!?
ルールで人々を縛り付けて、金で黙らせている!
そんな姿に憧れるのかよ!?
神様だって人間だ!間違えることだってある!
それを止めてやるために神職者がいるんじゃねぇのかよ!?
考え直せ!ナタ!
今まで金貨に変えられた人々の想いも乗せてやる!
この一発は、重いぜ。
歯食いしばれ!!!
【神術解放:御礼参】!!!!!!」
みんなの想いを乗せた一撃が、ナタに命中する。
その勢いでナタは壁まで飛ばされた。
壁には、血まみれのナタが倒れ込んでいる。
回復はしていない。
それほどの威力があったのだろうか。いや、
「お前の勝ちだ……。この先にセンドーシュ様がおられる……。」
「なんで回復しなかったんだよ。」
「ふ……。何故か回復してはいけない気がしてな……。」
「そうか。」
「早く行け。じきに動けるようになる。その時はまた敵だ……。」
「楽しみにしてるよ。」
急がないと。
俺はセンドーシュのもとへと走り出した。