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世界最強の神獣使い  作者: 八茶橋らっく
第5章 【記憶喪失の天馬】
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49話 天馬の独白

 【魔神】アスモディルスを倒してから数刻ほど経った頃。

 俺たちは目を覚ましたサフィーナに、ことの顛末を説明した。

 ……するとどうやらサフィーナの方も【魔神】が体に入った際のショック、それにクズノハが放った「特大の解呪」の影響で記憶を取り戻したそうで。

 その後にサフィーナから、俺たちは事情を聞くことができた。


 ***


 はてさて。

 わたしの話をするのであれば、本来なら長い時間を要するのですが……いえ、あまり長くお話するのも悪いですよね。

 ですから本当に簡潔に、あったことのみをお話しします。


 わたしことサフィーナ……いえ、リーサリナは元々、はぐれ天馬とでも言うべき者でした。

 外の世界を知りたくて身一つで故郷を出奔した、人間で言うところのよくいる家出娘です。


 そんなわたしは故郷を出て長く、長く飛び……とある人間たちの集落にたどり着きました。

 マグさんたちのいる山奥よりさらに険しい、秘境にある集落。


 わたしは興味本位もあってその集落に人間の姿で降り立ち、旅人と偽ってとある人間の少女と出会いました。

 そしてその子こそ……わたしの初めての人間の友人にして、天上の神より【巫女】のスキルを授かった少女。


 その集落では代々【巫女】となった少女は、その地にて「あるモノ」を代々封印してきたそうです。


 それこそが……集落の地下深くに眠りし【魔神】アスモディルスの魂。

 初代【呼び出し手】ですら滅せられずにこの世に留まった、特大の災厄の一つ。


 それから数年集落に逗留し、その少女こと巫女と仲良くなるうちに彼女はそんなことまで教えてくれました。

 ……どうせこんな大昔から伝わる与太話、集落の外の人は信じないだろうからと笑いながら。


 しかし神獣であったわたしは【魔神】の微かな気配に気がつき、彼女の話が本当のものであると確信しました。

 同時に「地下にて眠りし【魔神】を滅することはできないか」と考えるようにもなりました。

 ……そうすれば彼女は巫女としての使命を解かれ、共に外界へと飛んで行くこともできるから。


 けれどそんな折、事件は起きました。

 大昔から続いていた【魔神】封印に綻びが出たのか、それとも永く封印されていた間に力を取り戻したのか。

 巫女の封じていた【魔神】が、知らず知らずのうちに彼女の意識を奪い、ゆっくりと外に出ようとしていたのです。


 そうしてある日、【魔神】アスモディルスはわたしに交渉をしてきました。


『この娘を失いたくなければ、我が協力者となり肉体を蘇生させる手筈を整えよ』……と。


 ……それからわたしは、アスモディルスに従い自然界の魔力をかき集め出しました。

 【魔神】の肉体は神獣のものと同様に魔力の塊、ならば魔力さえあれば肉体の再構成も可能であろうと。


 ……ええ、そうする他なかったのです。

 友人の巫女はあくまでも人間、【魔神】はその気になれば本当にたやすく彼女を殺してしまう。

 それに集落の人間たちも、恐らくは巻き込んで……。


 となれば、わたしは【魔神】の言うことを聞く他にありませんでした。

 ……でも。


「お願い、旅人のお姉さん。わたしの中の【魔神】を、どうか抑えて……!」


「わたしの意識があるうちなら、まだ我慢できる」


「だからどうか、どんな手を使ってでもこの【魔神】を外には……!」


 わたしは彼女の血を吐くような願いを聞き、心を決めました。

 自分一人では、たとえ相手が魂だけの不安定な存在でも、とても【魔神】には敵わない。

 ならば大昔に【魔神】を倒した者と同じ力を持つ人間……現代における、神獣と心を通わせている【呼び出し手】に助力を請おうとしたのです。


 ……けれど集落から脱出する際、わたしは【魔神】の呪いを受け。

 力と共に、一切の記憶を封じられようとしていました。

 それでもわたしは最後まで「神獣とその近くにいる【呼び出し手】の元に向かう」という目的だけは忘れませんでした。


 こうして……わたしはマグさんたちのいる山に着いた途端、完全に力尽きて落下してしまい。

 記憶をなくした天馬となった……そんな顛末なのです。


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― 新着の感想 ―
[一言] あの屑魔神よく完全消滅程度で終われて運が良かったな。
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