金の成る街
俺達は師匠の紹介で、リアパークという街に来ていた。
師匠の話では、小汚い街と聞いていたが目の前に立ってみるとそこは、王都並に栄えている大都市となっていた。
「すごく立派な街ですね。ディードさんのお話とかけ離れているような気がしますが。」
「ほら、門番みたいな人もいるよ。聞いてみよっか。」
街の入り口に、長い棒を持った門番が二人立っていた。
「すみません。ここってリアパークですか?」
「はい。いかにもここはリアパークであります。旅のお方でしょうか?であればここにサインを。」
スムーズな応対で教育も行き届いている。
ここがリアパークで間違いない様だ。
俺達は、通行書にサインをして街の中へ入ることにした。
「センドーシュ様のご加護があらんことを。」
去り際に、訳の分からない挨拶をされた。
センドーシュ様?誰のことだ?
街に入ると、センドーシュの正体がすぐにわかった。
街のど真ん中にでかでかとそびえ立つ金の銅像があり、その下に「民を救うセンドーシュ」と書いてあった。
恰幅の良い紳士のおじさんのような見た目をしており、いかにも成金な感じ。
まぁ悪い人ではなさそうだ。
センドーシュ像を見上げながら歩いていると、足元でチャリンと音がした。
下を見てみると、銅貨を蹴り飛ばしてしまったようだ。
「おっともったいない。」
「卜部さん。だめですよ。」
銅貨を拾おうとした俺に釘を刺すリーリィ。
お金持ってないんだからちょっとくらいいいじゃん。
「はい。どいてどいてー!」
「うわぁ!」
掃除機のような物を持った男たちが、拾おうとしていた銅貨を吸い取ってしまった。
「あぁ!俺の銅貨!」
「卜部さんのじゃないです。」
「おぉ、君のだったのか。すまんすまん。ほいこれ。お詫びだ。」
そういうと男は、金貨を3枚渡してきた。
「いやいやいや!こんなの受け取れませんよ!ていうか俺の銅貨じゃないし。」
「なんだよ。紛らわしいな。仕事の邪魔しないでくれよ。」
男は、金貨を取返しもせずにその場を去ってしまった。
「これ、どうしよっか?」
「はぁー。貰っちゃったものは仕方ないですよ。次はダメですからね?」
「はーい。」
卜部は、なんだか知らないが金貨を3枚手に入れた!
ってこの街の人の金銭感覚やばくないか?
わかりやすくいうと、金貨1枚は日本円で約10万円くらいの価値がある。
普通30万円をぽんと渡してくる!?
「あ、あれ武器屋さんじゃないですか?」
家の前に剣と盾が交差している看板が貼り出されていた。
師匠がいうには、カガリという人がやっている店らしい。
「行ってみよっか。すいませーん。」
「いらっしゃいませー。」
お店に入ってみると、そこには様々な武器が揃えられており、全然小汚くない。
しかも、お店の人は小学生くらいの女の子だ。
「あれ、ここってカガリさんの武器屋ですか?」
「そうですよー。」
ん?
どういうことだ?ディードさんの知り合いが女児?
女児の知り合いがいる肉ダルマなんて聞いたことないぞ?
「こら、リカ。お客さんをからかわないの。」
失礼な思考をぐるぐる回していると店の中から大人の男性が出てきてくれた。
話を聞くと、この人がカガリさんでさっきの女児は娘さんのリカちゃん。
よく店番をしているそうだが、よく自分がカガリだと言ってお客さんをからかっているらしい。
「おぉ、ディードさんのお弟子さんのか!それはサービスしないとね。」
優しそうなパパさんで非常に助かる。
まぁ今の俺は、金貨を3枚も持っている大富豪だから大抵の武器は買えるがね。
「これなんてどう?マスターソード。切れ味抜群でそこらの魔獣なら1発だよ。」
「へぇー。よさそうですね。」
触ってみてすぐにわかる。
んー【嫌われている】。
「最高級の槍だ。ここまでいいものは、あまり出回ってないよ。」
【嫌われている】
「双剣なんてのもあるよ。」
【嫌われている】
「銃も置いてるけど……。」
【嫌われている】
「斧……。」
【嫌われている】!!!
だめだ……、武器屋に置いてあるもの全部に嫌われている。
どうすんだよ。素手で戦えって言うのか!?
素手?
「ガントレットはあるけど、これは防具だよ?」
「もうなんでもいいんで、試させてください……。」
ガントレットを装着し、俺は感動した。
嫌われていない!!
嫌われていないことがこんなに嬉しいだなんて。
「これください!」
「え、別にいいけど、どうやって戦うの?」
「それはもう!拳です!」
「ははは……、さすがディードさんの弟子さんだね。」
こうして俺は、はじめての武器。
ガントレットを手に入れた。
途中すごく不憫に思ったのか、お代はただにしてくれた。