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023 入手報告

 開門直後の人通りの少ない街中を歩き、マリナの元へ行く前に家に立ち寄る。


 早朝からアルフレードの屋敷に乗り込むのも迷惑なんじゃないかと若干尻込みしていた。


 本当なら少しでも早く手に入れた魄楊を受け渡したいところだけれど、1日と経たずに魄楊を入手した経緯はどう説明したものだろう。


 その辺りのことは魄楊を引き渡す際、こちらに深く干渉しないよう条件を提示すればいいかな。


 求めてやまない品を手に入れられるのならその程度の条件は飲んでくれるはず。


 もし約束を破って来るようなら『遊泳』スキルなり何なりを使ってこの街から遠く離れれば済むことだろうしね。


 などと悩みながら歩き、ほどなくたどり着いたマリナの家に入る。


 ルカにここが私達の街での拠点となることをざっくりと説明した。


『私は用事があるから少し出かけて来るけど、ルカもついて来る? ついて来ないのならここで待ってて欲しいんだけど』


『行く行く。ひとりでいてもつまんないもん』


『じゃあ、行きましょうか』


 もう朝食も済んでいるだろうと踏んで、西地区にあるアルフレードの屋敷を目指す。


 ルカと大通りを歩いているとたまに視線をもらうこともあったけれど、大して気にした様子もなくすぐに視線は外された。


 小型の魔獣がペット感覚で街中を連れ歩いているひとが居ても別段騒ぐようなことではなく、よく見る光景なんだろうね。


 ルートコンダクターに従って入り組んだ路地を抜け、開けた大通りへと出た。


 そこから真っ直ぐに進み、なかなかに栄えた場所に建つマドゥロ商会前に到る。


 上空から俯瞰していたときと比べて、妙に大きく感じる建物に気後れしながらどうやってアルフレードと接触しようかと考えあぐねる。


 商店は開店準備に勤しむ多くの人員が忙しなく活動しているのが、ありありとわかった。


 とてもではないが声をかけられるような雰囲気ではない。


 かといって踵を返して立ち去るわけにもいかず、目に付くところにはいないアルフレード宛に、魄楊を入手した旨とちいさな魔獣を引き連れて今現在商会前に私が来ていることを記してメッセージを飛ばした。


 メール送信後、しばらくすると正面の入口にアルフレードが姿を見せた。


 アルフレードはすぐに私の元へ歩み寄って来ることはなく、私へと視線を向けながら従業員たちに何やら指示を出すと奥に引っ込んでいった。


 するとアルフレードに指示を出されていた人物のうちのひとりが私の元へやって来ると一礼した。


「こちらへどうぞ。旦那様が奥でお待ちです」


「はい」


 私はちいさく頷き、彫りの深い壮年の男性の後に続き建物の中に足を踏み入れた。


 活気付く店先を抜け、階段を昇ると一気に落ち着いた雰囲気に転じた。


 広い廊下を中程まで進むと壮年の男性は、重厚な造りをした両開きの扉をノックした。


「お客様をお連れしました」


「通してくれ」


 壮年の男性は扉を押し開き、私に入るよう手で促す。


 私はルカに『しばらく声出さないでね』とメッセージを送ってから大きなテーブルとソファの設えられたいかにもな応接室に入った。


 背後で静かに扉が閉まり、ちらりと扉の方に視線を向けると壮年の男性の姿はなく、彼は部屋には立ち入ってはいないようだった。


「単刀直入に聞こう。さきほど一方的に送られて来た君からのメッセージは事実か?」


 ソファに腰掛けることもなく、入口に近い位置に佇んでいたアルフレードはこちらに鋭い視線を向けながら開口一番にそう告げた。


「事実ですよ」


 その言葉と同時に私は手の中に『魄楊の枝先』を添付ファイルから取り出し、アルフレードに差し出す。


 アルフレードは魄楊には触れようとはせずに考え込み、何事かつぶやく。


 その声はとてもちいさく、私の耳には届かない。


「信用出来ないですか?」


「そうだな正直なところ判断がつかない。むしろ疑わしさの方が優っているといってもいい。昨日の今日で魄楊を入手したなどとはな。だが、君の持つそれからは濃密な魔力を感じるのも事実だ。本物でなかったとしても充分に価値のある代物なのは間違いない」


 私には全く感じられないけれど、魄楊からは異質な雰囲気が放たれているらしい。


「だったらこれを反魂香として使ってみれば早いんじゃないですか」


「道理だな。しかし、いいのか」


「聞くまでもないでしょう。でなければ、はなからここには来てないですよ」


「それもそうだな、すまない」


「それでマリナはどこにいるんです?」


「こっちだ」


 アルフレードと一緒に応接室を出ると扉の脇には、ここまで案内してくれた壮年の男性が後ろ手に手を組んで周囲を警戒するように直立していた。


 アルフレードは壮年の男性に「もう下がってくれて構わない」とひとこと告げ、廊下の奥へと進む。


 私は壮年の男性にぺこりと一礼してアルフレードの後に続く。


 廊下の突き当たりから階段を昇って一気に4階へ行き、階段から最も離れた扉にまで歩みを進め、行き着いた扉の施錠をアルフレードは開いた。


 静まり返った廊下にカチャリと解錠音が響く。


 するりと室内に踏み入るアルフレードに続き、私も部屋に入った。


 すると部屋の片隅に設えられた豪奢な天蓋付きベッドの上にマリナが寝かされているのが目に入った。


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