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世界最強の神獣使い  作者: 八茶橋らっく
第6章 【最後の魔神】
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52話 【呼び出し手】と新たな旅先

 ある日の風呂上がり。

 のんびり自室でくつろいでいると、ローアがやってきて藪から棒にこんなことを言い出した。


「お兄ちゃーん! もしよかったら、また王都みたいに遠くへ遊びに行かない?」


「遠くって、またどこに?」


 聞くと、ローアは何故か「ふふーん」と誇らしげにしていた。


「わたしがこれからお兄ちゃんを連れて行きたい場所、それは……」


「それは?」


「わたしの故郷なの!」


「んっ……ええっ?」


 それまでベッドの上でごろ寝していたが、思わず体を起こした。


「ローアの故郷って、あの竜が沢山いるって話の?」


「うん、竜源渓谷ってところなんだけどね。おっきな滝があって虹もかかっていて、とっても綺麗なところだから一度お兄ちゃんにも見せてあげたいなーって。それにお兄ちゃん、最近は畑仕事とか狩りとか魔術の修行とかばっかりだから。少しくらいは息抜きとかあったらいいかもって思ったの」


「えへへ」と笑顔ですり寄ってきたローア。

 けれど正直、それは難しくないかという思いがあった。


「ローア、前に王都に行った時使った指輪は、もう後少ししか効力が残っていなかった筈だろ? ローアの故郷は遠いって前に言っていたけど、往復分は足りるのか?」


 旅先で指輪の効力が切れたら、次々に魔物が寄ってくる。

 そうなったらローアの縄張り内に帰るまで、魔物を倒し続ける必要がある。

 心配していると、ローアは「大丈夫」と答えた。


「実はそっちの準備ももう済んでいるの。……ね、皆?」


 ローアが部屋のドアの方を向くと、他の神獣たちも部屋に入ってきて勢揃いとなった。


「ほら、これ。実は皆で、指輪の方はもう調整しておいたんだよ」


 フィアナは、例の俺の力を封じるという指輪を手渡してきた。


「……あれっ、何だか文字が増えてないか?」


 前には掘られていなかった文字を見て呟くと、クズノハが腕を組んでそれらしく言った。


「ふむ、気がついたか。実は魔道具の方を皆で改良して、持続時間を二週間ほどに伸ばしたのだ」


「二週間って、前よりも長いじゃないか。そんなことできたのか」


「神獣五体がかりなら、不可能ではない。実は効力の持続時間を一ヶ月ほど延長する計画もあったのだが、まあ今回の旅行なら二週間程度でいいだろうという話になっての」


「【呼び出し手】さんもずっと山の中では飽きてしまうでしょう? それにこの前も【魔神】を倒して頑張っていたもの。だからわたしたちなりに、何かできないか考えたの」


「そうしたら、マグさんを山の外へ連れ出そうという話に落ち着いたといった顛末です」


 クズノハに続いて、マイラとリーサリナもそう言った。

 俺は皆の気遣いが嬉しくなって、胸がいっぱいになる思いだった。


「皆、本当にありがとう。最近忙しそうだと思ったら、俺のためだったのか……」


 よく思い返せば、クズノハが家に泊まる頻度が高くなっていたし、ローアたちも最近は部屋にこもることが多かった。


「まあ、指輪の改良計画がうまくいった以上、構造を読み解き数を増やして予備分もストックもできるようになるだろう。これから先、妾たちがいる限り何度でも遠出はできるようになるとも」


 クズノハは自信たっぷりな様子だった。

 やはり魔道具に関する話は、クズノハの得意分野なのだろう。

 ……しかしふと、今までの話で気になったことがあった。


「その、一応聞きたいんだけどさ。どうして旅先がローアの故郷になったんだ?」


 俺はローアに聞いたつもりだったが、意外なことにマイラから返事がきた。


「わたしたちの中でも【呼び出し手】さんをどこに連れて行こうかって相談したんだけれど。そうしたらローアが故郷に招待してくれるって言うから、そうしようって話にまとまったの。ドラゴンの住処って、意外と皆気になるもの」


 なるほど。

 神獣の中でも、やはりドラゴンは目立つと言うことだろうか……って。


「フィアナ、ローアの故郷に行っていいのか? ドラゴンと不死鳥って仲が悪いんだろ?」


 問いかけると、フィアナは「うーん」と少しだけ眉間にしわを寄せた。


「そりゃあたしも最初はえーって感じだったけど。でもローアが大丈夫って何度も言うから。ここは信じてみよっかなーってとこ」


 その辺りの話は神獣たちの間でついているなら何よりだが。

 しかしローアと出会った当初のフィアナからは考えられない発言だったなと、俺はどこか嬉しくなっていた。


「そういうことなら問題ないか。それでいつ出発するんだ?」


「お兄ちゃんさえよければ、明日の朝方! 頑張って飛べば、明後日には着くかなーって」


 それから俺たちは、ローアの提案した通りに翌日の朝方に出発することになった。

 ローアの故郷、ドラゴンの住処。

 きっと多くのドラゴンが待っているんだろうなと、俺は少しわくわくする思いでその晩を過ごした。


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