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決戦⑮

 コーリンは【傲慢の悪魔】に呼ばれて、儀式の間へと消えていった。



 ケーゴは、コーリンとの戦いの中で力の差を見せつけられ呆然としている。

 【武器の神】ケーゴは、神の中でもトップクラスの戦闘力を持っていた。


 しかし、【憤怒の悪魔】や神職者のコーリンにまで敵わなかった。


 修行を経てさらに強くなったと自負していたところに、2連敗の圧倒的な敗北感。


 ケーゴの誇大した無双感は粉々に崩れ落ちていた。

 その負の感情は、周りの者にも連鎖してしまっている。



「なにしてるんだよ……。」

「卜部さん!?」



 先程まで気を失っていた卜部が立ち上がる。



「卜部さん!まだ立ち上がってはいけません!」

「ハンナさん、有難うございます。俺はもう大丈夫です……。」

「いけません!」



 今にも飛び出してしまいそうな卜部をハンナは取り押さえる。



「まだ、治療は終わっていません!」

「聞こえたんですよ……、コーリンの声が……。」

「ハンナ、行かせてやれ。」



 ディードがハンナの腕を優しくほどいていく。



「ディードさん……。」

「卜部、俺も行くぞ。」

「私も一緒に行きます!」


 リーリィが俺の目を見て、手を上げてくれる。



「私も行くよ。」

「俺だって行く。」

「ギョギョ!」


 【嫌われ者(ヘイター)】のスイ、バーン、ギョギョも前に出る。



「ケー坊はどうするよ?」

「……。」



 ディードはケーゴに声を掛ける。

 しかし、反応がなくうつむいている。


 すると、ディードはケーゴのと目線を合わせて頭をガシッと掴む。



「ケーゴ。お前は負けでいいのか?」

「え……?」

「たしかにコーリンは強くなってる。でもお前はまだ負けてねぇだろ?

 攻撃の一つや二つ防げなかったからってそれがなんだ。」



 ディードは優しく、しかし力強くケーゴに言葉を投げかける。



「それにまだお前の真の実力を出してねぇだろ?」



 ディードはニカッと笑いかける。



「……、痛てぇよ頭。」

「おぉ、そりゃすまねぇ。」


 二人の中でこれ以上の言葉は必要なかった。



「よぉし!それじゃあ行くぞ!儀式の間に!」

「「「おぉおお!!!」」」


 こうして俺達は、【傲慢の悪魔】が待つ儀式の間へと向かった。





 儀式の間に着くと、目の前に広がっていたのは地獄のような光景だった。



「もう許してください!!これ以上は!!!」

「あぁああああああああああ!!!!!」

「だってリップくん、言うこと聞いてくれないからさ。」



 【傲慢の悪魔】オーエンの足元で必死に許しを請うコーリン。

 苦しそうに叫び続けるリップ。


 そして、何か青色の球体を強く握りしめ薄ら笑いを浮かべているオーエン。



 リップの口から聞いたことのない大きさの悲鳴が部屋中に響き渡っている。


 コーリンは泣きながらオーエンの足に縋りついている。

 あの気丈なコーリンが何故こんな風に……。


 オーエンが俺達に気が付き、謎の球体を握っていた力を緩めた。


 するとリップの悲鳴は止み、その場で倒れこんでしまう。



「リップ様!!」



 コーリンは泣きながら駆け寄りリップを強く抱きしめる。



「やぁ、来てくれたんだね。君たち。」

「お前……、リップに何をしたんだ!!!」


 俺は堪らず、怒り叫んでしまう。



「言うことを聞いてくれないからちょっとお仕置きをね。」

「お仕置きってレベルじゃなかったけどなぁ。」


 ディードが間に入ってくれる。

 もしこのままだったら間違いなく考えなしに飛び込んでしまっていた。



「仲間なんだから、言うことを聞くのは当たり前でしょ?ね?コーリン?」


 コーリンはリップを必死に抱きしめており、話が耳に入っていない。


「ねぇ?聞いてるの?」


 オーエンが再度、球体を強く握りしめる。

 すると、コーリンの腕の中でリップは再び苦しみだした。



「も、申し訳ありません!!!もう……許してください……。」



 リップを抱きしめる腕の力が一層強くなる。

 オーエンは力を緩める。


 だめだ……。もう我慢できない。



「てめぇ!いい加減にしろよぉ!!!」

「!?」

「よせ!バーン!」



 俺よりも一瞬早く、バーンが我慢の限界に達しオーエンに向かっていった。


「【嫌悪解放:バーニング・ソウル】!!」

「熱そうだね。」



バチィンッ!!!!



 オーエンは素手でバーンの右ストレートを払いのけた。

 その衝撃でバーンは身体ごと左に向いてしまう。



「もらい。【穢術:小さな掌、大きな世界(ワールド・エンド)】。」



 オーエンがバーンの横腹に手を差し伸べる。



「させるかよ!!【神術解放:(ゴウ)】!!」



 ディードはオーエンの背後に回り、殴りかかる。

 オーエンはバーンへの攻撃を中断し、振り向いてディードの攻撃を受け止める。


「そんな受け止め方で、よく骨が折れねぇな。」

「我ながらそう思うよ。」


 ディードは、バーンを抱えて俺達のもとへと戻ってくる。



「馬鹿野郎。急に飛びかかる奴がいるか!」

「すまん……。ついカッとなっちまった。」


 バーンが行っていなかったらおそらく俺が行っていた。

 バーンを責めることはできない。



「お遊戯は後々。それより復活の魔術を再開してくれるかな。リップくん?」


 リップはこれだけ謎の力で痛めつけられても、まだ首を横に振る。


「リップ様!!」

「そうかい。」

「あぁああああああああ!!!」



 オーエンはさっきよりも強く球体を握りしめ、力を緩める。


「この世界を、好きには、させない……。みんなは、僕が、守るんだ……。」

「そっか、まだ抵抗するんだ。ならこういうのはどうかな?」



 オーエンはナイフを取り出し、球体に先端をあてがう。



「がぁああああああああああああ!!!!」



 前とは比べものにならない悲痛の叫びが響き渡る。

 あの球体は、リップと繋がっているようだ。


 リップは胸を抑えながらその痛みに耐えている。



「ほらほら。やりますって言わなきゃ、ずっと痛いの続くよ?」

「がぁああああああああああああ!!」

「もうやめてぇえええええ!!!」

「やるんだリップ!!!!!」


 オーエンは球体からナイフをどける。



「やるんだリップ、復活の魔術を。」

「っぷ。とうとう敵からの情けも貰っちゃったよ。リップくん。」

「その魔術が終わるまでにお前を倒せばいい。それだけだろ?」



 リップは涙が溜まった、しかし一滴もこぼしていない

 そんな強い眼差しで俺の方を見た。


 俺は、強くうなづく。



「ふーん、そういうこと。まぁいいや。それじゃあリップくんやって。」


 オーエンは、退屈そうに椅子にドカッと座った。


「コーリン。こいつら殺して。手抜いたらこうだから。」


 オーエンは球体にナイフを突きつける。


「は、はい!!!」


 泣きながらコーリンは立ち上がり、剣を構える。

 しかし、その手は激しく震えている。



「大丈夫だ、コーリン。全力で来い。」

「ごめん……、本当に……ごめんなさい……。」

「全力でコーリンを倒して、オーエンを倒す!!」



 コーリンと卜部も戦いが始まる。


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