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世界最強の神獣使い  作者: 八茶橋らっく
第1章 【集う神獣と神獣使い】
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6話 【呼び出し手】とドラゴンの縄張り

今日も日間総合ランキングにいます。

応援よろしくお願いします。

 泉からの帰り道、川で魚を獲ったり山に生える山菜や薬草なんかを集めた俺たちは無事に小屋へと戻っていた。

 苦労したけど水も樽数個分持ち帰れたし、しばらく大丈夫だろう。


「とは言え、やっぱり魔物が襲ってくるのは勘弁して欲しいな……」


 俺は昼食の魚を焼きながら、どうしたもんかと悩んでいた。

 また水や食料を集めに行く時、毎度ああやって襲われてたら危なっかしくて仕方ない。

 魔物対策は急務じゃなかろうか。


「だったら、わたしがこの辺の魔物をまとめて追い払ってあげよっか?」


 ローアは昼食の準備を手伝いながら、そんなことを言い出した。


「まとめて追い払うって、できるのか?」


「うん、やろうと思えばね。と言っても、わたしが山の近くを飛んだりすればいいだけの話なんだけど」


 飛ぶって、ローアが飛ぶと魔物が寄って来なくなるのか?

 つまりどういうことだと思ってたら、皿を持ってきたフィアナが「そりゃ妙案だね」と言った。


「つまり、他の魔物に対して縄張りを主張するってことね。『ここはドラゴンの住まう山だから手出しは許さないぞ』って」


「うんうん、そういうこと。お兄ちゃんも分かってくれた?」


「わたし、これでもドラゴンだからねー」と胸を張るローアの頭を、俺は軽く撫でた。


「ああ、そういうことか。確かにドラゴンであるローアに敵う魔物なんてそういないしな」


 ダークコボルトもトロルも秒殺してたローアの力が規格外的なのは、俺もこの目でよく見てるし。

 そういうことなら早速飛んでもらおう……と言おうとしたら「あ、でも」とフィアナの待ったがかかった。


「ローアはそれでいいわけ? 確かドラゴンって一度縄張りを定めたら、一生そこで過ごさなきゃいけないしきたりなんだろ?」


「なっ、そうなのか!?」


 地味に厳しい縛りもあったもんだ。

 つまりローアは縄張りをこの山に決めたらこの先一生、この山で生きていかなきゃいけないってことなのか。


「ローア、そんな大事なことなら簡単にやらなくてもいいんだぞ? 魔物への対処法は他のを考えればいいんだし」


 俺のせいでローアは一生この山暮らし、というのも申し訳なさすぎる。

 しかしローアは首を横に振って「いいのいいの」とあっけらかんと言った。


「わたしたちドラゴンは、いつか必ず縄張りを持って一人前になるもの。だから【呼び出し手】のお兄ちゃんのいるこの山で一人前になるのも、ドラゴンとしては悪くないのかなーって。それにこの山大きいし、歩いてみたらわたしに合った地脈みたいだし。だからわたし、この山に来てからとってもいい気分なの」


 それにね、とローアは俺に張り付いてすり寄りながら言った。


「この山をわたしの縄張りにしたって、別に他の土地へ遊びに飛んで行っちゃいけないって訳でもないもの。何よりわたしはこの家に住んでいるんだから、家の周りを縄張りにするって当たり前のことでしょ?」


「ローア……」


 この先ずっと一緒にいてくれると遠回しに言ってくれるローアに、俺は心が暖かくなる思いだった。


「ありがとう、とっても嬉しい」


 俺はぎゅっとローアを抱きしめ返すと、ローアは嬉しそうにしながら言った。


「それとお兄ちゃん。さっきも言ったけど、ドラゴンは縄張りをもって一人前なの。だからこれからは、わたしを一人前のレディーとして扱ってね?」


 すると、すぐそばにいたフィアナがぷっと吹き出した。


「ぷっ……はははは! まだまだちんちくりんのちびドラなんだから、あんまし背伸びするなって。一人前のレディーになるのは体が成長しきってからでしょ?」


「むぅっ!! わたし、もう縄張りがあるもん。ドラゴンとしては一人前なんだから!」


 小さな体でぷんすか! と怒ったローアをなだめるべく、俺はローアの頭を撫でた。


「フィアナ、今のは言い過ぎだ。ローアもからかわれているだけだから、あまり気にしないこと」


「「むぅぅ……」」


 しかし二人は案外本気だったのか、お互いを半眼で見つめあっていた。

 俺は苦笑しながら二人に話しかけた。


「こらこら、睨み合ってないで焼けた魚よそってくれよ。それでとっとと食べよう、腹が減ってるとカリカリするから」


「「……はーい」」


 と、そんなこんなで俺たちは獲って来た魚を中心に昼食にした。

 綺麗な川で育った魚だからか臭みもなく、寧ろ普通に美味かった。

 それに山菜と魚でスープも作ってみたが、ローアとフィアナに好評で何よりだった。


「お兄ちゃんの作るお料理って美味しいね。人間はいつもこんな食事をとってるの? ……そこはちょっと羨ましいかも」


「料理も人間の文化の一つだし、大体の人間はちゃんと料理したものを食べてるよ。……寧ろ二人ってこれまでどんな食事だったんだ?」


 ローアとフィアナは揃って応えた。


「「獲物のお肉」」


 ……なるほど。

 そりゃ人間の料理は美味く感じられることだろう。

 俺はこれから先、二人に美味いものを食べさせてあげられたらいいなと思い、まずは今晩の献立から考えるのだった。


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