金の成る街③
「この街から出られなくなるってのは?」
「説明は後です。行きましょう。お送りします。」
「いや、門までなら行けるし大丈夫ですよ。」
「門からはもう出られません。」
え?門は9時に閉まるんじゃなかったっけ?
まだ8時20分で余裕があるけども。
「今から門に行っても、おそらくなんらかの理由をつけて出して貰えません。なので秘密の抜け道を案内します。」
カガリさんは、黒いローブを羽織り外に出る準備を整えた。
「リカ。お父さんは、この二人を送ってくるからお留守番をお願いするね。絶対に外に出ちゃだめだよ?」
「いや!リカも行く!」
「だめだ。9時以降、子供が外に出るのはルール違反。お留守番頼んだよ!行きましょう。」
そういってリカちゃんを置いて外にでた。
カガリさんは、周りを見渡しながら裏路地をどんどん進んでいく。
夜はあまり人が外に出歩いていないようだ。
少しくらいであれば話ながら歩いてもよさそうだ。
「どうして一晩超えると、この街から出られなくなるんですか?」
「このリアパークという街は、センドーシュの神力領域なんです。」
「神力領域?……ってことは、センドーシュって神様なの!?」
「はい。センドーシュは【富の神】です。リアパークは言わば、センドーシュの銀行口座のようなもので、一晩を過ごしてしまうとセンドーシュの意思でしか、出入りできなくなるんです。」
だから奴は、街人たちに俺達をこの街に泊まらせるように仕向けたのか。
でも、この街に留まらせて何かいいことでもあるのか?
「着きました。あそこ、なんですが……。」
カガリさんが指差した先には外に通じる扉があった。
しかし、扉の前に二人の騎士が見張りをしていた。
「いつもは見張りなんてしていないのに……。」
「どうしましょう?」
「まだ0時まで3時間はあります。隙を見て行きましょう。」
俺達は、物陰に隠れながらタイミングを見計らった。
しかし、なかなか隙を見せない。
と、その時
「おい!あそこ見てみろよ!」
「うわぁ。やっちまってるな。」
急に騎士たちが騒ぎ出した。
チャンスかも知れない。騎士たちが扉の前を離れそうになっている時、ちらっと子供の姿が見えた。
「リカ!!」
「パパ!!」
リカは、カガリさんの姿を見つけると一目散に駆け寄ってきた。
寂しかっただろう。カガリさんの胸の中でわんわんと泣いている。
「ばか!お留守番してろって言っただろ!」
「ごめんなさい……。でも怖かったの……。」
もちらん、これだけの騒ぎを起こしてしまったんだ。
騎士たちがゆっくりと近づいてくる。
「なーんだ。カガリさんとこの、お子さんだったんですか。」
「申し訳ありません!すぐに家に帰します!!なのでこのことはどうか内密に!!」
カガリさんは、急に土下座をし始めた。
そんなに謝ること!?
さっきカガリさんがルール違反とは言っていたが、この街はそういう条例でもあるのか?
「だめですよー。夜9時以降の子供の外出は禁止されてますからね。お忘れですか~?カガリ元小尉!」
「本当に申し訳ありません!以後このようなことがないように、しっかりと躾ますので!」
「なんの騒ぎだ?」
その声と同時に、夜の空気が一変した。
鼻には嗅いだことのない、少し焦げたような臭いが鼻孔をくすぐった。
これは【嫌悪臭】!?
目線を上げると、そこには胴着を身にまとった男が立っていた。
「ナタ大尉!!」
騎士たちは、瞬時にひざまづき顔を伏せる。
「なんだ。カガリか。久しいな。」
「ナタ大尉!申し訳ございません!すぐにこの子は家に帰します!だからどうかセンドーシュ様には!」
「カガリ。ルールは守らなければいけない。ルールは絶対なんだ。その子を連れていけ。」
「パパーー!!!!!」
そういうと、騎士たちがリカを捕まえ、城の方へと連れ去っていった。
「カガリ。今日はもう帰れ。この扉の前には、新しい騎士たちを派遣する。出ることはできない。」
その威圧に負けて、俺達は絶望するカガリさんを連れて武器屋へと帰ることにした。




