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世界最強の神獣使い  作者: 八茶橋らっく
第3章 【王都への旅路と東洋の神獣】
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36話 【呼び出し手】と四大皇獣の決着

 ベヒモスの付近を飛んで注意を引きつけ、その場に留めてから少し。

 空の向こうから、聞き覚えのある声が俺たちに届いた。


「ご主人さま、ローア!!」


「フィアナ!」


 不死鳥の姿で飛来してきたフィアナは、俺たちのすぐ真横までやってきた。


「準備できたよ。マイラとクズノハが一旦離れてって!」


「一旦って……うわっと!?」


 ベヒモスから離れていくフィアナに続いて、ローアも空高くまで上昇していく。

 すると、ベヒモスを挟んで立っている神獣姿のマイラとクズノハが見えた。


「二人は何を?」


「結界組んでベヒモスの足を止めるんだってさ! デカブツの全身まるごと覆うみたいだから、離れてないとアタシたちが邪魔で結界が組めないみたい」


 フィアナがそう言った直後、マイラとクズノハの体から出た閃光がベヒモスを包み込んでいく。

 その後すぐに、閃光はベヒモスの四方を囲う巨大な壁となった。


『GUOOOOO!!!』


 ベヒモスは木々を押し砕くようにして結界に何度も突進するが、閃光の障壁はビクともしない。

 ……が、結界を維持する神獣二人の表情は重かった。

 ローアもそれを感じたのか、不安そうに声を上げた。


「あれだけの大きな結界、神獣二人掛かりでも少ししか保たないんじゃ……!?」


「そう。だからアタシたちでベヒモスを叩く。二人がベヒモスの動きを止めて、残った二人とご主人さまで一気に撃滅って寸法!」


「分かりやすくていいけど、あいつの甲殻はローアのブレスだって簡単に通さない。簡単にはいかないぞ」


「だったら力を合わせるだけの話。ドラゴンと不死鳥の力を束ねれば、やってできないことはないよ!」


 フィアナは人間の姿になり、ローアの背に飛び乗った。

 それから俺に手を触れ、神獣の力をぐんぐん流し込んでいく。

 体がぽかぽかと温まるような感覚の中、俺はフィアナに聞いた。


「……フィアナ、何やってるんだ?」


「何って、アタシの力をご主人さまに託している真っ最中。ほら、ローアも早く」


「分かってるってば。もう、せっかちなんだから〜」


 ローアはいつも通り、のんびりとした声音で竜姿のまま俺に力を蓄積させていく……っていうか。


「まさか二人の力を束ねるのって、俺!?」


「大丈夫だって。ご主人さまも神獣の力の扱いに慣れてきているし……ほら。ドラゴンと不死鳥って本来なら相性最悪だから。アタシたちが直接体内で力をすり合わせたら、魔力の相性的な意味でも失敗しちゃうかもだし」


「そういうもんなのか……」


 ここ一番って時にフィアナがそう言うなら間違いないのだろう。


「あ、それとそれと。クズノハから伝言。魔道書をぱらぱらめくってみてだって」


「魔道書?」


 俺は懐から魔道書を取り出してめくっていく。

 すると中から不思議な文様が刻まれた札が一枚、挟まっていた。


「これ、クズノハの家にもあったやつだよな。いつの間に……ん?」


 札を手に取ると、札から青白い炎が発された。

 俗に言う狐火だろうかと思ったが、不思議と熱は感じない。

 それどころか、これは……!


「神獣の力か」


「そ、クズノハからのプレゼント。アタシたちがご主人さまに力を託したように、クズノハも茶飲み友達の助けになりたくって……ってことみたい」


 俺は心の中でクズノハに感謝しながら、札から流れ込んでくる力に身を任せた。

 神獣の力は元々俺に備わっていたかのように自然に、それでいて活力をもたらすようにして俺の身に入っていく。


「これだけ神獣の力が集まれば、怖いものなしだね。お兄ちゃん!」


「ああ、皆が力をくれたからな!」


 俺が神獣たちの力を受け取った後、ローアは共に結界の真上に回り込んだ。

 マイラたちが調整しているのか、結界の上にはちょうどローアが通れるくらいの穴が空いていた。


「いっくよー、お兄ちゃーん!」


「いつでもいいぞ!」


『GUUUUUU!!!』


 真上から飛来する俺たちを、ベヒモスは迎え撃つようにして飛び上がった。

 だがその間にフィアナが割り込み、次々に爆炎を噴射した。


「これでも食らいなよっ!」


『GAAAAA!!??』


 広範囲に何発も放たれた爆炎に、ベヒモスは苦悶の声を上げた。

 フィアナの爆炎はベヒモスの甲殻を貫通しなくとも、超高温でその身を炙っているらしい。

 肉や甲殻の焼ける匂いと煙が鼻を突くが、ローアは構わず急降下していく。


「お兄ちゃん、今!」


「分かってる!!」


 俺は左手でローアの背に掴まりながら、右手で長剣を抜いて神獣の力を流し込んだ。

 長剣の刃は月明かりと重ね合わせた神獣の膨大な魔力によって、七色の光を放っていた。

 ベヒモスの深紅の甲殻が霞むほどに輝く刀身を、俺はベヒモスの首元に突き入れた。


『GUUUUUUU!!!』


 突っ込む際の加速と神獣たちの高密度の魔力を帯びた長剣は、ベヒモスの甲殻を容易に貫いた。

 だがこれだけじゃ足りない。

 ベヒモスの巨躯に対して、長剣の刺突だけではまるで倒しきれやしない。

 しかし……俺も刺突だけじゃ止まらない!


「全開放だ、纏めて吹き飛ばしてやるっ!!!」


 俺は皆から託された力を、刀身を通して解き放った。

 神獣たちの莫大な力を長剣の刃から猛噴出した結果、まずその衝撃でベヒモスの喉元の甲殻が粉々に爆ぜ飛んだ。

 更に七色の光が刃に沿って爆発的に伸び、ベヒモスの喉を貫通してなお伸びていく。


「ローア、舞い上がれっ!」


「任せてー!」


 ローアが飛翔するにつれ、俺が持つ極長の刃となった長剣がベヒモスの喉元を切り裂いていく。

 生物の弱点である喉元を大きく損傷したベヒモスは、濁った咆哮を天高く上げた。

 出血も激しく、間違いなく致命傷。

 それでもベヒモスはガパリと大口を開き、最後に一発食らわせるつもりなのか、これまで以上に巨大な魔力弾を溜め込んでいた。


「おい待て、そっちは冗談にならないぞ!?」


 ベヒモスは元々、王都に向かい直進していた。

 つまりこの巨大な魔力弾は最悪ベヒモスの向いている方向の先、即ち結界を突き破って王都にまで到達する恐れがある。

 そうなれば人や家屋が壊れた城壁の下敷きになり、どれだけの被害が出るか検討もつかない。


「フィアナ、これ結界は大丈夫なのか!?」


「うーん、ベヒモスが暴れまくったせいで多分無理っ!」


「「そんなあっさり!?」」


 フィアナの潔いまでの諦め方に、俺とローアは揃って声を上げた。

 だが、フィアナの表情に焦りは見られない。


「大丈夫大丈夫。この作戦、実は二段構えだから」


「二段構え? ……ん?」


 突然地面が、否、ベヒモスの真下が大きく揺れて陥没していく。

 当然ベヒモスもそれに従い、地面に埋まりこむようにして沈んでいった。

 よく見れば結界内は水で満たされており、いつの間にか沼地のようになっている。


「実はこれ、マイラが結界を組む前に仕込んでたみたいでね。さっきマイラの力だけご主人さまに渡せなかったのは、そっちに力を割いていたからってわけ」


『GUOOOOOO!!!』


 足を取られたベヒモスはもがくようにして暴れ、口腔にたまっていた魔力弾はベヒモスの集中力が切れたからか消失していった。


「地形丸ごと変えるなんて、流石はマイラだな」


「毎日修行していただけあるよ……!」


 俺とローアは、揃って驚嘆の声を出した。

 いくらマイラでも、ここまでやるとは正直思ってもみなかったのだ。


「話はこれくらいにして、ご主人さま。今がチャンスだよ!」


「ああ、ローア!」


「もう一回突っ込むよー!」


 滞空していたローアは流星のようにベヒモスへと向かい、俺は長剣を振りかぶった。

 狙いはベヒモスから一番魔力を感じる箇所……心臓一択!


『GUUUUU!!!』


 ベヒモスは俺の動きに気づいたのか、再度口腔に魔力弾をため込んだ。

 だが……遅い。

 俺が駆るのは大空の王者とされるドラゴン。

 素早さ勝負でベヒモスに敗れる道理はない!


「これで終わりだッ!」


 神獣の力でリーチを伸ばした長剣を、ベヒモスの背から心臓に突き立てる。

 虹色の光が炸裂したベヒモスの背は表層の甲殻ごと爆ぜ、腹の方まで刃が貫通したのが分かった。


『GUOOOOOO!!!!』


 夜空を仰いだベヒモスの嘶きが、辺り一帯にこだまする。

 空気と共に肌をも揺らす大咆哮。

 とはいえそれも長くは続かず……巨大な魔力弾が口腔から天高くに放たれたのを最後に、ベヒモスは絶命してその巨体を地に横たえたのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 全員ちゃんと役割はあったけど 広い場所で戦ってたからかローアが一番活躍してたかな。 [一言] 誰一人欠けても勝てなかった戦い、って熱い。
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