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最終決戦⑦


「頼んだぞ……。卜部。」


 アセナさんはそう言い残して、糸に捕縛されてしまった。

 俺を助けるために、自分を犠牲にしてくれたんだ。



「アセナさぁああああん!!!」



 俺は着地し、一番近いコーリンのところへ走る。


 アセナさんが救ってくれた命だ。

 一人でも多くの仲間を助けるんだ。



「コーリン!!!」


 コーリンの周りには空からスポットライトのように光が差し込んでいる。

 その中でコーリンは襲い来る糸に向かって、剣を振るっている。



「な、中に入れない!?」



 俺は光の中に入ろうとしたが、

 透明なガラスのようになっており中に入ることができない。



「何をしにきた。卜部。」



 コーリンはこちらを見ずに、糸と戦っている。

 おそらく、内側からも外に出ることができなくなっているようだ。


 時折コーリンの剣先が光の外に出ていることから、武器や攻撃は通すようだ。



「卜部、お前の信念を貫き通せ。」

「でも――!」

「私は大丈夫だ。糸と剣だ。相性は良い。」



 そういいながらコーリンは糸を何度も切り刻んでいる。

 しかし、そのたびに糸は地面から無限に湧いてきてコーリンに向かってくる。


 周りを見ても、皆同じように自分に向かってくる糸と戦っている。


 ここまでの精密操作を人間一人で行えるはずがない。

 おそらく、この糸は自動操縦で光の中の人物に向かうようにできているんだ。



「卜部、お前がみんなを守るんだ。」

「あぁ、分かったよ。」


 俺は、コーリンに背を向けてノーネームの方へと歩き出す。



スンッ



 光が徐々に収縮していく。

 行き場を失いつつあるコーリンは、それでもなお糸に抵抗している。



「クソッ!!剣に絡みついてくる!」

「コーリン!!」

「振り返るな!……信じているぞ。」



 そう言い残して、コーリンに糸が襲い掛かる。

 俺はそれを見ずに、ノーネームへと走り出す。


 みんなの声がどんどん聞こえなくなってくる。


 おそらくみんな糸に捕縛されてしまったんだろう。


 徐々にノーネームの姿が近づいてくる。

 それと同時に熱い思いがこみあげるてくる。



「ノーネーム!!!お前を絶対に倒す!【神威超越】!!!」



ドガーーーンッ!!



 肉体強化の三重掛け。

 肉体が極限まで強化されているが、同時に身体が悲鳴を上げている。



「邪魔者はいなくなったね。それじゃあメインディッシュだ。」

「うおぉおおお!!!【神術解放:(ゴウ)】!!」

「【魔術:触穢(ヘルヘイム)】。」


 ノーネームは俺の拳を受け止めるというよりも左手で触れてくる。

 俺は全力で拳を振りぬき、触れた左手ごと吹き飛ばす。


 

バァンッ!!



 ノーネームの左手は破裂する。


「あぁー。酷いことするな~。」



 左手を失ったにしては、ダメージを感じられない。

 それどころか、少し楽しそうにも見える。



「【魔術:縫合Ⅱ(ナート・ツー)】。」



 ノーネームが術を唱えると、糸が幾重にも折り重なり新しい腕となる。


 こいつは他人の部位を奪うこともできるが、

 糸によって生成することもできるのか?



「まだ終わっちゃいないぞ!!」



 俺はすかさずもう一撃与えるために、力を込める。

 しかし、異変に気付く。


 右手に力が入らない。



「な、なんだ……?」



 ノーネームに触られた右手に力が入らない。

 それどころか、自分の腕じゃないように一切持ちあがらず、ぶらりとしている。



「あー、壊死しちゃってるね。右手。」

「そ、そんな……。」


 ノーネームはこれが狙いで、攻撃を防御せずに触ってきたのか。



「かわいそうに。あ、そろそろ時間だね。」

「時間だと……?」

「耳を済ませてごらん。」



 ノーネームはワザとらしく耳に手を当てる。


 すると、ギギギと何かが締まるような音が聞こえてくる。

 それと同時にみんなの苦しそうな声がこだまする。



「グッ……。この糸締まってきやがる……!」

「き、きつい……。」

「クソッ……。」



 みんなを捕縛している糸が徐々に閉まってきているようだ。



「言うの忘れてたけど、

 あの糸は時間が経つごとにどんどん締まっていくからね。

 早く助けないと、死んじゃうかもね~。」

「ふざけんじゃねぇ!!!」


 俺はまだ動く左手に力を込める。

 あいつを殴るのに、腕が一本あれば十分だ!!



「【神術解放:(ゴウ)・極】!!」

「学習しない子だね。【魔術:陵谷変遷(プロテウス)】。」



 ノーネームはまたしても俺の攻撃を防がずに左腕に触れることを優先した。

 その結果、左半身を吹き飛ばすことに成功した。


 しかし、ノーネームはまたしても糸を織りなして再生する。


 このままじゃ埒があかない。



「う、卜部さん……。」



 リーリィが俺を見つめて、心配そうな声を出す。



「左腕が……。」

「な、なんだこれは……。」



 ノーネームに触れられた左腕が、怪物の腕のように変形していた。



「ありゃりゃ、これで両腕使えないね。」


 ノーネームは一瞬にして距離を詰めてくる。



「はい、終わり。」



 ノーネームは手にメスを持ち、俺に向かて切りかかる。



「【神力展開:宙を舞う金貨(ヘッド・オア・テイル)】!!」

「リーリィ!?」



 リーリィが俺を助けるために、飛び出した。



ガキィンッ!!!



「へえ~、勇気あるね~。そういう子好きだよ。」



 リーリィは神力で作り出した短剣でノーネームのメスを受け止めた。

 しかし、やはり力の差は歴然で徐々に押され始める。


 ノーネームはそれを楽しむようにゆっくりと押していく。



「でも、勇気だけじゃだめだよぉ~。」

「グググッ……。」


 リーリィはどんどん押され、膝を地面についてしまう。

 それでも、リーリィは諦めない。



「頑張ったけど、ここまでだね。さ・よ・な・ら――。」



ザシュッ



「ん?」


 突如、短剣がノーネームの脳天に突き刺さる。



「魔術師の弱点って知っていますか?」

「んー。なんだろう?」

「神力ですよ。」



ピカーーーンッ!



「ガ、ガァア!?」


 脳天に突き刺さった短剣が光り出す。

 そして、ノーネームの脳内に直接神力を注ぎ込んでいく。



「アガッ……!な、なんだこれは……!?」


 ノーネームは溜まらず短剣を抜きとり、地面に放り投げる。



「あなたの攻撃を受ける前に、空に短剣を投げたんです。

 そして、【宙に舞う金貨】を唱えてあなたに刺さる確率を上げました。」

「小賢しいマネをしてくれるね。」



 リーリィは俺の守るように一歩前に進む。



「卜部さん、見ててください。

 私だって戦えるところを見せてあげますよ!」


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