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最終決戦⑨


「ありがとう、リーリィ。強いんだね。」

「卜部さん……!!」



 卜部さんが巨大な針を握りつぶしてくれていた。



 よく見るとノーネームにやられた卜部さんの両腕が元通りに戻っている。

 それになんだか神力が両腕から溢れているように感じる。



「すごいね、腕戻ったんだ~。」

「【神術解放:(ゴウ)】。」


 俺は一瞬にして、ノーネームへ一撃を食らわせる。

 あまりの速さにまだ奴は殴られたことに気付いていない。


 そして、音は遅れてやってきた。




ドゴンッ!!




「ガ……?グァアアアアア!!!?」


 俺は拳からノーネームの体内に神力を全力で流し込んだ。

 神力は奴の魔力回路を介して、全身に駆け巡る。



「な、なにをした……?」


 ノーネームはあまりの衝撃に膝をつく。



「お前の体中に神力を流し込んだ。それだけだ。」

「それだけ……だと……?」

「あぁ、それ以上でもそれ以下でもない!」



 俺はノーネームに向かって攻撃を繰り返す。

 俺の拳が奴に触れるたびに、神力を全力で流し込む。



「グァアアアアア!!!!」



 奴が悲鳴をあげようが、俺は攻撃の手を止めない。

 これで勝負を決めてやる!!



「トドメだぁああああ!!!」

「【贈り物(ギフト)驚天動地(アストロニッシュ・ボーデン)】!」



 ノーネームが術を唱えると、俺の下の地面が突如柱のように上へせりあがる。



「な、なんだ!?」



 俺は振るい落されないように体勢を低くする。


「やってくれたね……。【贈り物(ギフト)大地合掌(マザーズ・ペアー)】!!」



ゴゴゴゴゴッ……



「嘘だろおい……。」


 俺を天空まで誘った柱を挟むように左右に土で出来た大きな両手が現れる。

 その手は巨大すぎて、左右の景色はすべて茶色と化している。



「これは【大地の神】から貰ったんだ。ちょっと痛いかもだけど我慢してね。」



 大きな両手がゆっくりと離れていく。

 おそらく合掌の予備動作だろう。


「おわり。【合掌】」


 ノーネームは連動している自分の手を合掌させる。

 すると少し遅れて大きな両手は、俺を圧死させるように猛スピードで迫ってくる。



 このままじゃまずい……!



 全部を破壊することはできない。

 でも一点突破ならできるかもしれない。



「リーリィ!!頼む!!」

「はい!!【神力展開:宙を舞う金貨(ヘッド・オア・テイル)】!」


 この両腕も魔力によって作られたものであれば、俺の神力で突破してやる!



「ウォオオオオ!!!!【神術解放:(ゴウ)・極】!!」



 俺は両手が重なり合う前に、左の手に向かってジャンプする。

 そして、全力で拳をぶつける。



「砕けろぉおおおおお!!!!!」



 俺の拳が金色に光り、土の手の一点に神力を集中させる。

 土の右手はどんどん近づいてくる。



「だぁああああああ!!!!」



ドゴーーーーンッ!!!



 土の左手にわずかな穴を開けることができた。

 俺はそこ目掛けて身体をちぢこめる。


 次の瞬間、両手は激しい衝撃とともに合掌され共に砕け散る。



「やったぞ!!」



 俺は砕け落ちる土にしがみつき、空中で体勢を立て直す。



「卜部さん!まだです!」



ズズズズッ……



 俺の真横に黒い空間が現れる。

 これは、【嫉妬の悪魔】と同じ技か!?



「【贈り物(ギフト):エレボスの扉】。」



 その闇の集合体から、ノーネームが姿を表す。


 落下による圧力でうまく身体を動かすことができない。

 こんな状態で攻撃されたらひとたまりもない。



「【贈り物(ギフト)応力賦課(ジヴァ)】。」



 ノーネームが術を唱えて腕を伸ばし手を握ると、

 俺が掴んでいた土の塊は一瞬にして破壊されてしまった。



「うぉ!?」



 掴むものがなくなった俺は、落下の圧力をもろに向けてしまい体勢を崩す。

 ノーネームはそれを見逃さなかった。



「【魔術:縫合Ⅰ(ナート・ワン)】!」



 巨大な針を出現させて、俺の上に移動する。



「これでおしまいだね。楽しかったよ。」


 ノーネームは巨大な針を落下する俺に目がけて振り下ろす。

 俺はなんとか身体を空中で回転させて、それを受け止める。



「させるかよぉおお!!!」



 針を受け止め、串刺しは免れたがこのままでは地面に激突してしまう。


 俺は必死にもがくが、上でノーネームが笑いながら針を抑えている。

 少しでも力を抜けば、身体に針が突き刺さる。



 どうすることもできないのか!?



 地面に激突するまでもう時間がない。

 焦りから手汗が溢れてくる。



 徐々に針は腹に食い込んでくる。



「クッ……!クソッ……!」



 何か、手はないのか……!?



 周りを見渡していると、こちらをじっと見つめているリーリィの顔を見えた。



 リーリィは慌てることなくこちらを強く見つめている。

 何か考えがあるのか?


 信じるぞ。リーリィ!



「卜部さん、今度は私が助ける番です。」



 リーリィの周りを円を描くように風が吹く。



「水面に映る届かぬ月よ。翻倒せよ。

 【神力展開:逆転事象(アリスインモンティホール)】!!」



パァン!!



 リーリィが技を唱えると、世界は左右上下が逆転した。



 地面ギリギリで卜部とノーネームの位置が逆転する。



「な、なにぃ!?」

「ありがとう!!リーリィ!!」




ドガーーーンッ!!!




 ノーネームは激しく地面に打ち付けられた。


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