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良いこと、夜空のお星さま3

 ここは渋谷のNHKKテレビ局。

「良い子のみんな! ほんのおねえさんの時間だよ!」

 オープニングの主題歌が終わり、本編が始まる。ここまでで30分アニメとして5分経過。起承転結の起に、ほんのおねえさんの良い小話を選択した。

「今日も大好評御礼中の、夜空のお星さまの続きを読みますよ。イエ~イ!」

 名作夜空のお星さまが大反響過ぎて、NHKKオンデマンドのサーバーが3日3晩パンクして動かなくなってしまった。

「それでは、読みますね。」

 スタジオの照明が暗くなり、ほんのおねえさんだけをスポットライトが照らす。良い子のみんなは本の世界に誘われる。そして谷子は読み始めた。

「夜空にきれいな、お月さまが銀色に輝いていました。

 ある日、何の個性もない通行人の女の子Bが流れお月さまに願い事をしました。

「お月さま! どうか私を、キャラクターにして下さい!」

 夜空から銀色の光が彗星のように、銀色の残像を残しながら、通行人の女の子Bの元に舞い降りてきました。

「きれい~♪」

 銀色の光の正体は、ミニ型お月さまに棒がついた杖、ムーンロッド。通行人の女の子Bは月を自由に操れる、ムーンロッドを手に入れました。

「ギンギラ~♪」

 ボタンを押すと銀色に光ります。

「わ~い~♪」

 通行人の女の子Bは傷ついた心を癒す、アロマライトを手に入れました。

 つづく。」

 恐らく200字程度の小話だが、名作である。無理に10万字の大作を書くより、200字の小話を集めて10万字にした方が人の心に届くのかもしれない。

「良い子のみんな! 夜空のお星さまはおもしろかったかな? うんうん。おもしろかったね!」

 夜空のお星さまが終わったら、財布を拾って交番に届けましたとか、電車でおばあさんに席を譲ってあげましたとか、良いことの話を創作しよう。

「いくよ! 良い子のみんな! せ~の! 本が大好き! 読書! 最高! またね! いい夢見ろよ!」

 番組の最後は、ほんのおねえさんの布教のために必須である。こうして谷子は、ほんのおねえさんの収録を終えた。起承転結の起だけで800字オーバー。単純計算で起承転結で3000字オーバー。困ったな、どうしよう。

「最高! いや~! ほんのおねえさま! 良かったよ! 谷子さま!」

 谷子にセクハラを社長にチクるとおどされて心を入れ替えた、良いプロデューサーである。

「さまはやめてください。さまは。」

「私の株が右肩上がりの爆上げ中! これもほんのおねえさんのおかげだよ! 私が魔法紅白歌合戦のプロデューサーになったり、ほんのおねえさんとチコちゃんが紅白の司会者になる日も夢ではない! ワッハッハー!」

 ほんのおねえさんの視聴率は90パーセントくらいでいいか。国民的大ヒット。インターネットを考えると、世界的大ヒット。

「私、帰ります。」

 こうして起承転結の承、日常の生活の部分を400字で終える。

「出たな化け物!? 確保だ!? 取り押さえろ!」

 長い前髪をおろして帰る谷子は、いつも入管のNHKKの警備員たちに不審人物と止められる。いつも殴り合いの戦いになり、生傷が絶えない。

「いいかげんに覚えろ! 私は、ほんのおねえさんだぞ!」

 谷子は前髪をあげて、素顔を警備員に見せる。

「は、はあー!? ほんのおねえさん、失礼いたしました。」

 ほんのおねえさんに気づき、土下座する警備員たち。

「さようなら。」

 谷子はNHKKを後にする。起承転結の戦闘シーンの転を無理やり200字で終える。

「ふ~ん、ふ~ん、ふ~ん。」

 鼻歌を歌いながら谷子は家に向けて上機嫌で帰って行く。起承転結の結が1話1500字1日2更新でやってるから、100字で作詞しろって方が無理である。1話1000字1日3更新に変えようかな。


つづく。

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