表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/125

エピローグ


「俺が座るんだよ!」

「お前は神じゃねぇだろ!」

「決まらんのやったら、ウチが座るでー。」

「あのー……、喧嘩は辞めてくださーい!!」



 ノーネームとの戦いから1週間。



 【工学の神】リークの指導のもと、

 神殿の復旧作業は予定よりも数倍速く終わりを迎えた。


 それもこれも皆が力を合わせて、協力することができたからだ。

 俺達はあの戦いを経て1つになれた気がする。



 今は儀式の間で、神様同士の醜い椅子の取り合いが行われている。



 もちろんただ座るためだけの椅子ではない。

 リーリィを正式な神様として認める証人として座る椅子だ。


 見習いの神が正式な神様として認めてもらう為には、

 正式な神様4人からの承認が必要となる。



 すでにアセナさんとアイナさんが椅子に座っている。

 この二人はノーネームの戦いよりも前からにリーリィを認めてくれていた。



 残る椅子はあと二つ。



 ケーゴやクロエに混じってバーンも椅子に座ろうとしている。


 バーンは神様ではないので座っても意味ないが、

 リーリィが多くの人に認められているという事実が知れてなんだか嬉しい。



「うるさいから私が座る。」



 三人がいがみ合っているのを見計らって、

 【使役の神】ネルが椅子にちょこんと座った。


 ネルは【強欲の悪魔】との戦いで負傷していたが、

 なんとか治療が終わり復帰することができた。



 復帰後のネルはより一層マイペースな不思議ちゃんになった気がする。



「おい!なに勝手に座ってんだよ!?」

「もうお尻がくっついた。」

「なわけあるか!!」



 ケーゴが珍しく大きな声でツッコミを入れている。



 ケーゴも戦いの中で大きく変わった。

 自分の弱さを見つめなおし、素直にディードさんに修行を申し込んでいた。


 そこにはバーンやギョギョも一緒に参加してたっけ。

 相変わらず仲がいいのか悪いのかわからない二人だ。



 いつまでもワチャワチャしている神たちを見かねて、

 アセナさんがリップくんに座るように指示する。



 リップは自分でいいのかおどおどしながらリーリィの顔を伺う。


「ぼ、ぼくでいいの?」

「はい!もちろんです!」



 こうして、4人の神様が揃った。



「お前ら、もう4人そろった。はけろ。」

「いつのまに!?」

「リーリィ。真ん中に来い。」

「はい!」



 リーリィは4人が座っている椅子の真ん中に立つ。



 すると4つの椅子が光り出し、地面に魔法陣が現れる。

 リークは気を利かせて儀式の間の中の光を消す。



 一瞬の暗闇の後、魔法陣の蒼白い光が部屋を照らし出す。



「すごい……。」


 俺は思わず声を漏らしてしまった。



 イルミネーションのような光を見ての感想ではない。

 魔法陣の光によって照らし出されているリーリィがあまりにも綺麗だったからだ。



 どんどん光が強くなっていく。



 リーリィの身体を覆うように光が集中しだし、一気に光量があがる。


 そしてその光が解き放たれて、部屋中に光が散乱する。

 部屋の中に光の中で駆け回り、かすかにリーリィの姿が見える。



 リーリィはこちらを向いて、嬉しそうに少し泣いていた。



「はい。儀式終了。」



 リークはそういうと部屋に光を戻す。

 いきなり明るくなり、目を反射的に閉じてしまう。


 すると、こちらに誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえる。



「卜部さん。」



 声でリーリィだとわかる。

 俺はゆっくりと目を開けた。



 そこには、神様の格好をしたリーリィが立っていた。

 純白の生地に、袖が長くたなびいている。



「どうでしょうか……?似合ってますか?」

「うん、似合ってるよ。すごく。」



 少しの間、見つめあう二人。

 そこに、コーリンが刀を握る。



カチャンッ



 その音に驚き、リーリィをかばって構える。


「【十種刀:寿】。」



パァンッ!!



 コーリンが振るった剣からは、攻撃ではなく花弁が舞い散る。



「な、なんだこれ?」

「ははは、驚かせてすまない。これは門出を祝う技だ。」



 紛らわしいことをしてくれる。


 俺達が驚いて固まっていると、

 他のみんなが一斉に何かを持ち出していることに気が付いた。



「なんですかそれは?」

「ふっふっふ。儀式の後は、これって決まってるんだよ。」



 アイナさんは怪しい笑みを浮かべながら、バーンに近づいていく。



「バーン君。火を頼める?」

「ん?いいけどよ。」



 そういうとバーンは指から火を出した。

 するとみんなが一斉にバーンに群がる。



「わわわわ!?なんだなんだ!?」



 なんだか凄く嫌な予感がする。

 おそらく俺が想像している奴がくるのであればまずい。




 だって、俺。

 その【神様にも嫌われている】から!!!



「リーリィ!卜部!!おめでとう!!!」



バシューーッ!



 みんなは一斉にねずみ花火をこっちに投げる。


 やっぱりな!!



「きゃっ!!!」



 リーリィは火花を散らして俺達の周りを激しく回転する花火に驚き俺にしがみつく。



「ごめん。リーリィ。」

「え?なんで謝るんですか?」

「多分、爆発するから。」

「え?」



ドガーーーーンッ!!!!!



 俺は元いた世界でも【花火の神様に嫌われていた】。


 夏の風物詩である花火。

 夜空を彩るとても綺麗な存在だが、俺にとっては命に関わる危険な存在だ。


 子供の頃から花火をすると絶対に火傷してきたし、花火大会に行くと必ず大爆発が起きた。



 そんな奴に向けて、花火なんて投げたら爆発するに決まっている。



 せっかくみんなで力を合わせて直した神殿も、また修理しなければ。




 今思えば、この世界に来てたくさんのことがあった。



 リーリィに見つけてもらって、クロムに命を助けられた。

 コーリンと出会い、ディードさんを紹介してもらい修行をつけてもらった。


 ディードさんの紹介でカガリさんの武器家を目指し、

 カガリさんに街を紹介してもらいクロエやアイナさんに会った。


 アイナさんに連れられて、神殿に行きみんなに出会うことができた。



 今思えば、人からバトンを繋いでもらってここまでたどり着けたんだ。



 元の世界での俺には想像できない。

 何をやっても【嫌われる】。そんな俺はもうどこにもいない。


 そんなことを爆発する神殿を見ながら考えていた。



 みんなは突然の爆発に驚いている。

 せっかく修理した神殿がまた壊れてしまったんだ。無理もない。


 この爆発の原因を知っているのは俺とリーリィだけだ。

 二人はこっそりと見つめあい、そして一緒に笑った。



「卜部さん。いろいろな【神様に嫌われていますね】。」

「あはは。そうみたいだね。」



 リーリィは少し前に歩き出し、澄み切った空を見上げる。



「でも【幸運の神様】は卜部さんのこと、【嫌ってない】みたいですよ。」

「え……?」



 雲一つない青空のもと、爽やかな風が吹く。

 リーリィの髪の毛がなびいている。



「卜部さん。幸せですか?」



 リーリィはこっちを振り返り、今までで1番の笑顔を見せる。

 俺はこの笑顔を守ることができたんだ。



 そして、これからもずっと守っていくんだ。



「うん、幸せだよ。」



【完】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ