最終決戦⑥
「させるかよ。【神術解放:豪雷】。」
「卜部さん!!」
「あれ?針が貫通したのによく生きてるね~?」
俺はなんとかノーネームの攻撃からリーリィを守ることができた。
ノーネームの言う通り、俺は巨大な針に身体を貫通され死ぬ寸前だった。
しかし、ローレンたちがノーネームの注意を集めてくれている間に、
ハンナさんが応急処置を施してくれたんだ。
「【神力展開:応急処置】。
卜部さん、これはあくまで応急処置です。無理はしないでください。」
「ありがとうございます。ハンナさん。でも、俺がやらないといけないんです!」
こうして、なんとかノーネームの捕縛糸から守ることができた。
すでに【持たざる者】と【豪雷】の肉体強化二重掛けをしている。
ハンナさんに応急処置を行ってもらったとはいえ、
肉体強化の二重掛けはやっぱり身体への負担が大きい。
「なるほど。あの子が応急処置をしたんだね。」
「な!?」
心が読まれた?
どういうことだ!?
「驚かないでよ。【贈り物:読心術】。【思考の神】にもらったの。」
「貰ったんじゃねぇ!奪ったんだろうが!」
心を読まれるのは非常にまずい。
でももし完璧に読めるのであれば、俺の復活やローレンたちの攻撃も阻止できたはずだ。
それができなかったということは、何か制約があるに違いない。
そこをうまくつくしかない。
「邪魔が多いみたいだから、先にそっちを片付けるよ。」
僕、ケーキの苺は最後に食べる派だからさ~。」
そういうとノーネームは空高くジャンプした。
「【魔術:集中結界】。」
空からスポットライトのような大きな光が、リークとユララに当てられる。
すると、地面から無数の糸が現れ二人を捕獲しようとする。
「二人とも、光から逃げろ!」
「そんなこと言ったって!こっちは丸腰だぞ!」
ドガーーンッ!!
大砲で襲い来る糸を吹き飛ばしてはいるが、数が違いすぎる。
「クソッ!防ぎきれない!」
「きゃああああ!」
二人は、抵抗空しく糸に覆われてしまい、捕縛されてしまう。
「残りは~?7人か。面倒くさいからまとめていくよ。
【魔術:集中結界】。」
大きな光のスポットライトがそれぞれに当てられる。
それと同時にまた地面から無数の糸が現れる。
ノーネームは空中で浮遊しそれを眺めている。
その表情は、何の感情もないただ虫を見るように冷たい。
俺は攻撃を止めるために、ノーネームの元に飛び出す。
ここまで多くの糸を操っているんだ。
きっと相当な神経をそちらに割いているに違いない。
「させるかよぉおお!!」
「ショートケーキの苺が口に飛び込んでくるかい?普通。」
「【神術解放:豪氷】!!!」
ガキーーーンッ!!
ノーネームは俺の【豪氷】を素手で受け止めた。
みるみるうちにノーネームの左腕が凍り出す。
「厄介だね。」
スパッ!!
「!?」
ノーネームは凍り出している自分の左腕をなんの躊躇もなく切り捨てた。
すると腕の切り口から大量の糸が放出され、空中の俺に絡みつく。
「な!?」
「練乳いっぱいかけて食べてあげるから、下でじっとしててね。」
ドゴンッ
ノーネームは糸に絡まり、身動きができない俺に対して蹴りを入れた。
その蹴りの勢いで俺は地面まで落ちていく。
「クソッ!このままだと地面に叩きつけられる……!」
糸のすき間から見える地面がドンドン近づいてくる。
やばい……!!
「【神力障壁】!!」
リーリィが空中に障壁を出現させてくれる。
しかし、1枚ではすぐに壊れてしまう。
「くそぉおお!!」
「諦めるな!【神力展開:神獅爪牙】。」
ザシュ!!
「!?」
爪の斬撃が飛んできて、俺の糸破ってくれる。
徐々に広がる視界の先には、こちらを向いて笑っているアセナさんの姿があった。
アセナさんはスポットライトの中で糸と戦っているにも関わらず、
俺を助けるために斬撃を飛ばしてくれたんだ。
でも、そのせいで糸からの攻撃を防ぐことができなかった。
「頼んだぞ……。卜部。」
そう言い残して、アセナさんは糸に捕縛されてしまった。
「アセナさぁああん!!」




