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世界最強の神獣使い  作者: 八茶橋らっく
第4章 【縄張り破りの毒蛇竜】
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39話 【呼び出し手】と縄張り破り

書籍化決定につき、現在本作の書籍化作業を進めております!

web版の方も更新を続けられるようコツコツと書き進めていきます。

「ふーん。それでそこのヒュドラが、ご主人さまとローアを勘違いして襲いかかって来たと」


「端的にまとめるとそうなるな」


 目を細めたフィアナの視線の先には、今もなお気絶したままのアオノがいた。

 このまま放ってもおいてもいけないと、ひとまず家の近くまでローアが運んできたのだ。

 なお、アオノは人間姿のローアにつんつんと突かれていた。


「それでアオノは縄張り破りって言っていたんだけど、それってどんなものなんだ?」


「まあ、あたしたちからすれば色んな意味で迷惑行為以外の何者でもないけどね。ヒュドラの縄張り破りってたまに聞く話だけどさ、遂にここにも来ちゃったかーって感じ」


「縄張り破りって、たまに聞く話なのか……」


 つまりそこそこの頻度で、ああやってヒュドラは他の神獣の縄張りに侵入しては攻撃を仕掛けると。

 はた迷惑でしかない生態だ……。


「でも何で縄張り破りなんて? 武者修行でも他の神獣に向かっていくなんて、ヒュドラもただじゃすまないだろ?」


 現にアオノはローアの不意打ちにより一撃でダウンしている。

 あの一撃が前足ではなく情け容赦なしのブレスだったら、アオノは今頃気絶では済んでいないだろう。


「だとしても向かっていくのがヒュドラよ。わたしたち若いケルピーが修行を積むようなもので、ヒュドラも他の神獣に打ち勝って一人前と認められるようだから」


「マイラ、今日の修行から戻って来てたんだ」


 いつの間にか話を聞いていたらしいマイラは、アオノを見ながら言った。


「ああやって縄張り破りに失敗したヒュドラが返り討ちにあうこともよくある話。それでも一族の決まりだからと、彼女もやむなしってところがあったんじゃないかしら?」


「その手の話を聞いていると、神獣も案外大変そうだよなぁ」


 自然界の絶対者として圧倒的な力を誇る神獣も、それなりに険しい道のりを経て成長していくってことなんだろう。

 ……いやだからってヒュドラもケルピーみたく、他を巻き込まずに修行してくれって言いたいけども。


「それでご主人さま、あのヒュドラどうするのさ?」


「どうにかしたいけど、まず本人に起きてもらわないとな」


 話をしようにも、肝心のアオノは気絶したままだ。

 ローアはぺしぺしと叩いたりしてアオノを起こそうとしているが、アオノは微動だにしない。

 俺たちはそんなローアの奮闘を遠巻きに見守っていたが、ローアもなかなか起きないアオノに業を煮やしたようで。

 遂にアオノの鼻先にむしった若草を突っ込む暴挙に出た。


「……うきゃっ!?」


 さしものアオノもこれにはびっくりしたのか、尾をばたつかせて起き上がった。

 ローアはひょいっとアオノの尾を避けてから、アオノの前で仁王立ちになった。


「もう、寝起きが悪いヒュドラさんなんだからー」


「あなたが変なものを入れたからでしょう!? ……しかしわたしは、何故ここに倒れて……?」


「それは勿論──」


 ローアは光を纏い、竜の姿に戻った。

 それから普段の柔らかな雰囲気を引っ込め、ローアは声音を低くした。


「──わたしがヒュドラさんを倒したから。お兄ちゃんのことをわたしだって勘違いしていたのもあったみたいだけど、流石に注意不足すぎ」


「なっ、ではあなたがこの山の主……!?」


「そういうこと。勝敗も決したんだし、これ以上暴れるのはよしてわたしの縄張りから出て行って欲しいんだけど?」


 むすっとした様子のローアに、アオノは唸った。


「ぐっ……! しかしわたしが敗れたのはあくまで不意打ち。こうして真正面から戦えばまだ勝敗は……」


「はいそこまで」


「わきゃっ!?」


 アオノがローアに牙をむいた途端、マイラの容赦ない一撃がアオノの頭部に炸裂した。

 マイラは水を操って岩を掴み、そのままモーニングスターのように振り回したのだ。

 またもや不意打ちを食らったアオノは、そのまま卒倒してしまった。


「よ、容赦ないな……」


「これ以上暴れられると私たちまで困ってしまうから。それにあの様子だと説得も難しそうだし……」


「ローア、分かっているね?」


「……はぁーい」


 マイラとフィアナのじーっとした視線に、ローアはため息をついて間の抜けた返事をした。

 それからローアはアオノを抱えて「ちょっと置いてくるね〜」と飛び去ってしまった。

 その背を見守りながら、俺は言った。


「……要するに、アオノを連れて来たのがローアだからどこかに置いてくるのもローアに任せるってこと?」


「そういうこと」


「それに人間の【呼び出し手】さんではあのヒュドラを持ち上げるのも大変そうだし。ここはローアに任せるのが最善だと思うわ」


 フィアナとマイラは揃ってそう言った。

 まあ、アオノはまたローアに襲いかかろうとしていたし、ああして山の外へ運び出すのが一番安全かもしれない。


 その後、ローアは夕暮れ時に「適当に流してきたよ〜」と帰って来た。

 どうやらどこかに置いてくるのではなく、アオノをどこかへ流す方向に考えがシフトしたらしい。

 ……神獣だから無事だろうけど一体どこに流してきたのか、とは恐ろしくて流石に俺も聞けなかった。


 ***


 ……しかしながら、事件はその三日後に起こった。


「え、えーっと……」


 目の前にはいつの間に戻って来たのか、我が家の前で綺麗な土下座をしているアオノの姿があった。

 そして、アオノは俺に言った。


「師匠、弟子にしてください!!!」


 ……この子、マイラが頭を攻撃したせいで遂におかしくなってしまったんだろうか。

 ともかくヒュドラの縄張り破りから始まった騒ぎは、まだまだ終わりそうになかった。

別作品のお話になりますが、この度

「王都の学園に強制連行された最強のドラゴンライダーは超が付くほど田舎者」

のコミカライズ版1巻が11/22に発売されます!(電子書籍版も同時発売です!)

活き活きとした主人公や可愛いヒロイン、それに迫力のあるドラゴンなど見所の多い作品ですので、そちらも合わせて楽しんでいただけますと幸いです!

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[一言] 第一印象は明後日の方向に頑張り屋な娘さん?て感じ
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