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008 ルートコンダクター

 無事に手続きを終え、預かってもらっていた荷馬車に乗り込んでマリナに雑な指示を出す。


 荷馬車はゆったりとした速度で人通りの少ない街道を進む。


 目的地は積荷の納入先だろうけれど、完全にマリナ任せなのでどこに行き着くかはわからない。


 会話が可能なら少しは知りようもあっただろうけれど、それを言っても仕方がないと諦めて私は手続きの最中に受信したメールを開いた。


 添付されていた『鑑定』を開いても私自身には何か起こった様子はなかったので、兵士の人が見てた金属板に個人情報のようなものが表示されたっぽいことだけは想像が付く。


 それがどんな内容だったのか気になった私は、新規メールに『鑑定』を添付して宛先を私自身にして送信してみた。


 数秒後に『鑑定』が添付されたメールが届いたので『鑑定』ファイルを開いてみたけれど、特になにも起こらなかった。


 失敗したのかと思っていると新着通知が鳴り、本文の冒頭に『鑑定結果』と記されたメールが届いた。


 早速開封して内容を確認する。


 鑑定結果

名 称:メイ

年 齢:16

スキル:メール ☆☆☆☆☆☆☆


 記されていたのはそれだけだったけれど、内容をひと目見てスキルランクが上昇したと通知してきたメールに添付されていた『★』の意味をなんとなく理解した。


 スキルランクを上げて★の数が増えたらメールボックスの容量が増えそうな気がするけど、メールでワンクッション置かれたのが引っ掛かり、今はまだ★を増やさないでおくことにした。


 ちらりとマリナに目を向ける。


 進行方向を見据えたマリナは、口を真っ直ぐに引き結び、目的地を目指して脇目を振らずに荷馬車を操っている。


 その横顔を眺めながら私はマリナ宛に『鑑定』メールを送信した。

 

 やがて返送されてきたマリナの鑑定結果は


名 称:マリナ

年 齢:14

スキル:ルートコンダクター ★★★★★☆☆


 というものだった。


 ただ今回の鑑定結果メールは、私自身を鑑定したときとは違って、マリナのスキルと同名の『ルートコンダクター』というものが添付されていた。


 名前からして道案内するスキルなのかな。


 月明かりだけの薄暗い真夜中の道を迷いなく突き進んで街にまで到れたのは、マリナのスキルが能力を発揮したからなのかもしれない。


 私のスキルであるメールのことを思えば、マリナのスキルもそのくらい出来ても不思議じゃなかった。


 スキルランクも私より高いしね。


 それよりも気になるのはマリナのスキルが添付されてきたことだけど、ファイルを開いたら私も彼女のスキルが使えたりするのかな。


 しばし迷った後、試しに『ルートコンダクター』のファイルを開いた。


 するとスキルの使用方法が脳裏に浮かんだので、早速『現在のマリナの目的地』をイメージすると空中に薄ぼんやりと光る半透明の矢印や目的地までの距離などが視界の中に現れた。


 このスキルって指定した場所に到るためのナビゲーターなんかじゃなくて接触を持った相手の目的を達成させるまでの道筋を行動も含めて表示されるみたい。


 盗賊に襲撃されて命の危機に陥ってたところからすると、それが実現可能かどうかは別問題として、ある程度は未来予知みたいな使い方も出来るんじゃないかな。


 しかも接触した相手なら言葉を交わさなくても目的まで看破可能みたいだし、その辺を考慮してのスキルランクっぽいね。


 それなら今は私が望んだ目的地に向かってるってことになるのかな?


 なんて思っていると荷馬車は、それなりの敷地を備えた一軒家に併設された厩舎の前でとまっていた。


 マリナは馬車を停めると馬を厩舎に入れ、積荷を家屋によたよたと運び込み始めた。


 その背を追う前に私は積荷にひと通り触れて添付リストに登録してからマリナの後に続いて家の中に入った。


 屋内にマリナ以外の人の気配はなく、数日間誰も出入りしていなかったかのようにがらんとしていた。


 奥に荷物を運び込んでいたマリナが次の荷物を運び込むべく戻って来たところに声をかける。


「ここはあなたの家なの?」


 想像はいていたけれど当然ながら質問に対する反応はなく、私を素通りして家の外へ出ようとするので入口に立ち塞がってそれを阻止する。


「はいなら首を縦に1回、いいえなら首を横に1回ふって」


 そう指示を出すとマリナはかくりと首を縦にふった。


「もう一度聞くけど、ここはあなたの家?」


 こくりと頷いたので、ここがルートコンダクターで私の目的地として定められた理由をなんとなく察した。


 宿なしの私が寝泊り出来そうな場所を無意識に望んでいたから最も単純な選択肢でとしてここが選ばれたらしい。


 頼めば宿まで案内してくれるかも知れないけれど、こんな状態の彼女から目を離すのは躊躇われた。


 まともな生活能力があるとは思えないマリナが、保護者を失って今後どうやって生きていくのか全く想像出来なかった。


 私のメールなら簡単にふたり分の生活費くらい捻出可能だし、助けた以上は彼女が自活出来るようになるまではどうにかしてあげたかった。


 それに私自身も生活拠点となる場所が欲しかったというのもあり、私はマリナに願い出た。


「しばらくこの家に泊めてもらえないかな」


 私の申し出に対して、マリナは頭をちいさく縦にふった。


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