穴掘りの日常
ドス、ガーン、グリグリ.....「うーむ...これは?」
手に持った石を見つめるとメッセージが響いてきた、『ただの石 残念でした!』
鉱山ギルド鑑定サービスのメッセージが腹立たしく、ストレスを感じる。
鉱山ギルド所属 ぽち モグラ族7歳 将来有望の採掘師見習い ここにあり。
「ぽち、腹減った....」
考えればもう昼に近いのではないか?
おお、時計鳥の胸毛を見ると昼過ぎじゃないか!!
『オーイチビ メシノジカンダ』と時計鳥が鳴く。
なぜか時計鳥の首を両手で絞めたくなる、『グエ..』
『ナニスンダヨ シヌジャナイカ』
「トキごめんね、手が滑ったよ、昼ご飯にしようね」
台車から敷物を取り下に敷き、弁当箱を置く。
今日のおかずは何かな?
おお 卵焼き、ハンバーグ、えーとぶろっこりー....
「トキ ぶろっこり-あげるよ」
『マズイモノハ イラネエヨ!』
「トキ 食べないと大きくなれないよ?」
『チビ タマゴヤキヲヨコセヨ』
くそお、半分こだよ。
こいつ雑食のくせに好き嫌いしている。
ギルドおまかせ弁当うまいなあ、あ、トキ、ハンバーグ喰った。
『フン ハンバーグウマシ』
もう1回手が滑りトキの首を絞めてしまった。
昼ごはん後は穴掘りの続きだ。
ツルハシを一心に振り壁を崩す、
ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!
ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!
ガツ!ガツ!
ガツ!ガツ!
崩した土砂をスコップで傍らに浮かんでいる黒い穴に放り込んでいく。
放り込んだ土砂は外の捨て場に直行する。
鉱山ギルドの魔術師が開発した魔術『どこでもポイ捨て穴』だ。
ザッツ!ザッツ!ザッツ!ザッツ!ザッツ!ザッツ!
ザッツ!ザッツ!ザッツ!
ひたすら堀り進み、土砂を穴に放り込んでいく、
おお、なにか生きている喜びを感じる。
パコッ!
おや?穴が開いた!
思わずのぞき込むと、目が合った!
「ぽちだ~」
「おや?はっちゃん、お久しぶり」
「朝に会ったけど?」
おお、そー言えば朝ごはんの時に隣にいたっけ!
「調子はどうだい?」
「順調だよ!」
ふーん....
「じゃーね」
「おう」
はて?意味わかんないーな?
ときたま他の見習いと出会い、あいさつを交わした。
普通の道端でのあいさつだよ?
山の中は各自が勝手に掘っているので日に何度か行き会うんだよ。
『オーイチビ 3ジダゾ』
おや もう終わりの時間だ! 片づけなくちや。
台車につるはし、すこっぷ、を積み込んでと。
発光石を回収し、忘れ物無しだよね。
台車を引いて坑道をゆっくり引き返す。
途中、ころと行き合った、
「ぽち どうだい調子は?」
「良い感じだよ、今日は100歩は進んだよ!」
「俺はだめだね80歩ぐらいかな?」
入口は地下から出るモグラ族の見習い達で混雑中だ。
鉱山ギルドのお姉さんが出口で交通整理をしている。
なにせ数百人の見習いが一斉に出口に詰めかけているのだ。
「みんな列を乱さないで~~、ひやー誰よ!頭の上を飛び越えるなー!」
やあ、今日の担当はちびっ子のお姉さんだな~、俺らより背が低いな?
見ると完全に見習い達の流れに飲み込まれていく、
「ひや~~誰か~~」
アッ!押し流されちゃったよ。
ギルドへの道の途中には川があり橋が無いので台車を押して渡らなければならない。
鉱山の仕事の締めはギルドの名札掲示から自分の名札を外しておわりだ。
今日のご飯は何かな。
何事もない穴掘りの一日の終わり