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最終決戦⑧


「卜部さん、見ててください。

 私だって戦えるところを見せてあげますよ!」


リーリィは俺を守るように一歩前に出る。



リーリィは魔術師の弱点は神力だと言っていた。


魔術師の体内には、神職者と同様に魔力の回路が張り巡らされている。

魔力は悪魔由来の力で、神力は文字通り神様から貰うことができる。


魔術師の回路は魔力によって汚染されている。

そこに神力を流すことで魔術師の身体にダメージを与えることができる。



俺の攻撃は神力によって肉体を強化し、それをぶつけているに過ぎない。



修行のときやディードさんから神力を貰った時のように、

奴の体内に神力を注ぐことができればダメージを与えられるかもしれない。


しかし、俺の両腕はノーネームの術によって使い物にならなくなってしまった。

まずこれをなんとかしなければ。



「女の子は最後に取っておきたかったけど、まぁいいや。」


ノーネームは服から大量のメスを取り出した。

そしてそれを空中に浮かべだした。



「これ全部防ぎきれるかな?」



ノーネームが両腕を振ると、リーリィに向かって大量のメスが放たれる。



「【神力障壁】!!」



リーリィはメスを防ぐために腕を前に出して、障壁を作る。



「読めてたよぉ~。」

「!?」



大量のメスが障壁に激突すると同時に、

ノーネームはリーリィの後ろに瞬間移動して糸をリーリィに飛ばす。



しかし、その糸は壁に当たってリーリィまで届かない。



「私も読めてました。」

「へぇ~、やるじゃない。」



リーリィは、あらかじめ自分の前と後ろに障壁を出現させており

ノーネームとの間に隔たっている。


リーリィは素早く振り返り、短剣を出現させ障壁ごとノーネームに突き刺す。



バリィンッ!!

グサッ!!



「グアァ……!!!」

「神聖なる力にひれ伏しなさい!!」



リーリィは短剣から最大出力で自分の神力をノーネームに流し込む。



「グァアアアアアア!!!」



すごい……!

ノーネームへダメージを与えている。


リーリィは止めることなく、神力を流し込む。

しかし、倒しきることができない。



ガシッ!



ノーネームはリーリィの腕をゆっくりと掴む。



「おいたが過ぎるよぉ……。お嬢ちゃん!!!」

「うわぁ!?」



ノーネームはリーリィを空中へ放り投げる。



「作戦変更。すっごく痛くしてあげる。【魔術:縫合Ⅰ(ナート・ワン)】。」



宙に向いているリーリィに向かってノーネームは巨大な針を構える。



「【神力展開:宙を舞う金貨(ヘッド・オア・テイル)】!!」



空中で攻撃を避けることのできないリーリィは、

攻撃が外れる確率を上げて防御態勢を取る。


外れる確率を上げたって、この距離でノーネームが外すとは思わない。

このままじゃリーリィがやられる……!



「うぉおおおお!!!!」



俺は気が付くと無我夢中で、

空に攻撃を放とうとしているノーネームに向かってタックルをしていた。



「君はおとなしくしててよ。」



ザシュッ!



「グハッ!!」


ノーネームは俺に斬撃を浴びせる。



だめだ……。

このままじゃリーリィが殺されてしまう。



「串刺しの刑だよぉ~。」



両腕さえ動かすことができれば……。

動け……!



今動かないでどうするんだ……!!

リーリィを見殺しにする気か!?



「卜部さん!!!」



リーリィは空中で俺に声をかける。

その顔は悲しそうに笑っていた。


俺ならこいつを倒せると疑うことなく、未来を託す笑顔。

しかし、その未来に自分はいない。


そんな表情を浮かべている。



俺は、リーリィになんて顔をさせてしまったんだ。



俺は弱い。 



もっと強くなりたい。



みんなを守れる力が欲しい。

みんなの笑顔を守れる。

そんな強い力が……!!



動け!!

動きやがれぇええええ!!!!




ドクンッ!




「!?」


俺の強い想いに反応して、心臓が強く脈打つ。

それに合わせて、体中の血の流れを強く感じる。


指先まで血と共に神力が行き届いていくのがわかる。



なんだ……?

この感覚は……?


神力の流れをここまで鮮明に感じることは今まで1度もなかった。



壊死した腕に感覚が戻ってくる。

俺は拳を強く握りしめる。



これなら……いけそうだ……!!



「それじゃあ、さよなら。」



ノーネームはリーリィに向かって巨大な針を投げつける。



「卜部さん……!!」



リーリィは強く瞼を閉じる。


世界が真っ黒に染まる。

まるで、この世界に私一人だけになってしまったよう。



そんな寂しい世界は、大きな音によって壊された。




バリィンッ!!!!



「!?」


リーリィは目を開ける。

最初に光が飛び込んできた。



次に自分に向かって飛んで来ていたであろう巨大な針の破片が目に映る。

あれほど巨大な針が粉々になっている。



そして、その先には針を握りつぶした大きな背中が見える。



「ありがとう、リーリィ。強いんだね。」

「卜部さん……!!」



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