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修道院③

「根性入れろよ?いくぞ?」

「は、はひぃぃぃ!!」

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


ディードは、俺の鼻を思いっきり掴み、ドアの鍵を締めるように一気に手を捻った。


ボキッ


「いてぇぇぇぇぇ!!!!」

「一気に神力を注いで回路こじ開けるからな!」

「痛い痛い痛い!!!!」

「我慢だ!根性見せろ!!」


 ディードの手が水色にひかりだし、鼻の奥がなんだか温かくなってきた。

 その温度は光の強さに比例してどんどん上昇していく。


 まるでレーザーで鼻の奥を焼かれているような感覚だ。

 それすなわち、激痛である。


「いたぁぁぁぁぁぁい!!!」


 痛さのあまり暴れた俺は、なんとかディードの手から逃げ出すことができた。

 だめだ。このままでは殺される。

 それにさっきボキッっていったし!鼻折れてるよ絶対!!


「おい、こら!」

「リーリィー!!助けてくれぇ!!!」


 気がつけば俺は教室を抜け出し、リーリィのところまで逃げてきたようだ。


「卜部さん!?」

「ディードさんやばい奴だよ!ほら見て!鼻折られた!!」

「え?別に何も変わってませんよ?」

「え?まじ?」


 ハンナさんが、手鏡で俺の顔を写してくれた。

 本当だ。鼻は折れていないし血も出ていない。

 でもたしかにボキッっていったような?


「ディードさん、あまり無茶なことはしないでくださいね。」

「わかってるよ、ハンナ。しかしこうでもしないと回路はこじ開けられんしな。」

「でもなんとか入り口は開けられたみたいですね。」

「あぁなんとかな。」


 ディードたちはわちゃわちゃしている俺達を見て、行く末を心配していた。




「ふぃーーー。」


 俺は、ディードさんが教えてくれた温泉で入浴をしていた。

 1日目は俺が怯えるものだから、神様から神力を受け取るための入り口を開くことだけで終わってしまった。

 実際にあんな恐怖体験を経験したんだからしょうがないよね?


 でも、この先本当にやっていけるんだろうか?


 今日のが3年分の痛みだ


としたら、あと7年分の痛みが待っている。


「よぉー。生きてるか?」


 突然ディードが真っ裸で目の前に現れた。

 まぁ温泉だから当たり前か。

 服を脱いでいるとわかるが本当に筋肉がすごい。


「お前、相当神さんに嫌われてるな。コーリンの魔導具使っててあれだったのか。」

「そうみたいです……。」


 ディードが湯船に浸かると、大半のお湯が外へと流れていった。


「回路の入り口を開いたから、自分でも嫌悪臭わかるだろ?」

「いえ、まったく……。」

「あぁそうか。自分のはわからんのだったか。」


 頭にタオルの乗せておっさんスタイルが完成する。


「まぁ、色々あるわな。」


 ディードは、背もたれの岩に両腕を乗せてリラックスしている。


「今日はすいませんでした。なんか騒いじゃって……。」

「あぁ、そのことなんだがな。」


 ディードは、空を見上げ優しい目で語りかける。


「諦めるってのはどうだ?」

「え?」


 二人の間で、数秒の沈黙が訪れる。

 水の流れる音だけが、沈黙を支えている。


「それってどういう意味ですか?」

「実はな、コーリンもお前と同じ【嫌われ者(ヘイター)】で、9歳の時に親に捨てられてここに来たんだ。」


 コーリンもそうだったのか。

 どうりで嫌悪臭を防ぐ魔導具を持ち歩いているわけだ。

 親に捨てられたというのは、【嫌われ者(ヘイター)】だったからだろうか。


「そんで、あいつもお前と同じ修行を9つの時にやっている。」

「9歳のときに!?」

「あぁ、だがあいつは適性があったのか、表情1つ変えやがらなかった。」

「ほ、ほんとうですか……。」


 あんな激痛を9歳の時に耐えたというのか?

 それとも適性によって感じる痛みの度合いが違うのか?

 そうだったら俺ってもしかして……。


「お前の頑張りは認める。見たところ相当痛かったんだろ?」

「ま、まぁ……。」


 ここで嘘をついてもしょうがない。

 それでも、俺にはクロムと約束したやらなければならないことがある。


「明日から最終日まではもっと地獄になる。下手したら死ぬかもしれん。それでもやるか?」


 これはディードさんなりの優しさなんだろう。

 俺を見定めているのではなく、俺を尊重してくれている。

 そんな優しい雰囲気がかもしだされている。


 しかし、突きつけられている現実は優しくはない。


 でも、俺にはやると決めたことがあるから!


「やらせてください。俺がリーリィを守るって決めたんです。」

「ふっ……。そうかよ。」


 ディードはニヤッと笑い、勢いよく湯船から立ち上がった。


「朝8時に教室集合だ。明日からは地獄だぞ?覚悟してろよ。」


 そう言い残してディードさんは帰って行った。


 明日から気合を入れていかないとな。


 俺も湯船から立ち上がると、肩を後から誰かにポンと叩かれた気がした。

 しかし、振り返っても誰もいない。


「なんだよ。心配すんなよ。」


 俺は、その誰かさんにそう言って修道院へと戻っていった。


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