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最終決戦⑬


「させるかよぉおおおおおお!!!!」



 【疫病神】が放出させる黒い闇を金色の神力で浄化していく。

 しかしとめどなく出てくる闇に、神力の放出が間に合わない。


 徐々に闇は世界を浸食していく。



「く、くそ……!」



 俺の後ろにはみんながいる。

 絶対に後ろには行かせない!!



「負けるかよぉおお!!!」



 気合を入れ直し、身体に力を込めて神力をオーラのように放出する。



「神力をえらく貯めこんでいたようだが、いつまでもつかな!?」



 【疫病神】はさらに闇の流出量を多くする。


 【回路の神に嫌われていた】ことから、回路の開通が遅れて

 心臓に神力を蓄積させていたとはいえ神力の量には限りがある。



 このまま放出しつづけていれば、いずれ底が尽きてしまう。



 そうなってしまえば闇にみんなを、世界を壊されてしまう。

 それだけは絶対に避けなければならない。



 でもこの状態で奴を倒すには、

 この放出している神力を拳に集中させて1撃で仕留めなければならない。


 もしもその1撃でダメージを与えられても倒せなければ、

 闇がみんなのところに到達してしまう。



 そうなれば、みんな死んでしまう。



 闇を抑え込むことで精一杯になっている俺に、そんなことができるだろうか?

 考えれば考えるほど、この状況に絶望してしまう。



 しかし、力を緩めるわけにはいかない。


 俺にはみんなの命がかかっているんだから。



「卜部。頑張ったって無駄だ。てめぇらはもうゆっくり死んでいっている。」

「死んでいっているだと……?」

「あぁ、この状況を打破する策もなく、ただただ耐えている。

 限りある力を使ってな。それを死んでいっていると言わずになんという?」



 ノーネームの言う通りかもしれない。

 この状況をひっくり返せるほどの力を俺は持ち合わせていない。


 ただこの状況を保つことで精一杯だ。



 俺の視線はいつの間にか、地面へ向いていた。

 もうだめなのか……?



「卜部さん!」


 リーリィが後ろから大きな声で叫ぶ。


「!?」



 振り返ると、真っすぐと未来を見据えているリーリィの目が見えた。



「私に少しだけ時間をください。」

「え……?」

「クロムを取り返しましょう。二人で。」



 リーリィはノーネームを倒すではなく、あえてその言葉を選んだ。



 クロムを取り返す。



 それがなんだかとてもリーリィらしくて、少し笑ってしまった。


「わかった。一緒に取り返そう。」



 俺は前に向きなおし、【疫病神】の目を強く見つめた。

 俺の後ろでリーリィが神力を貯め始める。



「なんだ。もう少しで折れるところだったのに。つまらねぇ。

 なら、物理的に折ってやるまでだ!!」



 【疫病神】は闇の放出を止めずに、俺を潰そうと手を振るう。


 手にも闇が纏わりついているのが見て取れる。

 おそらく、あれに触れられたらそれだけで終わる。



ドガーーンッ!!!



 俺は間一髪のところで高く飛び上がりその手を避ける。


 手を避けるのに必死で、

 飛び上がった先が【疫病神】の顔の真ん前であることに気が付いた。



「なんだ?キスでもするつもりかよ?」



 その時、【疫病神】の額からかすかな光が漏れた。

 ここはノーネームが【疫病神】と合体した箇所だ。


 もしかしたら、まだ完全に一体化していないのか?

 ここを狙えば、いけるかもしれない!



 俺は着地し、リーリィの方を向く。

 リーリィは無言で強くうなづいた。



「待ってるのも飽きたぜ。最後に遺言でも聞かせてもらおうか?」



 ノーネームは自分の勝利を疑うことなくそう告げる。



「それは……。こっちのセリフだ。」



 俺は、拳を強く握り戦闘態勢をとる。



「ハハッ!一世一代の賭けに出るってか!?

 おもしれぇ。なら全力で叩き潰してやるよ!!」



 ノーネームは放出する闇を集中させ拳の形を作り出す。


 ありがたい。

 これなら拳に神力を全力で込められるぜ!


 俺が狙うのはただ一点。

 【疫病神】の額の光の差す場所。


 それを阻むものはすべて浄化させてやる。



「いくぞリーリィ!!」

「はい!!!!」



 俺は、全力で【疫病神】に向かて飛び出す。

 俺の拳に宿る金色の神力の輝きが最大化する。



「きやがれ!!卜部!!!」

「うぉおおおおお!!!!!」




 その瞬間、世界が白い世界に包まれる。


 なんだ?ここは?



「よぉ、卜部。」



 気が付くと、目の前にクロムの姿があった。

 何故だか分からないが目の前のクロムは、偽物じゃないと直感で理解できた。



「約束守ってくれたんだな。」



 何言ってんだよ。

 まだ約束は果たしちゃいない。



 これからもずっと、俺はリーリィを守り続けるんだ。



 そう伝えようとするが、不思議と声が出ない。

 でも、それでいいのかもしれない。



 言葉にしなくたってこの気持ちはきっと、クロムには伝わっているから。



「最後は、あれで決めろ。受け止めてやる。」



 クロムはそう言うと、後ろを向き歩き出す。



「リーリィ様を頼んだぜ。卜部。」

「あぁ、任せとけ。」




パァンッ!!




 俺の声と共に白の世界は崩壊した。

 目の前には闇の拳。



「天地に分かる因子の項よ。

 錯綜の世に明鏡止水の如き導きを我等に与えよ。

【神力奥義:極限事象(ラプラス)】!!!!」


 リーリィが術を唱えると、金色の神力の輝きが増していく。



「うぉおおおおおおお!!!!」

「な、なんだ!?その輝きは!?」



 俺の拳が闇の拳を浄化し、ノーネームの額に近づいていく。

 金色の光に触れるたび、闇は消えていく。



「ク、クソォ!!来るなぁ!!!」



バシュッ!!!



 そして、拳をすべて浄化しノーネームの目の前にとびぬける。



「これで終わりだ!!【神術解放:御礼参(ゲット・バック)】!!!」



 みんなの想いを込めた拳でノーネームに一撃を食らわせる。

 今まで放ってきた攻撃で1番強く、そして1番美しい。



 金色の輝きは消える最後までこの素晴らしい世界を照らし続けた。



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