決戦⑭
【嫉妬の悪魔】に勝利したバーンとギョギョはアセナの前で集まっていた。
「大丈夫か?」
「あぁ……。なんとか神力で毒の回りを遅くはしている……。」
アセナは【嫉妬の悪魔】の攻撃で毒を受けてしまい、
そのダメージがまだ継続しているようだ。
すると、空からがれきが落ちてくる。
「うぉ!?」
「崩れてるギョギョね。」
【嫉妬の悪魔】によって作り出されたこの空間は、崩壊を始めている。
「ちゃんと戻れるんだろうな?」
「そんなことギョギョに聞くなギョギョ。」
「喧嘩をするな……。地面をみろ……。」
地面が徐々に黒くなっていく。
【嫉妬の悪魔】が使っていた空間転移の黒い空間に似ている。
「なるほど。よっしゃあの穴に飛び込むぞ。」
バーンはアセナを片手で器用に自分の肩に担いだ。
そして三人一斉に穴へ飛び込む。
「「うぉおおおおお!!!」
ドスーーーンッ!!
「いててて。」
「ギョギョ!!」
そこには、別々の空間へと飛ばされていたみんなが待っていた。
全員無事生きて【大罪の悪魔】を倒せたようだ。
「おい、ハンナさん!こいつを治療してやってくれ。」
バーンは抱きかかえていたアセナを、ハンナの元へと届ける。
すると、そこには卜部、ディード、クロエ、アイナが先客として倒れていた。
「ハンナ。こいつらを先に治療してやってくれ。俺はもう大丈夫。」
「何言ってるんですかディードさん!みんな重症です!」
クロエは意識はあるものの酷い汗をかいており、アイナは重症。
卜部は気を失っており、ディードは起き上がれはするもののボロボロだ。
それぞれの空間で激しい戦いがあったことがそれだけで分かった。
「みなさん公平に癒します。【神力展開:公平性優先治癒】。」
ハンナの治癒の力は基本的に一人にしか注ぐことができない。
しかしこの技を使うことで、優先度を見極めて治癒の力を分配できる。
平等では、危険度の高い人間は救えない。
状況を見て公平に分配することで少しでも多くの人を回復することができる。
「動ける奴だけでも儀式の間に向かうぞ。」
ケーゴはまだ動けるものを集める。
集まったのは、ケーゴ、スイ、バーン、ギョギョ。
残りの非戦闘向けの者達は、治療中のハンナの護衛をすることになった。
空を見上げると儀式の間の上らへんには、紫色の光が空から差している。
おそらくあれは【絶望の悪魔】を復活させる魔術なのだろう。
もたもたしている時間はない。
すぐにでも辞めさせないと。
「よし、じゃあ行くぞ!」
「行かせない……。」
「!?」
キィンッ!!!
ケーゴは咄嗟に魔法陣から剣を出し、なんとか斬撃を防ぎつばぜり合いとなった。
「やっぱりそっち側についたようだな。コーリン。」
そこには、黒い衣装を身にまとったコーリンがいた。
お互いの剣は力の押し合いとなっており、震えている。
「そっち側などない。私は自分の信念の為に戦う。」
「御託はいいからそこどけよ!」
キィンッ!!
二人の剣が離れる。
「【神力展開:神器覚醒・アレース】!!」
ケーゴが術を唱えると、剣が輝きケーゴの鎧が姿を変える。
剣だけでなくケーゴ自身も強化されている。
その状態で、コーリンに全力で剣を振りかざす。
「【魔剣:空蝉・漆黒】。」
そこにコーリンは鋭い漆黒の一撃を放つ。
「そんな攻撃で防げる訳ねぇだろ!!」
パリィンッ!!
「な、なに……!?」
コーリンの放った一撃で、ケーゴの強化した剣が砕けてしまう。
「【魔剣:叢雲・覆滅】。」
コーリンは続けて剣を横に振り、巨大な斬撃をケーゴに向ける。
その目は、3日前ような迷いは一切ない。
ただ自分の信念を貫くのみいう強い意思を感じる。
「クソッ!【神力展開:神器解放・隼人の盾】!!」
ドガーーンッ!!
コーリンの斬撃を防ぐために自分の真横に出した盾が、粉々に砕ける。
強化したケーゴの鎧も衝撃で破壊されてしまった。
強化していなければ今頃、盾のように粉々になってしまっていたかもしれない。
こいつ、3日前とは比べ物にならないくらい強くなってやがる。
コーリンはまだ攻撃の手を緩めない。
高く飛び上がり、ケーゴの真上を取る。
「【魔剣:公明の礎・白夜】。」
まずい……。やられる……!!
「【嫌悪解放:超深海躍層】!!」
ギョギョが放った術によって、目の前に水の壁が出現する。
それによって、黒い光の斬撃を受け止めている。
「ギギギ……。これはもちそうにないギョギョ……。」
「変われ!【嫌悪解放:ヴァルカン・ペジオニーテ】!!」
水の壁が崩壊したのと同時に、バーンが炎の壁を作り出す。
ゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
徐々に炎の壁が崩壊し始める。
「二人掛かりでもだめなのかよ!?」
「【神力展開:宙を舞う金貨】!!」
後ろからリーリィが援護に加わる。
「とまれぇええええ!!」
ドガーーーンッ!!!
なんとかコーリンの黒い光の斬撃を受け止めきることができた。
煙の中、コーリンがコツコツと歩み寄る。
「こいつは【悪魔】より厄介かもな……。」
「同感ギョギョ……。」
コーリンは表情1つ変えずに、剣をさらに振るう。
「コーリン。ちょっと来てくれないか?」
「!?」
どこからともなく声が聞こえる。
忘れるはずがない。これは【大罪の悪魔】のボス。
【傲慢の悪魔】オーエンの声だ。
「リップくんが言うことを聞いてくれないんだ。
ちゃんとするように言ってくれないかな?じゃないと、僕……。」
「申し訳ありません!すぐに行きます……。」
コーリンはうつむいて、そう答える。
「お、おい!どこに行くんだ!」
「……。すまない。」
シュンッ
コーリンは一瞬にして消えてしまった。




