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世界最強の神獣使い  作者: 八茶橋らっく
第1章 【集う神獣と神獣使い】
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4話 【呼び出し手】とスキルの秘密

日間ハイファンタジーランキング、日間総合ランキングに載っています。

良い調子で嬉しいです。

 荷車に荷物諸共突っ込まれていた堅焼きパンや瓶詰め類でどうにか朝食を整えた後。

 俺は目の前でもしゃもしゃとパンを齧る二人の手前、少し考え事をしていた。


「……食料を安定して得る目処は早めに立てないとマズいよな……」


 ひもじい思いはしたくないし。

 そんな俺の呟きに、ローアがぴくりと耳を動かして反応した。


「そーだね。お兄ちゃんが持って来た食べ物もそのうち無くなっちゃうし。それならお兄ちゃん、人里に降りて買いに行くの? ……というよりも」


「どうしてご主人さまは、こんなところに住んでいるんだ? この辺結構な山奥だし魔物も多いし、人間が住むには厳しいと思うんだけど」


 ローアとフィアナは二人揃って首を傾げた。


「それはまあ、ごもっともな疑問なんだけど……」


 いい機会だからローアとフィアナには事情を話してしまおうと、俺はこの山へ追いやられた顛末を語った。

 スキルを授かり、故郷の街から問答無用で追い出されてしまったのだと。

 ……すると、話し終えた頃には二人の体から尋常じゃないオーラが上がっていた。


 こう、どう見ても穏やかには見えないというか。

 今にも飛び出して行って、何かやらかしそうな気迫があるというか。


「今のお話はちょっとどころか、かなり聞き捨てならないよ……フィアナは?」


「うん、今回ばかりはアタシもローアに同意」


 そう言う二人は険しい表情を浮かべていた。

 俺は思わず、二人をなだめにかかった。


「二人とも、落ち着いて落ち着いて。もう過ぎた話だし、これからは二人に助けてもらえるんだし。だからそんなに怒らないでくれよ、俺は大丈夫だからさ」


 俺は「あははは、そんなこともあったんだくらいに思っておいてよ」と笑って誤魔化そうとしたが、目の前の二人に「「笑い事じゃない」」とぴしゃりと言われてしまった。

 はい、すんません。


「そもそもご主人さまは【呼び出し手】ってスキルを、どうして神さまが人間に与えたと思ってる?」


「さて……これまで魔物が寄ってくる外れスキルとしか思ってなかったから、あまり詳しくは考えたことないな」


 今は【呼び出し手】と呼んでいる【デコイ】を授かったと知った時は、本当に困った以外の感想が出ない有様だった。

 神さまが何を考えているのかなんて考える余裕は、全然なかったのだ。

 俺の様子を見て何を思ったのか、フィアナは肩を落とした。


「ご主人さま本人でもそんな認識なのか……。ってなると、人間族って長い世代交代のうちに【呼び出し手】スキルを持った人の重要性とか忘れちゃったのか。最近は昔ほど人里への魔物の侵攻も、大災害もないみたいだし」


「うん、そーみたいね……」


 ローアはフィアナに同意した。

 それからローアの方が、静かに話し出した。


「【呼び出し手】はドラゴンや不死鳥に自分の言葉を伝えることができて、万が一の時は助けを求めることだってできる。わたしたちも【呼び出し手】がちゃんとした人なら力を貸したいと思うし、それはもうお兄ちゃんもよく分かっているよね?」


「まあ、現に二人がいてくれているし……」


 寧ろダークコボルトに襲われた時にローアが来てくれなかったら、俺はきっとあの時死んでいた。

 だから、ローアの言葉の意味は身をもって分かっているつもりだ。


「なら話は簡単。それってつまり、もしお兄ちゃんが『故郷の人を、魔物の群れや大きな災いから守って』ってわたしたちに頼めば、わたしたちがそういう方向にも力を貸せたかもってことなの。……あんな話を聞いた後だから、お兄ちゃんの故郷の人を助けようだなんてもう微塵も思わないけどね」


 ローアの話を聞いているうちに、ようやく俺もピンと来た。


「つまり【呼び出し手】って人間じゃ対処しきれない事態が起こった時、神獣を呼んで助けてもらうための橋渡し役も担っているのか」


 神獣を呼んで災いを退ける人間、まるでおとぎ話みたいな話だと思う。

 でも、神獣のローアがこう言うんだから真実なんだろう。

 また、俺の故郷の話を思い出したのか膨れているローアの代わりに、フィアナがコクリと頷いた。


「その解釈で合ってるよ、ご主人さま。といっても、前にも言ったように近年の【呼び出し手】は声が聞こえても心が汚いからアタシたちもあんまし力を貸さないけど。……欲が深い人間って、力を貸してもアタシたちにまで害を及ぼしたりするから近づきたくないんだよねー」


 心底面倒くさそうに言ったフィアナの言葉には、妙な説得力があった。


「そりゃ言えてそうだ……」


 ドラゴンの鱗に不死鳥の羽根など、神獣を捕まえて得られるようなおとぎ話にしか出てこない伝説のアイテムを売り捌けばとんでもない額になることだろう。

 桁外れの大金は辺境暮らしの俺には無縁だけども欲しがる人は欲しがるだろうし、呼び出したついでに神獣を狩ってしまおうとか考える不心得者も、確かに【呼び出し手】の中にはいるかもしれない。


「何にせよ、人間ってのは欲深なくせに魔物ほど強くもない。だからご主人さまみたいな【呼び出し手】が稀に現れてはアタシたちと心を通わせ、人の世を守る。……元々、そういうふうにこの世界のバランスを保つために神が人間に与えるスキルが【呼び出し手】なんだよ」


「それなのに、せっかくの【呼び出し手】を追い出しちゃうなんて……。お兄ちゃんが引きつける魔物が問題って言っても魔物の大侵攻や大きな災いに比べればいくらでも対処のしようがあるし、寧ろそういう時こそ人間同士団結し合って助け合うべきなのに。まったく、人間はそういうことも忘れちゃったんだね……。魔物の大侵攻とか起こったら、この辺りの人はどうするんだろ。そもそも【呼び出し手】自体、大きな災いが起こる前に生まれるものって言い伝えもあるくらいだし……」


 ローアとフィアナは腕を組んで「「う〜ん」」と難しい表情になった。

 でもその後すぐに二人とも顔を見合わせ「「ま、いっか」」と言ってしまった。


「人間とアタシたちの橋渡し役である【呼び出し手】を追い出すような街に手を貸す道理もないし、今まで散々故郷を助けて来たご主人さまをとっとと追い出したって聞いただけでも胸糞悪い。……今はこんな話より、今後のアタシたちの食事について考えようよ」


「そうだね、わたしもお腹が減るのは嫌だもん」


 俺も頷いて、二人に「そうしよう」と言った。


「追い出された以上はもういくら考えても仕方がないことだし、俺たちはこれからのことを考えていこう。それに大きな災いってやつがもし起こったら、起こった時にまた皆で考えてみればいい」


 そう、今は何より当面の生活のことを考えて行動していかなければ。

 ずっとこの山で狩りをしていたから、幸い土地勘はある。

 そしてこの山には十分な山菜に多くの獣、それに綺麗な川なんかもあるから生活はできるだろう。


 でも、今のままだと便利とは言い難い。

 これから三人で生きていくならゆくゆくは畑を作れた方がいいし、井戸もどうにか確保できた方がいい。

 とは言っても、しばらくは狩猟採取生活が中心になると思うけども。


「……ってことで、荷物の整理を手早く終わらせたら飲み水と食べ物を確保しに出かけようか」


「うん。わたしいつも飛んでて山の中って歩いたことないから、ちょびっとだけ楽しみ。お兄ちゃん、案内はお願いね!」


「ああ、それは任せて欲しい」


 ピタッと抱きついてきたローアを少し撫でると、フィアナも物言いたげに「むぅ……」と目を細めていた。

 俺は「悪かった悪かった」と苦笑しながらフィアナにもローアと同じようにしてから、荷物をパパッと整理した。

 それから準備を整え、俺たちは小屋を出るのだった。

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