良い、黒い魔法少女
ここは渋谷のマンションの屋根裏部屋。
「つ、疲れた。」
谷子がフラフラにやつれて帰ってきた。
「大丈夫!? 怪獣ちゃん。」
姉の栞が谷子を受け止めて介抱する。
「栞お姉ちゃん、私たちだって、普通の人間だよ。もう少し普通の生活がしたいよ。」
「そうね。ほんのおねえさん、日常、戦闘シーン、アイドル活動を1話でやれって方が無理よ! なんてブラック企業なの!?」
谷子は過労死ライン、スレスレである。このままでは体を壊してしまう。
「そうですよ。私たちも登場しないと、ぬいぐるみの売り上げが落ちてしまいます。ワン。」
「今のままだと、なんのために魔法少女を7人まで増やしたのかも、意味がありませんよ。ニャア。」
何話ぶりだろう? マスコットキャラクターの使い魔兼家族の犬のケリーと猫のバーキンである。
「一層のこと、ほんのおねえさんの正体が、怪獣ちゃんだとバラしてしまおうか?」
「ダメですよ! エルメス様! そんなことをしたら、身元がバレて、自宅や学校にもマスコミやファンが殺到してしまいますよ! ワン。」
「それに魔法ツタヤヤでもアルバイトが出来なくなってしまいます。自宅に新潟のアイドルみたいに強姦魔がやってきて、谷子さんが襲われてしまいます! ニャア。」
「自宅は私が守るから大丈夫よ。」
「そういう問題ではありません。ワン。」
「エルメス様に言った私たちがバカだった。ニャア。」
栞のほんのおねえさんの正体をバラすは、あっさりと却下された。冒頭のほんのおねえさんの部分をカットすると、ここまで日常生活で600字。
「次は戦闘シーンだけど、どうしよう? 怪獣ちゃんはベットで寝ちゃったし、残りの6人の魔法少女で魔法バトルでもやればいいのかな?」
優しい姉の栞は、どうすればカワイイ妹が、ゆっくり休めるのかを考えている。
「でも、今から6人も魔法少女を登場させれば、全員会話3ターンで、この話が終わってしまう!? どうしよう。」
1人だと共感することは無くても、キャラクターの人数が多ければ、その内の1人と共感することはあるだろうというのが。最近のアイドル、ラノベの傾向である。どちらも人数が多いだけで、全員を捌けていないという現実。そりゃあ、事務所に押してもらえなかったら、引退やエロ業界に体を売るメンバーが出るのは普通だろう。
「その悩み、私が解決してあげましょう。」
その時、不法侵入だが、一人の女子高生が現れる。その女の子の衣装は黒かった。
「黒い魔法少女!? あなたは誰!? と言いたいところだけど、これ以上、キャラクターを増やしたくないから、今日は帰ってもらえるかな。」
「ええ!? 嘘!? ちょっと!? 押さないでよ!? ギャア!?」
「さようなら。」
栞は第8の魔法少女を次元の入り口に押して落とす。何事も無かった様に話を進める。もう9万字なので、あと1万字で終わりである。
「やっぱり1話1000字のほんのおねえさん、日常生活、戦闘シーン、アイドル活動の4話でローテーションで回す方が細かく描けて丁寧ね。」
栞は構成を決定する。戦闘シーン終了の1200字。
「邪魔するぞ! 海軍! 魚雷発射!」
「陸で魚雷を撃つな!」
次元の出口から泪が現れた。
「さあ! 朝食にしましょう!」
「もう夜だ!」
続いて結が現れた。
「あれ? 私の家じゃない。」
「間違えるな!」
おまけに恵も現れた。ちなみに魔法少女5の谷子は寝ている。さらに魔法少女6の祐名も寝ている。
「いけない! このままでは! 次元の出口よ! 消滅しろ! エル・エル・エルメス!」
谷子の屋根裏部屋に次元の出口が消える。
「ちょっと!? ドキ子が登場できないじゃない!?」
魔法少女7のドキ子は次元を彷徨うことになった。全員会話1ターンしかもたなかった。
「アイドル活動する前の問題ね。はあ~。」
果たして魔法少女48はデビューできるのだろうか。
つづく。




