接客デビューしました。
今日から接客をやらせてもらえることになりました!本を読んで勉強することぐらいしかここ最近やってなかったから楽しみ。どんなお客さんが来るんだろう。
さっそく接客用の服に着替えて・・・?
え・・・。
さっきまでの笑顔が凍り付いた。
なぜならその接客用の服の服が女の子用だったから。
数十秒考え込んで何かの間違いだろうという考えに至った。さすがに気付いてたら直接聞いてくるだろうし、そもそも気づかれるようなことをしていない。かつらだって寝る時もしてるし、胸もずっと隠している。お風呂に入るとき以外は。
とりあえずレオさんに報告に行って取り換えてもらわなきゃ・・・。
◇
コンコン。ノックする。
「エリ―か?はいっていいぞ」
「失礼します。えっと、接客用の服がその・・・。女性用だったので変えてください」
「悪かった。」
謝るものの全然動く気配がない。
「あの・・・?」
「お前がいると関係ない女が店に入ってくるから女装したまま接客してくれないか?」
あらぁ~・・・。男装してさらに女装?つまり元に戻るってこと?いやそのうえからかつらかぶったり?
しかも理由が理不尽じゃない?
「それはちょっと・・・」
さすがにやめておきますとさりげなく言う。
「ここは薬屋だ。売り上げが上がるのはいいが、本当に買いたい人が買えなくなるのは困る。」
お客さん思いのいい店主と言いたいところだが、、、。レオの楽しみも入ってるよな?
この服、だって丈が短いんだよ。ドレスとかじゃなくて。
ひざと付け根のちょうど半分くらいのところなんだよ。つまりミニスカっていうやつ。
一国のお姫様がほんとにこれきるの?まあそれを言えば一国のお姫様がなんで平民になりきって薬師やってるんだってなるけどね?
口を開こうとした瞬間、レオがにっこり笑う。ふつうにみれば普段鋭い目つきがふにゃっと和らいで甘いマスクでイケメンな感じな笑顔なのだが・・・。どこか怖い。脅されてるように錯覚する。
「わ、わかりました」
もともと女だし?大丈夫かな・・・。
◇
とりあえず一度部屋に戻って着替える。うーん。可愛いけど・・・。髪を下したほうがやっぱ・・・。
頑張って男みたいになるようにメイクしているのだがどうしても中性的な感じになってしまっていたのだ。メイクを落としてみて、軽く普通のメイクをしてみる・・・?そうすれば髪を下さなくてもいい感じになるかもしれない。
いい感じ!もともとの自分の顔になってなんだかしっくりくる。胸はばれるのでそのまま。
◇
レオのところに戻って確認に行く。
「どうですか・・・?」
男っぽく『どうだ・・・?』と言いたいところだが、言葉遣いには気を付けないといけないのでどうしてもこうなってしまうのだ。
「・・・。」
言葉を失っている。そんなにおかしかった!?確かに男装して女装してるからかなりおかしいかもしれないけれど!!そんな露骨にひかなくても・・・。
「・・・。」
ひかれたことにショックを受けこちらもだんまりとする。
「なんか顔つき変わってないか?」
気づいてたのか。目がいいんだな。
「はい、メイクしてますからね」
「なんで乗り気なんだよ」
「いや別に乗り切ってわけじゃないですけど。俺が女装してるのばれたら、従業員に女装させる謎の店とか言われて評判落ちそうじゃないですか・・・」
「確かにそうだな・・・」
なれない俺という一人称を使って間違ってないか焦るがそんなのも気に留めずレオは納得している。
「ということで行ってきます。もうすぐ開店の時間なので」
「ああ。頼むぞ」
「はい」
◇
「いらっしゃいませ!新しいおいしいポーションはいかがでしょうか。苦みも変な味も全くありません!」
初のお客様は中年だがすらっとしたおじさまって感じの人だった。
「値段はいくらなんだ?」
ここ数日間でしっかりポーションの値段も確認しておいた。
うちで売ってるポーションは
緑 1銀貨
紫 1金貨
だ。ちなみに銀貨は日本円でいうと1000円になる。金貨は1万円だ。そして銀貨は10枚で金貨1枚になる。
ここで紫より高くしてしまうと売り上げがなくなってしまう。なので銀貨5枚にしようと思う。
これはレオさんにも相談済みだ。
「銀貨5枚です。少し高いですが味と効果は保証します。一口試飲してみますか?」
「ああ。少しもらおう。」
信じていないようだが飲めばわかるこの素晴らしさを。
「美味しい・・・さっぱりしていて甘酸っぱい。すごい飲みやすいぞ・・・!それにHPもMPもすべて回復している。」
この世界では体力や魔力のことをHPやMPと呼ぶ人もいる。日本と同じで助かった。男のお客様の話を聞いたほかのお客様たちがざわつき始める。
「おひとつどうですか?」
「いや、一つと言わず、3つほしいくらいだ。3つくれ。」
「お買い上げありがとうございます!金貨1枚と銀貨5枚。ちょうどお預かりしました。また来てくださいねー!」
渾身の美少女スマイルで仕留めておく。さて効果はあったのだろうか。少し顔を赤くして去っていった。あったみたいでよかった。次も来てくれるだろう。
その次のお客様も次の次のお客様も、試飲してもらって驚きながら買ってもらえた。
スマイルサービスやってたのでかなり疲れた。接客、おそるべし。
でも楽しかったので五分五分かな。買ってくれるのはうれしいし、おいしいと言ってもらえるのもやりがいを感じられる。なかなかいい職場に着けたみたいだ。買ってくれるお客様もいい人しかいなかったし。
銀貨5枚というかなりの大金のはずが惜しみなく買ってくれるからきっと生活には困っていないんだろう。
今日はもう疲れたし、報告して寝ようか。
◇